【女子会】エラシラの初恋エピソード…。
荒ぶるノリカを落ち着かせるのにずいぶん苦労した。彼女が落ち付いたところで女子会も終盤。みんなで話し合った結果『女子会と言えば恋愛トークっしょ!』ってことでそれぞれの恋バナに花を咲かせている。
「奥様と旦那様の出会いはどんなでしたか?!」
やけに食い気味で質問するリリー。彼女の表情は真剣そのもので、メガネをキラーンと光らせる姿にものすごい意欲を感じる。手には鉛筆とメモ帳が……って!ネタにする気満々じゃない!まぁ、聞かれたし答えるけど。
「えーと、どんなだったかしら……
――今から14年前――
オリバーに初めて会ったのは、5歳の時だった。私がまだ毒舌キャラでもナルシストでもなかった時よ。
『今日お客様が来るの。エラに紹介したいからお家の中にいてね。』
その言い付けをすっかり忘れて、木に吊るしたブランコとか木登りして夢中に遊んでたの。そしたら木登りの途中で力尽きて落ちちゃって!
『死んじゃう!』って目を瞑った瞬間――オリバーが抱きとめてくれたの。まるで劇のワンシーンみたいだったな〜。あの時のことは一生忘れないと思う。
「驚いた、まさか上から女の子が降ってくるなんて。君、大丈夫だった?」
とても驚いた顔をしていた。そりゃあそうよね、上から人降ってくるなんて夢にも思わないもの。でも、私を助けてくれた彼は王子様みたいで……。
「わぁ……かっこいい!あなた王子様?それとも天使?」
って結構ストレートに聞いちゃったの。プラチナブロンドの髪が風にサラッとなびいて、太陽に照らされてキラキラして見えたのは覚えてる。今の彼とは比べものにならないほど輝いて見えた。
* * *
「え!奥様もしかしてこれが初恋ですか?」
私の隣に座るエザラがとても興奮気味に聞いてきた。彼女、恋バナ好きそうだもんね〜。
「いいえ、初恋じゃないわ。初恋は17歳の時よ。」
「えっ!違うんですか?今の話ぶりだと初恋だと…。」
――今から2年前――
私がオリバーと婚約したすぐ後のこと。
「ねぇ、オリバー様が婚約なさったのご存知?」
「知ってるに決まってるじゃない!今日の夜会はその話で持ちきりだもの」
婚約発表してすぐの夜会で、名前も知らない令嬢達に陰口言われてるところに遭遇しちゃったの。……そりゃもう悲しかった!
「私も狙ってたのに、あんな子と結婚しちゃうなんて!」
「どうせ両親が仲良いだけの政略結婚よ。あんな品のない子をオリバー様が選ぶわけない!そうに決まってる!!」
「あんな子より、優しくて綺麗な姉のバネッサ様なら諦めがついたのにぃー」
そんな風に3人の令嬢たちから散々な言われようで…。流石に応えて、帰りの馬車の中で泣いちゃった。
「私、毒舌だし口悪いよね……」
「確かに。そうかもしれないね」
彼が否定しなかった。だから余計追い詰められた気分だったの。
「あなたはいつも私の言葉に嫌な顔しないで返してくれる。私すごく性格悪いのに……」
ものすごくネガティブモードに入ってたからずっと俯いていたっけ……らしくないよね。けどこの後の彼の言葉で救われた。
「確かに君は毒舌だし口も悪い。……けど、直して欲しいところは一つもないよ。それが君の個性だと思っているから。」
「えっ……。」
顔を上げたら、オリバーの優しい微笑みに救われた気がした。驚いていつの間にか自然と涙も引っ込んでた。
「僕は、そのままの君を受け入れるよ。」
――目が合った瞬間、時が止まったみたいな感覚だったわ。
* * *
「――ってのがが私の初恋よ。」
話終わったから顔を上げると、5人全員が前のめりになって聞いていた。私ってば話すのに夢中で全く気づかなかった。
「きゃーーー!!
「オリバー様かっこいい」
「素敵ですねー!」
興奮気味の5人はこういう話に弱いのかな?瞳をキラキラと輝かせて両手をギュッと握って……。いかにも乙女って感じで可愛い反応ね。
「まっ、その前もその後も浮気しまくってたクズなんだけどさ。」
「「「「「あぁ………………」」」」」
あら、ご覧になって。5人の熱が一気に冷めていく。この光景オリバーに見せてやりたい。オホホホホ〜
「まっ、まぁ旦那様もこれからは心入れ替えてますよ!きっと」
フォローを入れるエザラだけど、私2年も不倫されてたのよ!大好きなエザラの言葉でもイマイチ信用できない。
「それはどうだか〜」
「ですけど、再婚してから1週間以上立ってますが新しい女性の影はないらしいですよ!」
「別に私気にしてないし〜」
コソッ
「その割には温室でデレてたくね?独占欲とか凄そ……
「お黙り!ジュリー」
鋭いツッコミに焦ったジュリーは、即座にしゃんと座り直した。
「もうジュリーってば。ほどほどにしなさいよね。そのうち奥様がブチギレるわよ〜」
ジュリーに小言を言うサラの姿は本当の姉妹みたい。皆が『この2人は仲が良い』って言う理由が分かってきたかも。
「ふふふ……」
えっ……後ろから笑い声聞こえる。それも暗めの。今笑う要素なかったよね?!
「ふふふ…『不倫夫が妻に溺愛』する設定が湧き出てくる!!!小説のいいネタになったわ……。」
盛り上がる私たちとは対照的に、部屋の隅には1人きりのリリー。小説作りに勤しむ姿からは黒いオーラが……。どんな話書くつもり?
「リリーの姿が見えないなと思ったら、あんな隅に……。」
ガチャッ
「あの……そろそろよろしいでしょうか?」
さっきノリカの圧に負けたレナードが、恐る恐る様子をうかがいながら入ってきた。あの感じだと、よっぽどノリカが怖かったんだわ…。
「どうしたの?レナード」
「実はですね、こんな手紙が届きまして……」
彼から手渡されたのは一通の封筒。手触りが良くて高品質なのがわかる。――でも誰から?
「あっ、きっとお母様ね!旅行先から私宛に……っ!?」
手紙を開いた瞬間!!衝撃でハラリと紙を床に落とした。
そう、離婚届を落としたあの時のように――。
衝撃のあまり、私の体は、石のようにカチーンと固まった。無神経にも人差し指でツンと突くのはほぼ確実にジュリーだろうな。
「奥様?どうされました?」
「そっ、そんなっ……。だって……」
絶望的な声が部屋中に響き渡る。私の反応で、ただ事じゃないと察したレナード。彼は手紙を拾い上げて目を通した。
「っこ、これは…。」
レナードまでもが驚いている。その姿に、メイドたちも揃って怖がりだした。分かるわ、普段感情見えない人が驚くと怖くなるよね〜
「あの…本当にどうされたんですか?」
サラがレナードから手紙を奪うと、皆に聞こえるような大きい声で読み上げた。
「えー……拝啓、」
――拝啓――
君の事を想うと夜しか寝られない。
この1週間、会えない日々はとても辛かった。
それに君たち夫婦に手伝って欲しいことがあるんだ。だから、我がヴァレンタ国の招待状を送るよ。1週間後に逢えるのを楽しみにしている。
――君の王子様より――
「ってことは、おじ王子から招待されたってこと?!」
「“君の王子様”……おぉ……。」
「奥様、そう言うことですのでご準備を――ん?」
「「「「「「奥様が居ない!」」」」」」
* * *
「ハァ……ハァ……。」
息を切らして『気絶してるばかりではいられない』私は、長い廊下を逃走中。
のほほ〜んとヴァレンタ王国に行ったらおじ王子と結婚させられそうだし!絶対に逃げ切らないと。……それに1週間前『さようなら〜』したばかりなのに、また1週間後に会えって?!冗談じゃない!
『ま〜たおじ王子かよ』って思ってるんでしょ?それは私もなのよ!会いたくないのよー!
「あっ!奥様があそこに!」
「っは!見つかっちゃった!!!」
エザラに見つかった私はそれでも走る足を止めない。
「絶対に行かないんだからぁーーー!!!」
そりゃあもう必死で逃げたわ。
……5分後に捕まるわけだけど。




