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おじ王子VSテイリーの熱い(?)戦い


王子の2度目のアポ無し訪問。状況を確かめるため、そぉ〜っと様子を伺ってみる。……うん、いるわ。木のコスチュームに身を包んだ、すごい形相の王子が。


その顔で『木ですけど〜』は無理ありますって、王子!横にいるおじいちゃん執事も無理やり付き合わされてて、やりたくないオーラ出ちゃってるし……可哀想に。

 

なんて心の中でツッコミを入れていた、その時!!


おじ王子のコスチュームに気を取られていたら、オリバーの片手が私の顔を包み込み、グッと近づけた。細身だと思っていたのに案外頬を覆う手は大きのね……とか違くて!


「もぉー、なひぃふるのぉ!」


私が必死に両頬を膨らませて押し戻そうとしてるのに全くダメ!口が開かないせいで変な発音になっちゃったし!視線で訴えてるのに全くほっぺを離してくれない。


「エラ、紅茶を取ってくれない?」


どうやら紅茶を取ってほしくて私の顔を潰しているらしい。私が横向きで膝の上にいるから、テーブルまで手が届かないみたいね。それならそうと言ってくれれば良いのに!


あぁ、やっとほっぺが解放された!


「はい、どうぞ!」


私が紅茶を渡すなり『おっと、手が滑った!』とか言って、真っ白なワイシャツに紅茶をこぼした。


(何なの?その嘘臭い演技………!!)


「紅茶をワイシャツに溢してしまったよ。悪いけどエラ、拭いてくれない?」


あっ!『私たち仲睦まじいです〜』ってところを、おじ王子に見せつけてるって魂胆ね!こういうの考えるの上手いわねぇ。  


――よっ!女ったらし!


「もう、シカタナイから拭いてあげるネー」

「お願いするよ…………ッフフ」


緊張でちょっとだけ棒読みだけど、そんなに笑わなくても良くない?下向いた彼の肩が小刻みに震えている。おかげでこっちまで顔が赤くなってきた。


「……気を取り直して!」


ふきふき……ふきふきふきふき


胸元のポケットに着いたシミは乾いたハンカチでは落ちなかった。気が動転してたけど、よく考えれば落ちないの当たり前じゃない!


「手洗いするしかない。ほら脱いで、早く洗わないとシミになっちゃう。立って立って!」


立ってくれたほうがボタンを外しやすい――かと思いきや、予想以上の身長差で、かえって外しにくかった。これは誤算だったわ。


「……ふふ。いやごめん、さっきの君があまりにも棒読みだったから思い出しちゃって。」


一方のオリバーは、私の棒読みがまだツボらしい。いつまで引きずるつもり??


「それにしてもエラは大胆だね」

「ん?何が?」


少し高い位置にある顔を見上げると、笑っていた。さっきの笑顔とはまた違って少し意地悪そうな顔で……。


「君自らシャツを脱せるなんて」

「えっ?」


ボーっと考えていた頭を動かす手に意識を向ける。


「………っは!」


私としたことが!使用人に任せるべきなのに、私自らシャツを脱がせるなんて!上から4もボタン開けちゃった。恥ずかしさから視線を逸らすと、空気と化して見守っていた5名のメイド達と目が合った。


皆がニヤニヤした顔でこっちを見つめてくる。もう、放っておいてよっ!!!


「エラ、ボーっとしてるけど大丈夫?おーい、おーい。」

「っは!……あぁ、ごめん」


慌てて視線をオリバーに視線を戻した………ら、ゴメンけど腹筋が目に入ってしょうがない!あぁ、神様ったら。顔だけでは飽き足らず体まで彫刻化するなんて、よっぽど彼のことが大好きに違いない。


「……本当に大丈夫?エラ?」

 

私の顔を心配そうに覗き込むオリバーの顔がゆっくりと降りて視線が合った。プラチナブロンドの髪に掛かった紅茶によって、艶っぽさが増してアンニュイさがあった。これに関しては完敗だわ…。


まるで、お風呂上がり見たいな感じ、伝わる?紅茶グッチャブじゃないの!やばい鼻血が……。別に変態とかじゃないのよ!でも何だか意識が……。


「おっと!床に倒れるとこだった。鼻血が出てる。さっきの激辛クッキーか?ノリカには後でキツく言っておかないと。」


キャパオーバーで倒れそうになった私を支えてくれてるオリバーには感謝だけど、ノリカに濡れ衣が………。



「おい!距離が近いじゃないか!昼間っから何やってるんだ!!!!」


痺れを切らした、もはや開き直った(?)王子が私たちの前に現れた。あのコスチュームで隠れ続けるのが無理だと悟ったのかしら?まぁ、良いや。

 


(ドキドキした気持ちをおじ王子で中和しよう!)



おじ王子を見て喜ぶ自分がいることにも驚いているけど、おじ王子のおかしなコスチューム姿を見て心を落ち着かせよう作戦に出ることにした。………やっぱり変な格好。やっと気持ちが落ち着いた。



「エラから離れろ!そして離婚しろ!ヴィセント伯爵!!」



落ち着いた私とは裏腹に、興奮気味の王子は私たち夫婦を離縁させたいらしい。昨日あんだけ押され気味だったくせに。 


「あぁ、おじ――


今の“おじ王子”って言いかけたのは私じゃなくて()()()()ですから。驚いちゃって顔を思わず見たんだけど……


『わざとじゃないよ。君が“おじ王子”って言うから、反射的に出ちゃったんだ。』とでも言いたげな顔をされた。


「いえ、()()殿下。本日はどのようなご用件で?」


(オリバーってば、何食わぬ顔でうまく誤魔化した…。私もおじ王子って言いそうになったら、あーやって誤魔化そう。)


「さっきも言ったように、お前はエラには相応しくない!伯爵は今すぐエラから離れろ!距離が近すぎるじゃないか!」

「それは夫として聞き捨てならない発言ですね。今にも倒れそうな妻に介抱するのを、やめろとおっしゃるんですか?」

「んっな!何だとぉ……!?」


オリバーの言葉に少し怯んだ!かのように思えたおじ王子はやっぱり引く気がなさそう……。この人いつ帰ってくれるの?この前1時間居座られたし。

 

「それでは、賭けをしましょう。殿下」

「賭け?……」


「この国で一番強い者と対決をして貰います。もし殿下が勝てば僕とエラは離婚することをお約束しましょう。」


そうそう、殿下が勝てばオリバーと離婚……って、っはぁ?!


「ただし、僕の部下が勝てばエラの事は諦めてもらいます。」


「その賭け乗ったぁーー!!」


浮かれている王子に、気づかれない程の小声でオリバーに耳打ちした。


「ちょっと、部下って、他人頼み?!負けたらどうするのよ!」

「大丈夫さ。対決っていうのは酒飲み対決だし、部下っていうのは、テイリーのことだから。」

 

あぁ、それなら勝てるわね。何たってウチの兄は“この国一番の酒飲み”って言われるほどだから。


《――なんて考えていたのは30分前――》

 

眠っていた兄テイリーを叩き起こして、何とかヴィセント家に連れてきた。これで私は王子と結婚しないで済む!……そう思っていたのに。


「おぉー!どちらも30杯目です!互角だ!」



(どうすんのよぉーーーー!!王子に酒体制あるとか聞いてない)


それに、使用人達も集まってお祭り騒ぎだし。仕舞いには、料理長のカロンがポップコーンを販売し出したし!3つのフレーバーなんか出しちゃってさ!私は、塩味!!


「なかなか手強いですね……」

「っふ、お前こそ!!」


あそこの2人、友情芽生えた熱い展開!みたいになってるけど……『負けたら妹が隣国に嫁ぐことになるって忘れてないよね?大丈夫なんだよね?


「酒飲みのテイリーなら絶対に負けないと思ったんだけど。思ったより、王子が結構粘ってるね」

「もう!他人事だと思って……

「いやぁ〜、奥様白熱した戦いですね」

「小説の参考にします」

 

陽気に話しかけてきたのはエザラとリリー。他人事のように話すオリバーにも呆れたけど、何であんた達もそんなに楽しそうなのよー。私の人生賭けた大勝負なのに!………って、ん?


「ねぇ、王子の執事の隣にいるのって――」


私の目が変なの?黒いスーツにサングラスをかけたSPみたいに見えるんだけど。さっきまでいなかったはずなのに。


「あぁ、SPのおふたりです。外で隠れて待っていらっしゃったので私が先ほど招き入れました!」


(レナードあんたが入れたんかい!敵を招き入れるってどういう神経してんのよ!)


「殿下ー!頑張ってください。じぃや応援しております」

「「頑張って下さい〜フレフレ〜殿下」」


3人だけなのにあっちの応援も中々白熱してるわね。こっちも負けられない!そう思っていたのに……


「みんなどっちに賭ける?この勝負どっこいどっこいだけど」


サラってば賭け事なんて!もちろん勝つのは兄テイリーに決まって――


「えぇ〜、案外王子が勝つんじゃない?そしたらマジでウケる。」

「あらぁ〜、ジュリーちゃん。あなた今なんて言ったのかしら?()()()()()とか聞こえたのだけど?」



「ヤバっ。奥様ってば〜。テイリー様以外勝つのは考えられないって言ったんですよ〜。」


「そっ、そうですよ〜。私サラも、テイリー様を応援してます!」


私の笑顔の圧に凄んだのかジュリーとサラが目の色変えた。分かりやすい2人。


「そうよねぇ〜、()()()()()王子を応援なんてことしないわよねぇ〜」


「「もっ、もちろんですー」」


2人の額に冷や汗が流れていることを私は見逃さなかった。


《――それから2分後――》


「まだいけるわーお兄様ぁー!あと50杯〜」


【奥様が一番楽しんでる】みたいな顔されてるけど、オリバーとの離婚&王子との再婚が掛かってるのよ!


「奥様、意外にも楽しまれているようで。」

ポップコーンを持ったレナードが私の横についた。


「楽しんでんじゃないわ。やけくそよ!」 

「はぁ……やけくそ、でございますか。」



「あっ、それ反則よー!今のはフェアじゃない!酒を飲まないでこぼしてたぁー!!!」

 



ラブ回のつもりがカオス回になってしまいました。

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