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【ドキドキ?!】オリバーへクッキーを渡す

[メイド達の性格]

・サラ:そばかす

・リリー:オタク

・ジュリー:ギャル

・ノリカ:オカン


「奥様ファイトです!」


メイド達の熱い声援を背中で受け止めながら、彼の居るという温室へ向かっている。ノリカが分けてくれたハート形クッキーと紅茶をワゴンに乗せて準備万端。これでオリバーもイチコロなはず!


「良いですか、奥様。私が考えた、さ・く・せ・ん!しっかり実行して下さいね!」


「えぇ〜、あれやらないとダメ……?」


リリーから伝授して貰ったのは【スキンシップ・愛嬌振り撒く】の2つ。小説好きだという彼女がいかにも考えそうな作戦。


あの女たらしがそんなベタな作戦で……うん、無理だわ。



「私もよく小説読むけどさ、やっぱベタすぎるんじゃ――

「つべこべ言わずにしっかりやって来てください。さぁ、着きましたよ!」


私の背中を『早く歩け』と言わんばかりに押すギャルメイドのジュリー。彼女ってば、なかなか毒舌ね……。


まぁ、そういうところが私と似ていて、結構気に入ってるんだけどさ☆


「……頑張ってみるけど、ダメでも怒らないでよ?」


後ろを振り返って5人の顔を確認すると、やけに満面の笑みを浮かべていた。私の経験上、メイドたちが満面の笑みを浮かべる時って、碌なこと起こらないんだけど……。


サラの『せーの!』って掛け声の後に、



「「「「「奥様、頑張って下さーーーい!」」」」」



って全員から()()()()()と共に手を振って見送られた……ありがとう、とっても怖いわ。


だってメイド達がこの顔する時って碌なことないもん。


* * *


「へぇ〜ヴィンセント家の温室ってこんな感じなのね。」


初めて足を踏み入れた空間にちょっと興奮してキョロキョロ見渡しちゃった。オリバーお気に入りの場所だから2年間避けてたのよ。こんなに素敵な場所ならもっと早く来たかったな。


名前は分からないけど、可愛らしいお花も多くて結構私好み♪緑と鮮やかなお花が良いコントラストになっていてセンスがいい。


鼻歌を歌いながらワゴンを押し進めると、モヘア素材のアンティークなソファーに座るオリバーの姿があった。手に数枚の書類を持っているところを見ると、仕事中だったみたい。


「ん?エラか。珍しいね、自分から僕のところへ来るなんて」


私に気づくなり、目を少し見開いた。オリバーが驚いた時の顔だと一目で分かる。だってこの人、いつも余裕そうなんだもん。こんなに驚いている姿は『稀』よ。


まぁ、結婚していた2年間極力避けて生活してたから驚くのも無理もない。


「クッキーでも食べないかと思って。迷惑だった?」


私の問いかけに正気に戻ったらしい彼は表情を緩めた。


「いや、ちょうど一段落したところだよ。仕事の書類に少し目を通していだけだし。ほら――」


見せてくれた書類には、私には分からないような難しそうなことが書かれていた。


「うぅ、見てるだけで疲れちゃいそう。」

「まぁ、大したこと書いてないよ。それじゃあ好きなところ座って」


ソファーはテーブルを挟んで向かい合わせに置いてある。流石に、向こう側座ったら遠すぎてスキンシップなんて無理だし。


よし!隣に座ろう!なんて意気込んで顔を上げると――。


コソッ

『奥様!教えたあざとテク。今こそ使う時です!』



「えっ!エザ――

「ん?どうしたの?」


「えっ!いや……何でもない。」



何でもあります!



だって……メイド5人が植物に紛れて隠れてるんだもの!植物に上手く紛れてるつもりでしょうけど、顔が丸出しなのよ!オリバーからは植物で見えてないみたいだけど、バレるの時間の問題だって!


――ていうか、あなた達いつの間に入って来たの?



『い・ま・が・チャ・ン・ス』



植物の影から、今度はリリーと目があった。口パクでめちゃくちゃ圧をかけてくるじゃん……。分厚いメガネ越しでも熱量が伝わってくる。


(えぇ、本当にやらなきゃダメなの?恥ずかしいんだけど。今更ながらこんなの辞めたくなってきたわ。)


「本当にどうかした?あそこに何があるの?」


オリバーが不思議そうにして、5人の隠れている茂みの方へ確認しに歩き出そうとした。


まずい!!


(メイド達と作戦立ててたことがオリバーにバレたら、絶対に笑われるもん。一生ネタにされていじられる!)


「あぁー!オリバー待って!」


咄嗟に掴んだオリバーの袖。勢い余って引っ張り過ぎたのか彼がバランスを崩して私の上に覆い被さってきた。


その瞬間、私の視界が彼のシャツ一色になり『絶対に重いし、苦しい!』と身構えたけど…あんまり重くないし、ちっとも息苦しくもない。――本当に何でだろう。


重い瞼を恐る恐る開けると、どうやらオリバーが私の両脇に手をついて、体重をかけないようにしてくれてるらしい。


だから私潰されてないのね。“床ドン”ならぬ”ソファードン”だわ。小説でよく語られるシチュエーション!!



「エラ、急に掴んでどうしたの?」


にしてもフフフ。下からでも美形は美形なのね。はだけたワイシャツから除く鎖骨……フフフフ



あっ、ニヤけた私の顔は、想像しないことをお勧めするわ。絶・対・に。


込み上げてくるニヤケをバレないように両手をグーにして口元隠してるから、オリバーにはバレてないはず!


あと、私変態とかじゃないからね。ただ、旦那の実況してるだけだから!


『ッフ、どうやらエラは僕と離れたくないみたいだね。それなら期待に応えて……。』そう言った彼は、ソファーに座り直して私を膝の上に乗せた。へへへ。下から見上げても麗しい顔。フフフ


「……ラシラ、…エラシラ!どうした?僕が重くて気を失ってた?」


あぁ、プチ妄想しちゃった。膝には乗ってなかった。


「あぁ、ちょっと意識飛んでたかも。」 

()()()()エラだね。じゃあクッキー食べようか。」


「えっ、ちょっと!酷い!」


いつの間にかソファーに座り直してるし!切り替え早すぎよ!


「へぇ〜、ハートの形なんだね。」

「………。」


華麗なツッコミを無視して私の作った(事にしてるけどノリカが作ったクッキー)をマジマジと見ている。まぁ、無視されてるけど別にいいか。


「それ、可愛いでしょ?!」

「中々積極的だね。ハートなんて」


「べっ、別に愛を伝える為にその形にしたわけじゃ!……ほら!これハートじゃなくてクローバーなのよ。」


お皿に載っているハートクッキーをクローバーに見えるように並べた――けど、やっぱり無理があるか。


「……これは、ちょっと無理があるかも…シレナイネ。」

「ッフ揶揄っただけなのにそんなに真剣に考えなくても……。」


口元を抑えて耐える姿は、いつものバカにしてる感じが全くない笑顔だった。本当に笑ってるのね。


(こんなにお上品に笑う人初めて見たわ!)


「ふっ、はははは……」


結構長いこと笑っているけど、そんなに面白い??意外と彼って笑いのツボ浅いのね……。


「もう!いつまで笑ってるの?クッキー食べないなら私が食べる!」

「貰う、貰うよ。一つ頂戴」


「あっ、私が食べようとしてたやつ!」


私の手を優しく掴んだかと思えば、そのまま自分の口元に引き寄せてパクリと一口。至近距離で一つ分かったのは、伏せたまつ毛が長いってこと!


横取りされた!けど、まぁ良いよ。あと5個あるし


「今度こそ、いただき――

「うぅ、……これゴホッ、ゴホッ」


「えぇ?!どうしたの?まさかマズイ??」


いきなり咽せ始めたオリバーに驚いて、急いで味を確認した。味はまさかの――



「ゴホッ、ゴホッ。かっら!!!」



食べ慣れない辛さに耐えられなくなり、紅茶を飲み込んだ。……うぅ、まだ辛い。


「罰ゲームかと思ったけど君も知らないみたいだね。もしかしてこれ作ったのって――

「実は、私が作ったクッキーは落としちゃったからノリカのをお裾分けしてもらったの。」


「それなら納得だ。彼女なんでも食べ物を辛くするんだ。厨房出禁にしていたのに。」



「えっ、そうなの?!知らなかった」



彼女を問い詰めるように見つめると、口笛を吹く素ぶりをしてそっぽを向いた。ノリカ!アナタ確信犯ね!



「あっ、紅茶飲んでだら辛いの収まってきた。アナタも紅茶飲む?――って、うわっ!……なっ、なに?!」



今度は私がやらかしたわけじゃないですから!じゃあ何がどうなったんだって。今度は、私が腕を引き寄せられて彼の膝の上。横向きで彼の膝の上に乗っている状況。


さっき妄想してた(膝の上に乗っている)状況になって恥ずかしくなってきた……まさか!さっきのあれ声に出てた??


「ねぇ、いきな――

「シッ!あんまり騒がないで!あそこに王子がいる。」



「えっ?王子??」

 


耳元で囁くからドキドキした心臓を落ち着かせようと、オリバーの指差す方を見てみると、木にカモフラージュしたおじ王子と執事が庭に潜んでいた。


怖っ ホラー映像か何か?

 

コソッ 

「多分、僕たちの仲を偵察に来たんだよ。」


成程。もし私達の仲が悪かったら『別れろ!』とか言われるのね。


後ろには(下手に)変装したメイド達がいて、前にはクオリティ高いけどバレバレなおじ王子………カオス空間すぎない?

     


腹筋腹筋言ってますけど、オリバーは細身の筋肉って感じです。オリバーの筋肉実況今後ともお楽しみに〜


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