前奏はどれだ?
「結局、ゴブリン二匹だったね。よっぽど強いのが出てくるんだと思ってた」
「その理由を考えると、弱ければ勢いで倒してしまう可能性が高いから、それ自体がトラップになってるんだと思う」
「シークレットドアの向こうに何も無かった部屋もあったけど?」
「アイテムを置くつもりがあったんじゃ無いかな? タイミング合わせるのに便利なアイテム。腕時計みたいなのがあれば、それ自体がヒントになるし」
二人の推理が止まらないなぁ。
あ、お気づきのことだとは思いますが、シークレットドアの向こうに配置してあるモンスターがゴブリンである事もバレております。
「じゃあ、なんで無いの?」
「ヒント無しで解けるかどうか試したんじゃないかな? 同時撃破に気付かなければ、こっそりその手のアイテムをおいておけば良いし。隠し部屋にあったから気付かなかった、と勝手に理由は付いてくるしね」
タケルはもしかして、人生面白く無いのでは?
……ああ、でも報酬がなぁ。
「同時撃破か……何かで見たことあるね」
「僕はガルファ皇帝思い出した。『GEAR戦士電童』のラスボス」
「ああ、正座で戦う奴」
正座? 正座って、あの足を折りたたむ奴だよね?
タケル! 違うと言ってくれ!
「それだよ。ただあれは……あんまり同時って感じじゃ無かったな」
「言ってるだけか。まぁ、それはこの際関係無いと言えば関係無い。実際どうするの?」
結局正座で戦うの!?
……ええい、あとから調べる!
「単純に考えると、僕たちが二手に分かれる方法があるわけだけど……」
「それはわかってるわよ。同時に倒すのをどうするのかって話」
うん。そこがネックになるね。
「僕としては、二手に分かれたくないんだよね。マイちゃん無防備になっちゃう」
ああ、タケルはそこで引っかかるんだ。
日本人の作るハーレムって、どういうわけか女性も戦えるの当たり前な構成になってるからね。
……マイだって、戦えると思うけど。
「また、あんたは……そういうの嬉しいんだけど、ちょっと過保護」
「でもさ……」
「それよりも、あたしはタケルの方が心配。ゴブリンをその刀で倒せる? というか、持って来てるんだから、やる気なんでしょ?」
そう指摘されてタケルは黙り込んだ。
何となくだけど、タケルは諦めていたんじゃないかな? こうなるだろうって。
「……はぁ。じゃあ、スマホで――」
「持って来てないわよ。バッグに入ってる。というか、それつまらないわね。他の方法は?」
「一応、歌を歌いながらとか考えてみたけど……」
ああ、なるほどね。
色々やり方は考えていたんだ。
そのあと、マイは近くのゴブリンがいる部屋に行って待機。
そこからタケルがもう一つの部屋に走っていって、タイミングを合わせて倒す、というような段取りが出来上がった。タケルの妥協の結果とも言える。
「……仕方ない。とりあえずそれで行きましょう。ウロウロしてるのは片付いてるわね?」
「それは間違いないよ。でも歌はなぁ」
「あれが良いんじゃない? 『カウボーイビバップ』の奴」
えっと……どう使うのかな?
「もしかして、『レッツ、JAM!』に合わせるの?」
「そう。格好良いでしょ?」
オープニングのアレか……そういう台詞だったんだな。
というか、あれじゃ――
「無茶言わないでくれ! いくら何でも短すぎる!」
それな。
「じゃあ、ダイターン」
「もっと短い! というか、前奏自体が無い!」
「じゃあ、後奏は? 長いのあるでしょ?」
「『愛の金字塔』とかは長いね。でも、タイミングがない」
「愛の金字塔」……ああ、これかな? 六神合体? 凄い名前だな。
「でも、前奏なら使えるかも。歌い出しがタイミングになるわけだし」
「あたしがよくわからない」
「……そうか。じゃあ『LOVEWING』もダメだな」
「あのねぇ。あんたの好きな曲あげる大会じゃないのよ」
それは……「アイドル防衛隊ハミングバード」? どういう状態なんだ?
「いや、前奏が好きなだけで、全部好きなわけじゃ……」
無情なことを言いだしたタケル。
そう言えばエヴァも嫌いみたいだし、どういうオタクなのかな?
「じゃあ、好きな曲あげなさいよ。『恋愛の才能』とか」
「『恋愛の才能』か……」
前に樹雷の名前出してたし、これは調べるまでもないな。エンディングで流れる曲だ。
少なくともタケルは「天地無用!」シリーズは好きらしい。
「それけっこういけるかも。マイちゃんもわかるの?」
「どれだけ聞かされたと思ってるの?」
そんなにか!?
ただこれで何とかなる……のか? 確かに前奏は短いわけじゃないけど、時間的に余裕があるとは――
「大丈夫なの?」
「『恋愛の才能』を使うなら、必ずやってみせる。一度、合わせてみよう」
おおう。
何だかタケルがやる気になってるね。
そして、二人の歌い出しタイミングはピッタリ合った。どれだけ聞き込んでいるんだ。
でも、この歌い出し……まぁ、それは良いか。歌詞の内容は関係無いわけだし。
実際、二人は上手く合わせた。
マイは余裕を持って。
タケルは飛び込んだ勢いのままに。
「「♪好きだよと言わないで~」」
と、倒した直後にそうやって歌い出したのは――恐らくこれこそが「シュール」。
そしてリボンは、タケルの方に出現させた。
少しだけタケルの方が遅かったからね。
ある程度はズレても可能なように調整していた。何しろ遊戯施設だからね。
……このまま大詰めになるかな?
電童の戦い方については正確に言うと「正座で移動する」です。(正確にする意味はあんまりないな)
同時撃破は、本当に同時か? って言うぐらい曖昧だったような……
カウントダウンで始まるアニソン、もっとあったような気がしますが、今回は縁がなかったと言うことで。




