扉を開けて
二人は607号室のベッドの上に、今まで集めてきたリボンを放り出している。
合計で五本だね。
「これをどうにかするのよね?」
「消去法的にそうなっちゃうな。他に使えそうな物が無い」
二人は迷宮五階をクリアしてラブホテル「紗々」の六階に引き上げてきている。
このまま、一気にクリアを目指すようだ。
もうバレてるんだけど、通常なら屋上へ通じるドアがこっちのものと入れ替わってるんだよね。
階段使えば、雰囲気で気付かれないはずがないから、これは想定済み。
二人は五階をクリアして、その足で屋上に向かいドアも確認している。
ドアには、かなりおどろおどろしいデコレーションを施してあって、いかにも最終ステージの雰囲気を出したつもりだ。……五階の雰囲気とそぐわない感じだけど商会内コンペで負けてしまった。
まぁ、この方が仕掛けを組み込みやすいんだけど。
「ムータン、確認するけど屋上の扉は開いてないのよね?」
「はい。開いてません!」
フワフワ……
そんなに機嫌良く応答すべき状況なのか?
ムータンが完全にスカイハイ状態なんだが。
「ラブホテルで何かクリアしなくちゃいけない事残ってる?」
「残ってません!」
ば、バラすなよ~
そこで迷わせる可能性もあったでしょう? テヘペロじゃなくて!
「……やっぱりこのリボンが鍵か。全部灰色一色だしなぁ」
「あたしはFFのリボンかと思った」
「ステータス異常を無しに出来るアイテム……多分違うなぁ」
違うんだけど、ステータス異常を無しに出来る!?
まるで意味がわからない! リボンで? どうやって? こっちの世界はわけがわからない!
「そもそもステータス異常なんて何も無かったわね」
「あったかもしれない。マイちゃんが全部蹂躙するから」
そうだね。けれど、日本人がリボンにそういうものを期待しているとするなら、この二人以外なら惑わすことが出来るかも知れないな。
「これ全部同じなのかな?」
「色は……」
「色じゃなくて、長さよ」
そうマイに指摘されて、タケルは渋い顔のままリボンを真っ直ぐに伸ばして並べてゆく。
あ、迷宮一階から拾った順番把握してたんだ。でもそこまでは要求してないんだよね。がさつなのが多いし、あとから確認のしようがないから。
「……長さがずいぶん違うのね」
「う~ん……これは今思いついただけなんだけど、ムータンちょっと良いかな?」
「はい」
フワフワ……
「そっちの世界の本って、横書き?」
「横にしか書きようないと思いますけど」
「じゃあ、横書きなんだ」
「タケル、何を思いついたの?」
多分当たりなんだけど、本当にどうして思いついたんだろう?
「表に出しちゃいけない文章が入っている書類を黒塗りして、文章潰して見せるのあるだろ」
「あのニュースにする意味が無い奴ね――ああ、リボンがその黒塗り部分?」
えっと……ああ、これか。
え? これでこっちの世界の人間納得してるの? 日本人はミンシュシュギがどうこう言ってるけど、あんまり変わらないんじゃ……
「黒塗りというか、文章が埋め込まれてるんじゃないかって思いつき」
「それで扉が……ああ、わかった。あんたが何を想像してるのか」
え? そうなの? またアニメの二番煎じ?
「じゃあ、試してみても良い?」
「もちろんよ。ただ向こうの文字は読めないから、ちょっと雰囲気ないわね」
「ムータン連れて行こう。そこのドローンごとだけど」
ま、またそんな勝手な事を……
「要するに、向こうの世界との接続が……アンテナ三本だと動けると思う。まぁ、ダメならダメで」
「それもそうね。行ってみよう」
言うが早いがマイはドローンを掴むと607号室を飛び出してしまった。
ええい、行動力!
▼
こうやって仕掛けに見当がつけられると、おどろおどろしい扉のデコレーションにリボンを挿して固定出来る針が並行に飛び出ているのに気付くはずだ。
そういった場所が五カ所。それぞれ合間の長さが違うけれど、集めたリボンはそれぞれに対応出来るようにしている。
「……当たりみたいだ。出した階は関係無かったみたい」
「ムータン?」
あ、ここでムータンってば自分にふるの?
まったく上司の意見聞かないで、フワフワしてるくせに。いいよ。ほとんど当たりなんだから。
「はい。関係ありません!」
フワフワ……
「何か……騙されてる気もする。『妖精憑き』については伝承がよくわからないだよね」
「『妖精憑き』?」
マイも知らないのか。
ちなみに「妖精憑き」という言葉も初めて聞いた。こっちの世界にも無いなぁ。
「“妖精憑き”ってなんですか? 大丈夫ですよ。順番関係ありません。私がお二人に不利益なことするはずがないじゃ無いですか~」
「ごめんムータン。すごくうさん臭い」
マイの辛辣な言葉だけど……確かにうさん臭い。
これ、ドローンが使えるなら……いやフェアリー族を雇っても良いのかも。ああ、ダメだ。フェアリー族に仕事をさせるのは不可能だ。
「――とにかくやるしかないか。マイちゃん、銃の準備だけはしておいて」
「OK。ビームマグナムがあれば、だいたい対応出来ると思うし」
本当になぁ。
その点だけは、このテストプレイの最大の失敗だよ。
「……やっぱり上からだよな。こういう順番で――」
タケルが床に並べたリボンを、扉に対応するように並べ替える。
そしてリボンを挿して行き――五本とも挿し終えた。
FFのリボンって、最近のもあるんですかね?
あれはどういう理屈なのか、未だによくわかってません。
「妖精憑き」については「CALⅡ」というゲームに出てくる言葉なんですよね。アーシュロットというキャラが言うんですけど。果たして「妖精憑き」が蓋然性の高い言葉なのか……
しかし現象としては、あちこちの作品で見るわけです。戦士+妖精という組み合わせ。
「ダンバイン」「ベルセルク」など有名なものが。マイナーどころでは「妖精姫レーン」もそうなのかも。
それはともかく、妖精憑きの伝承ご存じの方。教えて下さい。




