表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/36

式は間違っている

 ギラリ! あるいは ぬらり……


 色んなオノマトペが開発されているね。

 果たして焼き物人形の首をはねようとしている日本刀には、どういうオノマトペが似合うのか。


「覗いてないって、言ったわよね!?」


 マイが手に入れた日本刀をムータンに突きつけているわけだが、安心して下さい。

 それでムータンの本体が危ないわけではない。


 それがわかるからこそ、ムータンも落ち着いて対処出来るのだろう。


「ですから、探知に引っかかるだけで私どもはその詳しいところを知らないのです。ただ、何か特殊なことをなさった事だけはわかるので……」

「く~~~~~」


 マイが鳴き声のようなものを上げた。

 いや、まぁ、だいたいのところはわかるんだけどね。


 タケルが達したタイミングで、どういう位置関係にあるのかが探知され、それによっていつもとは違う信号が出るというわけだ。


 何しろ、新しいサービスのコンセプトだからね。

 こういう部分も充実させていかないとダメだろう、ということで。


 テストプレイということで、それほど複雑な仕掛けはしていないけど、出来れば一階から配置して置きたい仕掛けだな。


「確認したいんだけど、多少は力を強くしてる?」


 そんなマイの動揺に構うこと無く、タケルの冷静な声が401号室に響いた。

 ムータンがこちらを窺っているので、うなずきを返しておく。


「は、はい。何も強化しないとまず武具が持てませんから。ほとんどそちらの想像のままの銃に関しては問題ありませんが、他の武器に関してはこちらのものが基本にありますから」

「なるほど、それはわかった」


 タケルがうなずいて了承してくれたようだ。


「そうじゃないと、まず日本刀振り回すのに苦労するからね。マイちゃんが、あっさり抜いてるから、ちょっと違和感があったんだ」


 そこまで言って、タケルの表情が曇った。


「何? 何か問題あった?」

「日本刀は、どうにかして向こうの世界でも作られたとしよう。だから宝箱に入っていて、それを使えるように適切な調整が出来たと思うんだ」


 それは、その通りだね。

 前にも言ったけど、日本人はとにかく日本刀を信仰してると言っても良いぐらいだし。


「……今のところ、問題は無いんじゃない? 力は強くなってたとしても今のところ大丈夫みたいだし」


 マイも調整の仕事を評価してくれてる。

 ……ん? そういう調整してないこっちではレベルアップに関する不具合は――


「でも、日本刀じゃおかしいんだ」

「おかしい? 何が」


 そうだ。

 何がおかしいんだ?


「多分、さっきの階で刀が出てくるのは、草薙剣(くさなぎのつるぎ)を意味してるからだと思うんだ」

「聞いたことはある名前ね」


 いや、聞いたことないなぁ。

 というか、そもそもそんな意味を持たせていない。


 タケルには武器を持たせたい。

 だけど、今は盾専門。


 そこで日本人大好きな日本刀を配置した。

 配置する理由として、かねてから組み込みたかった仕掛けも取り入れた。


 つまり、草薙剣についてはまずこっちが知らないんだよなぁ。


「草薙剣については八岐大蛇(やまたのおろち)を退治したことで、スサノオが手に入れたって事になってるんだけど――」

「ああ、あの話か。その時に出てきたんだ」


 どうやら日本人にはなじみ深い話らしい。

 調べて……何だムータン。職場放棄か? まぁ、良いか。一緒に確認しよう。


「――実は、それは川で砂鉄を採って、それで剣を作ったことをおとぎ話風にした伝承じゃないのか? っていう説があるんだよ」

「あ、それであの階の水路に意味があることになるのね」


 す、水路は本当に迷宮を複雑にするためだけで、そんな複雑な意味は……

 ムータンは、タケルの話と日本に伝わる伝承を興味深そうに見つめている。


 ――あ、これ日本人以外が打ちだした説なんだ。

 さすが日本刀を信仰する日本人だけのことはある。深く考えなかったんだな。


「ただ、そうなると日本刀なのは、やっぱりおかしいんだよね」

「剣が出てくるんでしょ?」

「そう。剣であって、刀じゃない」


 ん? 何か問題が? 武器なんだし――


「この時代の日本の刀は間違いなく、真っ直ぐな剣なんだ。反りがある日本刀じゃない」

「草薙剣を用意したはずなのに、刀だとおかしいわけね――だって、ムータン!」


 相変わらず、刀を突きつけたままのマイがムータンに話しかける。

 ……このままマイに刀を使われると困るんだけどなぁ。


 いや、それよりもまず――ガタガタガタ!


 ムータンが大騒ぎしながら、所定の位置に戻った。


「は、はい! 伺ってますよ! ええと、このテストプレイに対する率直なご意見ということですね」

「そういうことになるのかしら? タケルはそれで良いの?」

「うん。良いと思うよ。これは多分、本番で向こうの日本人からも文句が出ると思うんだ」


 いや~、それはどうかと思うよ。

 今まで、こっちの世界で草薙剣の話は広まっていないし。


 知らないわけじゃないとは思うけど、タケルほどにこだわりを持っているのかは、望み薄な気がする。

 基本的に、まず生き抜くことが大変な状態からはじめるわけで、そこで武器の形にこだわっている余裕は無いと思う。


 ……けれど、余裕のある日本人相手の商売だから、タケルの考え方は的外れだったけど、結果正解にたどり着いているのかもしれない。


 その辺りも含めて、ムータンには指示を出しておこう。


「ご意見ありがとうございます。ですが、こちらの日本刀についてはこのままでお願いします」

「それはそのままで良いよ。日本刀の方が優れた武器だからね」


 タケルもまた、日本刀の信仰者だったらしい。


 そして、ようやくマイが刀を鞘にチンと収めた。

日本刀と草薙剣の事しか書いていない。

私もまた刀に魅せられたただの日本人だったと言うことですね(社会が悪いのノリで)。


なまじ知識があると自縄自縛に陥るという感じですね。

コンプティークで連載していた「ロードス島戦記Ⅲ」で水野良氏がアルド・ノーバ(のプレイヤー)にかなり辛辣なコメントしてたの思い出します。


今回、タケルは自縄自縛までは行きませんでしたが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ