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俺はセンターに戻る。
見回りをし、普段通り生活をした。
そして一週間後、カラシンに会いに行った。
「やぁケラ。どうだい?」
「順調です。あの……、実は一つ提案があります」
「なんだい?」
「止血センターの人間を半数、別の地域に派遣したいのです」
「それは止血センターの技術を、他の地域にも広げるという事か?」
「はい」
「止血長として?」
「別に役職には拘っていませんが」
「止血主任としてなら、大丈夫だろう。給料は五割増し、部下は各三名」
「はい。それで十分だと思います」
「ゆくゆくは、もっと広げたいのだろ」
「まぁそうですが、今包帯の確認ができるのが俺だけで、そこがボトルネックになってきます」
「なるほどな。まぁでも他の戦線でも、君の技術が広がるなら、良いだろう。許可するよ。必要な事はまた言ってくれ」
「では、半分の四人を出すので、四人充当して頂きたい」
「そうか。指導はどのくらいの期間かかる?」
「指導は半年もあれば、十分かと。やはり問題は俺がボトルネックです」
「そうだったな。すまん、焦らせて」
「いえ、とんでもない」
「各地の受け入れの調整には二週間ほどかかる。その間に伝えておいてくれ」
「わかりました」
俺は皆を呼んだ。
「この中の半分を、別の所に派遣したい。条件は給与が五割増し、部下は三人。役職は止血主任だ」
ざわつく。
「まず行きたい者は手をあげてくれ」
三名が手をあげた。
「ではその三名に行ってもらう」
「次に絶対行きたくない者は手をあげてくれ」
三名が手をあげた。
「ではその者には残ってもらう」
「では残り二名。君達はどう考えている」
「僕なんかが行っていいのか」
「私もです」
「二人とも主任の実力はある。いずれ行ってもらう事になるだろう。ただ二週間後か、もう少し先かだけの話だ」
二人とも頷く。
そして二人は同時に手をあげた。
「僕が」
「私が」
二人はお互いを見て、手を下げようとした。
「じゃあ二人とも行ってくれ。経験者が三名もいれば十分だ。人員は補充されるからな」
「はい」
俺は、カラシンに報告しに行った。
「こっちは問題ない。それでやっておく」
そう言われた。
二週間はあっという間にすぎ、
五名の部下は旅立ち、そして新たな五名の部下が加わった。
一週間ほどはゴタゴタがあったが、皆すぐに慣れた。
また退屈になった。
ヒールをかける包帯の量は増えた。
しかしまだ枯れる様子はなかった。
3か月ほどし、俺は酒を片手に神殿に足を運んだ。
そして神に祈りを捧げる。
「ハマー神様。お話できますでしょうか?」
「あぁ君か。本当に酒を持ってきたのだな」
「もちろん」
「では封を開けてくれ」
酒の封を開けると、酒の匂いが神殿に漂った。
「うん。美味いな」
「これで飲んだ事に?」
「ワシらは基本的に霊体だからな」
「そうですか。そうだ。力はどうですか?」
「あぁ多少減りが早くなったな」
「つりあってますか?」
「まだ貯まり続けている」
「困りましたね」
「ははは。贅沢な悩みだな。お前がヒールを使わないからだ」
「しかしヒールを使うと、バレてしまいます」
「数百年前の神の技なんぞ、だれも知らんよ」
「まぁそうですが……、私が神扱いされても困りますし」
「そうじゃな。しかし短剣を取り返すわけにもいかんだろ」
「そうですね」
俺はセンターに戻る。
新人の一人が暗い顔をしていた。
「どうした?」
「いえ。以前の現場と比べて激務で」
「そうか。じき慣れる」
「そうですね。頑張ります」
「ちょっと待て。肩が凝ってそうだ。触るぞ」
「あっ、はい」
俺はヒールを薄くかける。
「やはり凝ってるな。どうだ。これで?」
「えっウソ。回復しました。なんかウソみたい」
「よかったな。ちょっと疲れた気分になってただけだ」
「はい。ありがとうございます」
新人は作業に戻った。
「これは良いかもしれないな」
俺はあちこち見て回り、
疲れていそうな人達に肩を揉むふりをして、ヒールをかけて回った。
皆面白いように回復していく。
ただ……、
あまり広がりすぎると、別の意味で無駄にエネルギーを使ってしまう。
少なくとも、相手がこっちに回復してくれと、来る事態は避けたい。
抑制しつつ、声をかけていく。
それから一週間。
表面上は何も変わりはないが、皆の顔色はずいぶん良くなっていた。
再び酒を持ち、神殿へ向かう。
そして神に祈りを捧げる。
「ハマー神様。お話できますでしょうか?」
「あぁ。先週来たばかりだろ」
「どうぞお酒です」
酒の封を開けると、酒の匂いが神殿に漂った。
「うん。美味いな」
「それでつりあってますか?」
「何かやったのか?」
「バレないようにヒールをかけて回りました」
「多少減りが早くなったかもな」
「つりあってますか?」
「まだ貯まり続けている。バレないようにって、どうやった?」
「肩が凝ってそうだねとか」
「ははは。そんな事してたら、しまいにゴッドハンドとか言われてしまうぞ。別の意味で厄介だ」
「そうですね。治癒士の組合に、方法を教えろとか言われそうです」
「まったくな。しかし本当はヒールを使っておるからな」
「治療だけど、治療じゃないですね」
「それをワシに言うか?」
「失礼しました」
それから三か月が過ぎた。
「ケラ。東北に行った治癒士から、治療の効果が思うように得られないとの訴えがあった。事情を調べに行ってくれるか?」
そうカラシンに言われた。
俺は皆に東北に行く旨を伝え、
冒険者の護衛を雇い、東北に向かう。
東北へは馬車で一週間程度かかる。
包帯の備蓄は一月分用意した。
東北のセンターに着き、
現状の調査を始める。
特に何も変わったことはなかった。
「なぜだろう。特に変わった感じはしない」
「あの。少しこの包帯に違和感があって」
治癒士は包帯を差し出す。
俺は包帯を確認する。
ヒールがかかっていない。
「これは俺が確認した包帯じゃない」




