↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/12

冗談

「それは面白い冗談だ」


「実際お目にかけたほうが良いかもしれません」


「そうだな。私が試してみよう」


俺達は、前線近くまで行き、魔物を見つけた。


「それでこれでとどめを刺せばいいのか?」


「はい。多少気持ち悪さはありますが」


「私は大佐だぞ。そうそう気持ち悪くは感じまい」


大佐は魔物に瞬時に接近し、

首をはねる。


(どくん)

短剣は流れる血を吸い込んでいく。


「はは。これは確かに気味が悪い。しかし面白い剣だ。しばし使って良いか」


「はい」


そう言うと、大佐は笑いながら、魔物の中に突っ込んでいく。

三十分ほどして、血まみれになりながら、大佐は戻ってきた。


「この剣は良いな。すごく良い。何本ある?」


「五本は用意できます」


「ワシ用に一本欲しいところだが、ガマンしよう。前線に五本導入しよう。いくらだ」


「使っていただいて値を決めていただきたいかと」


「そうだな。じゃあとりあえず、通常の短剣と同じ額を支払おう。それで三か月使ってモチが長ければ、それに応じて支払う。それでどうだ」


「はい」


「数は入るか?」


「少し難しいかと、探してはみますが」


「そうか。では三か月後、こちらもぜひ欲しいようなら、また声をかける」


「はい」


軽く挨拶をすませ、俺達はセンターに戻る。


「ありがとうございます」

俺は頭を下げる。


「いや。こちらこそだ。あれで怪我人が減る。少しは休みも取れるだろう」


「そうですね」


俺はまたいつもの生活に戻る。

魔物を討伐し、包帯にヒールをかける。

それを繰り返した。


三か月が経ち、大佐がやってきた。


「大佐。お久しぶりです」


「あぁ止血長。元気だったか」


「はい」


「それであの短剣なのだが、通常の短剣の十倍だそう。できるだけ集めてくれ」


「わかりました。可能な限りやってみます。どうだったのか、感想を聞かせてもらっても」


「ワシの笑顔を見てわからんか?」

大佐はぎこちない笑みを浮かべてみせた。


「ぎこちないとしか……」


「ははは。武人というのは、笑顔が苦手でな。まぁ十倍出して、できるだけ集めてくれ。こんな言葉は軍部は口に出さんよ。それでわかるだろ」


「はい。私はただ感想が聞きたかっただけです。できる限り探させていただきます」


「これは前の金額への上乗せだ。取っておいてくれ」


「はい」


「それであの短剣」


「はい」


「他の軍の連中には流すな」

大佐は声を潜める。


「わかりました」


「うむ。困ったことがあれば、なんでも言え。ワシがなんとかしてやる」


「それであれば、探しに行くのに、休みを頂きたいと思います。こちらの調整が必要ですが、そうなった時は、是非お力添えを」


「あぁそうか。うむ。わかった」

大佐は帰っていった。


俺は現場を見て回る。

皆のレベルは問題ない。

近くの魔物討伐も問題はない。


私は地図を手に入れ、

近くの元神殿を探した。

馬車で数日のところに、三か所ほど見つかった。


倉庫の包帯の備蓄を確認する。

約二週間分。

俺はその包帯全てにヒールをかける。

準備は整った。


皆を集めた。

「ここ数日、皆のレベルを見せてもらった。想像以上に上がっていて、驚いた。

これであれば、十分任せることができる。

現在ある約二週間分の包帯は、私が全て確認した。

私はしばらく出るので、後は頼む」


「あのどちらに行かれるので?」

治癒士の一人が声を上げる。


「重要な調査だが、軍の秘匿事項に関わる可能性があるので、詳しくは言えない。

ただここから馬車で、数日のところにいるのは確かだ」


「連絡は?」


「一応冒険者を護衛に連れて行く。その者達を通じて連絡は取れるだろうが、基本連絡はつかないと思って欲しい」


皆はざわついた。


「ははは。君達は試験失格だな。いいか。これは君達が、俺抜きでできるかの試験でもある」


場が静まる。


「いいか。私が普段やっている事はなんだ?」


「見回りと討伐と包帯の確認です」


「そうだ。止血をやっているのを見たものは?」


「以前は行われていましたが、今は見ません」


「そうだろ。最近見回りで注意されたものは?」


皆顔を見合わせる。


「いないだろ」


皆頷く。


「討伐は俺がいなくても十分に回っている」


皆頷く。


「つまり包帯さえ、問題なければ、私には役目はないとも言える」


「そんな事は……」


「ははは。ありがとう。でもな実務レベルでは、実際そうなんだ。だから俺は別の意味で、また止血を行う」


再びざわつく。


「俺は思います。止血とは、その場の血を止めるだけではなく、今後流れるであろう血も止める事なのではないかと」


皆頷く。


「今日はまだいるから、気になることがあったら、言いに来てくれ」


「はい」


その日、質問しにくるものはいなかった。

少し寂しくもあったが、心強くもあった。


俺は大佐とカラシンに報告し、

ラスボラとアカヒレに信頼できる冒険者を紹介してもらった。


翌朝俺は冒険者と共に、馬車で神殿に向かう。


冒険者には、護衛任務ではあるが、前線ではなく、魔物と出会う可能性は低い。

それに俺自身が多少戦える。

探し物があるから、どちらかというと、荷物持ちだとだけ伝えた。


馬車の移動は、腰は痛いがのんびりとしたものだった。



数日かけて近くの神殿についた。

まず冒険者に中に敵はいないかを探索してもらう。


中はボロボロだった。

ただ短剣は二十本ほど見つかった。


「その短剣がお探しの?」

冒険者は目を細めた。


「いや。これが目当ての短剣かどうかはわからない」


「というと?」


「似た短剣は多いのだが、特殊な調査をしないと。見分けが付きにくいんだ」


「価値があるものなのですか?」


「私は価値があると思っているさ。しかしね。世界の価値というのは、思っているだけでは変わらない。わかるだろ」


「調査というところですか?」


「あぁそうなるな。まったく学者にとって、調査とは金がかかる」


「私達はそれで稼げるのですから、ありがたいですがね」


「ははは。そうだね。この短剣がハズレでも、君達が美味しいご飯を食えるなら、使った金も無駄じゃないってことさ」


冒険者達は笑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。