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3/12

討伐と治療

俺は再び現場に戻る。

現場は相変わらず、負傷者で溢れていた。

血の臭いが鼻にこびりつき、

逆に安心感を抱いてしまう自分が気持ち悪かった。



「ケラ戻ったか。休暇中なのに悪いが、止血頼めないか?」

カラシンは言った。


「はい」

俺は止血を始める。

「ヒール」

小声でヒールをかける。

傷は塞がっていく。

ほんの少しヒールがかかった所で、やめた。


俺は水を一杯飲みに行く。


倉庫で、俺は包帯に向かってヒールをかけた。


そして、その包帯で止血をしはじめた。

試したのは十五人。

ヒールをかけた包帯を使った者の、傷の治り具合は早かった。

ただ誰も疑問を持たなかった。


その日の豆のスープはやけに美味かった。

そしてぐっすりと寝た。


早朝、俺は辺りを探索して、弱い魔物を討伐した。

そして日中はヒール付きの包帯で止血をし、ぐっすりと眠る。


三か月繰り返した。

ほんの少しだが、

怪我人の数が減った気がした。


「少し怪我人の数が減ってきたな。これからはたまに休めるぞ」

カラシンは俺の肩を叩いた。


ある日の朝、魔物を討伐していると、一人の兵士に見つかった。


「あんた治癒士だよな。なんで魔物を討伐している」


「俺に倒せるのは、弱い魔物だけだが、弱い魔物でも、女子供には命の危険がある」


「そっか。お前いい奴だな」


「治癒ばかりしていると、身体がなまる」


「わかるよ」


「内緒に」


「あぁ」


三日後……


「ケラ働きすぎるなよ。魔物討伐は、兵士に任せておけばいいんだから」

カラシンは言った。


「休みもらえますか?」


「まぁ考えておく」

カラシンは去っていった。


その日辺りから、止血している兵士が魔物の急所や特性などについて、頼まれてもいないのに、教えてくれるようになった。

スープの豆が少しだけ増えた。


「治癒士は治療だけの野郎だと思ってたが、お前は気に入った」

目つきの悪い兵士に言われた。


俺は毎日、ただひたすら弱い魔物を倒し、その力を包帯に込めた。


俺は少し退屈に思えてきた。

「徐々に他の仕事を教えていくから」

とカラシンが言っていた事を思い出す。


「あの。徐々に他の仕事を教えていくからとおっしゃってましたが」


「あぁ、その件だが、君の止血のレベルがあまりにも高いから、別の仕事に行ってもらうのは少し先になると思う。誰も君のような止血ができない」

カラシンは苦笑いをした。



それから一年、ただひたすら、同じ事を繰り返した。

そして前線が三㎞前進した。

二十年間後退が続く中で、ひさしぶりの快挙だった。

カラシンはその功で、前線を受け持つ治癒士長に任命された。


「ケラ。私はこの前線の中央に、集中治療センターを設けたい。君にはそこで、止血長をやって貰いたい」

カラシンは言った。


「止血長?そんな役職は聞いたことがありませんが」


「ははは。私が新設する君だけの役職だ。給与は今の三倍出す。部下は十名。やってくれないか?」


「止血に専念するため、外部からの干渉はなしという条件であれば。あと部下の任命権は私に、部下には止血以外の業務も頼みたい」


「わかった。約束しよう」

カラシンは手を差しだした。


それから急ピッチで、集中治療センターの用意がなされた。

ただ用意といっても、新規建設をするわけではない。

その地域にあった公民館を改装しただけの、治療センターだった。


俺は神殿に向かい、供儀の短剣を二つ手に入れた。

冒険者ギルドを通じ、そこそこ強いが、危険な仕事には従事したくない冒険者を二名雇った。


「初めましてラスボラです」

「私はアカヒレです」

「ケラです。あなた達には俺の直属で魔物討伐してもらいます」


「どの程度の魔物ですか?」

ラスボラは尋ねた。


「この周辺にいる弱い魔物です」


「わざわざあなたが討伐する意味があるので?」

アカヒレは首を傾げる。


「弱い魔物だと、問題がありますか?」


「いえいえ。問題なんかありません。むしろ好都合です。そんなので良いのかなと」


「ちょっと難しいクエストかもしれません」


「というと?」

アカヒレは身を乗り出す。


「この武器を使って、討伐していただきたいのです」

俺は供儀の短剣を手渡す。


「なるほど。短剣ですか。まぁ大丈夫ですよ。これくらい」

ラスボラは言った。


「しかし少し変わった短剣でして、敵にとどめを刺すと、血を吸うのです」


「血を吸う」

アカヒレは目を開いて、短剣をじっと見る。


「しかしキレイな短剣ですね。ずいぶん手入れがされている」

ラスボラは感心する。


「それは一年以上討伐に使っていますが、手入れは特にしていません」


「手入れしていない。刃こぼれも全然ないですよ」

アカヒレは短剣をじっと見る。


「もしかして、血を吸う事となにか関係が?」

ラスボラは尋ねた。


「そのようですね。少し気味が悪いが、手入れはしなくていいから、良い剣だと商人に言われました」


「それはどこの商人で?」

アカヒレはじっと見る。


「行商人でしたので……」


「なるほど。じゃあ私達の武器が損耗しないし、支給していただけるのなら、それはこっちも好都合だ」

ラスボラはアカヒレを見る。


「わかりました。やりましょう」

アカヒレは頷いた。


俺達は三人で討伐に向かう。

魔物を討伐し、短剣が血を吸うさまを二人は初めは気味悪そうに見ていた。

しかし一時間も経つと、

「これなんか可愛く見えてきました」

ラスボラは笑った。


「うん、なんか育てているみたいで」

アカヒレも頷いた。


俺は頷き、時間いっぱい討伐を行った。

二人には、この周辺の見回りと討伐を依頼した。

軍と連絡を取り、許可も得た。


俺は倉庫に行き、

包帯にヒールをかける。


止血に関しては、体力がありそうな者を選んだ。

基本的な止血の心得はあり、技術的に問題はない。

あとは、効果の理由をどう説明するかだ。


「皆さん。俺はケラ。このセンターの止血長です」


皆頭を下げる。


「俺が見た限り、皆さんには止血の技術は十分にあると思います。俺が成果を上げれているのは、止血の技術だけでなく、色んな積み重ねだと信じています」


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