報告
大佐がセンターにやってきた。
「王国内の状況が収まりつつある」
そう言った。
「それは良かった」
「あのアイデアは良かった。ワシの直接の管轄ではないが、感謝する」
大佐は深々と頭を下げる。
「よしてください。できる事をしたまでです」
「人というのはな。できる事を、できるだけしない。そういう生き物だ。だからこうなった」
「……」
「ケラ。お前はできる事をした。それが素晴らしい」
「それは大佐も同じです」
「あぁ同じだ。だから褒めろ」
「素晴らしいです。大佐」
「そうか」
大佐は少し頬を赤らめた。
「それでだ。大佐という呼び方はやめてくれ」
「ではローチさんと?」
「いや違う」
「ではローチ?」
「いや違う」
「ローちゃん」
「わからんかな。このバッチを見ろ」
「増えてます?」
「准将だ」
「准将?」
「知らぬのか。大佐の一つ上の位だ」
「そうですか。御出世ということで、おめでとうございます。准将殿」
「あぁ、ありがとう。君の手柄なのにな」
「いえ。たい……准将殿の采配による結果です」
「そうか。それで頼みがある」
「短剣ですね。扱う兵士の数が増えたと」
「あぁそうだ」
「規模は?」
「最低で十倍だ」
「できればその分を集めたいと」
「難しいか?」
「どうでしょう。やってはみます」
「そうか。頼む。なんでも言ってくれ。お前を支えるから」
准将は肩を叩いた。
「はい」
……
俺は酒を持ち神殿に向かう。
「酒をお持ちしました」
「おぉ。それでどうだ」
俺は酒の封を開ける。
「新人冒険者に食料と泊まれるところを提供する見返りに、弱い魔物を倒してもらう仕組みを作りました」
「それは名案だな。それで」
「それで内部のほうが安定しまして、それを指揮した大佐が准将に昇進しました」
「それでお前は?」
「いえ。特に」
「出世しなかったと」
「はい」
「准将に請求しなかったのか」
「えぇ」
「無欲だな」
「そうですか?十分給料もありますし、今はフグからの売上も入ります」
「どのくらいだ?」
「たぶん准将よりは多いかと」
「あぁ、なるほどな。それなら良かろう」
「はい」
「それで厄介事か?」
「供儀の短剣が今の十倍必要になります」
「まぁ神殿に転がっておるから、拾えばいいだろう。場所を教えてやろうか?」
「ありがとうございます」
「なにか浮かない顔をしてるな。面倒か?」
「もちろん面倒ですが、それよりも消化先です」
「そうか。今の十倍の量のエネルギーだからな。どうだ死体でも生き返らせるか?」
「そんな事できるのですか?」
「できんよ。冗談だ」
「ふっ。よしてください。神様だから本当だと思う」
「そうだな。できそうだったら、冗談に思えんもんな」
「はい。しかし贅沢な悩みです」
「本当にな」
「どれくらいで腐るとか、それはわかるのですか?」
「いやわからんな」
「そもそも、どんな事に使えるのですか?」
「ワシのヒールの力か?」
「よくわからんが、癒し全般だろうな」
「よくわからんというのは、どういう事ですか?」
「例えばな。お前が力持ちだったとするだろう」
「はい」
「あなた力持ちですね。しかし何ができるのですか?と聞かれたら、どう答える」
「重い荷物を運べるとか、力仕事ができますとかですね」
「ワシも同じようなものだ。ケラ。お前がヒールを包帯にかけたから、こうなった」
「なるほど。じゃあ神様が何ができるかではなく。ヒールで何ができるか?を考えろと」
「まぁ、そういう事なんだろうな」
「なんか事例はありませんか?」
「以前にどんな使い方をされたかとかか?」
「はい」
「病を治したりはしてたな」
「そうなんですか?」
「どんな病を?」
「色々だよ。とりあえず回復させる力はあるからな」
「失ったモノを回復まではできないのですか?」
「それは難しいだろうな。できてもかなり膨大なエネルギーがいる。それに……」
「まさか、神殿が異端視されたきっかけって」
「あぁ、王族の一人が片腕を失ってな。その回復の為に、普通の魔物だけでは足りなかったのだろう」
「そうだったのですか」
「例えば飴玉に、ヒールをかけてみると、どうなるでしょうか?」
「知らんわ。やってみろ」
「人体実験ですね」
「飴玉だろ。それにヒールだろ。問題はないだろう」
「まぁたしかに。じゃあ、まずは自分でやってみます」
「あぁ、そうだな。じゃあな」
俺は神殿をあとにした。
俺は飴玉を買い、ヒールをかける。
それを舐めた。
普通に美味い。
「あれ?止血長何を舐めてるんですか?」
部下がやってきた。
「飴玉だ」
「一つくれません?喉が痛くって」
「あぁ」
俺は飴を手渡す。
「ありがとうございます」
部下は飴を舐め去っていった。
一時間後、先ほどの部下がやってきた。
「あの飴スゴイですね。喉の痛みがピタリとやみました」
「そうか。ちょっと喉を触っても良いか?」
「はい」
俺は部下の扁桃腺を触る。
腫れている感覚はない。
「調子の悪い連中はいないか?」
「えっと、あそことあそこ、あそこにも」
「あぁわかった。じゃあな」
俺は調子の悪い連中に飴玉を配った。
皆、数時間後には普通の状態に回復していた。
俺は飴屋を訪れた。
「へい、いらっしゃい。あぁ先ほどの旦那。またご入用ですか?」
「一つ尋ねたいのだが、この飴玉はどこで作ってる?」
「これ街の端の飴玉工房で作ってます。ですが……」
「どうした?」
「いえ。もうこの飴は入手が困難で」
「どうした?」
「飴玉工房の店主の息子が博打でね。借金抱えてしまって、土地を売らないといけなくなったんです」
「そうか。わかったありがとう」
「へい」
俺は飴玉工房に向かった。
「あなたが店主か?」
「はい。テトラです」
「私はセンターの止血長をやってるケラという」
「はい」
「飴玉の特注はできるか?」
「お受けしたいのは山々ですが、実は借金の返済で土地を売らねばならず」
「借金は俺がなんとかしよう。これで足りるか?」
俺は金を渡す。
「十分ですが。なぜこんな事を。ただの飴玉工房ですよ」
「それはわかってる。どうだ?受けるか?」
「は、はい。ではまず返済してきます」
「いや、返済しにいくな。ここに呼べ」
「は、はい」




