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返済

飴玉工房に借金取りがやってきた。


「あんたが肩代わりしてくれるって」

男は言った。


「まず書類を見せろ」

俺は書類を確認する。


「軍部の准将を知っている。借金は返済するが、准将にも目を通してもらう。異論はないな」


「そ、そんな部外者が口を出すことじゃねぇ」


「なぜだ?やましい事でもあるのか?」


「そ、そんな事はねぇけど。じゃあ勝手にしやがれ」

男は帰っていった。


「どうかされたのですか?」

店主は言った。


「いや。どうもしてない」


「何か不審な点でも?」


「いや知らない。正しいのかどうかもわからない。でも准将ならわかるかもしれない」


「なるほど。正しいか確認する為に、准将に聞かれるわけですね」


「そういう事だ。もし不正でもあれば、損をするからな」

俺は笑った。


俺は准将に書類を持っていく。

准将は部下を呼び、目を通させる。


「すまんな。俺にもわからんのだよ。しかしこいつならわかる」


准将は部下と話している。

「この借金取りは、軍部に呼びつける。叩けばホコリが出そうだからな」

准将は笑った。


「では?」


「ただ払う必要のあるものは支払えよ。払う必要のないものはびた一文支払う必要はないがな」


「はい」


翌日、准将の部下がやってきてこう告げた。


「一割だけお支払いください」


私は工房に向かう。

「一割で話がついた」


「ありがとうございます。どうしましょう。よければケラ様がうちの主になって貰えますか?」


「なぜだ?」


「察するに、多量の飴玉がご入り用なのでは?」


「そうだが」


「私共には技術がありますが、多量の飴玉を作るための人手や設備がありません。それに今回のも、結局息子の不始末が原因。同じようなことがあるかもしれません」


「なるほど私が主人なら、その采配ができると」


「はい」


「じゃあ、それを受けよう。私はフグ商会という商会を持っている。そこの傘下に入ってくれ。ここの土地とか、設備は買い取らせてもらうよ。それで君らは雇うという形でいいか?」


「はい。あと出来れば息子を雇いたいのですが」


「あぁ構わない。息子はそれで良いのか?」


「はい」

息子が奥から出てきた。


「君が息子さんか。じゃあ頑張ってくれ」


「それで、どうしましょう」


「そうだ。そうだ。薬草入りの飴玉を作れないか?」


「薬草入り?」


「あぁ。治癒士か軍部を通じて流通させようと思う」


「なるほど。しかし薬草を入れると、葉があるゆえ品質が安定しません」


「親父。薬草を煎じて煮詰めた液ならどうだ?」


「おぉそれならできます。どうですか?ケラ様」


「うん。それで良い。例えば飴玉の中心に芥子粒やゴマを一粒入れるのは可能か?」


「芥子粒は小さすぎて難しいですが、ゴマならいけると思います。まず薬草の前にそれをやってみましょうか?」


「あぁ頼む。ゴマはこちらで用意する」


俺は店を出て、ゴマを買いに行く。

ゴマを買い、ヒールをかける。


「戻った。このゴマを使ってくれ」


「はい」


店主は俺の目の前で飴玉を作り出した。

しばらくして飴ができる。

「どうぞ」

店主は飴を手渡す。


俺は舐める。

美味いな。


「二人も舐めてくれ」


二人も飴を舐める。


「なんか力が湧いてくるような」


「親父なにかしたか?」


「ははは。これは少し特別なゴマだ。ゴマはこれを使ってくれ。後日薬草のリストを渡す」


「はい」


俺は土地代の手付などを支払い、店を出た。

後日、フグと共に店を訪れた。

薬草のリストと、契約を済ませ、あとは飴玉のサンプルを待つのみとなった。



飴玉のサンプルはとてもじゃないが、美味いものではなかった。


「テトラ。これはさすがに不味いな」


「えぇ。私もこんなに不味い飴を作ったのは初めてです」


「親父。薬として流すなら、不味い方が説得力があるんじゃねぇか」


「面白いことをいうな。わかった。このまま行こう」


「しかし、それでは職人として納得がいきません」

店主は苦笑いをした。


「親父。俺らは雇われだから、ご主人様の意見は絶対だぞ」


「あぁそうだったな。これは失礼を」


「いやいや。良いんだ。ではこれと並行して、上級仕官やお貴族様用の美味い飴も作ってくれるか?」


「良いのですか?」


「あぁ高く売りつけてやる」


……

薬草入りの不味い飴を大佐やカラシン、そして治癒士協会にバラまいた。

その数俺の一月の給料分。

さすがにやり過ぎたかとは思ったが、続々と注文が入った。

特に治癒士協会からは多量に発注を受け、異例のSS級という称号まで得た。


会長はこう言った。

「ご活躍は耳にしていましたが、適切なランクを提示できていなかった」


「いえ。気にしてませんので、もしかしてランクが低いという事で導入に支障でも」


「するどいな。そうだ。そういう事だよ。この飴を作ったような者を低ランクに置くという事自体がありえんと」


「それだけですか?」


「あとは我々の権威付けだよ。これ、治癒士の技術の範疇をはるかに超えてる」


「なるほど」


「どんな技術だ」


「大したことはしていません。温故知新ですよ。ありふれた技術です」


「まぁいい。では受けてくれるな?」


「そちらに異論がなければ」


「ありがとう。それと治癒士協会公認の称号をつけても良い」


「つけても良い?」


「うむ。つけたほうが信頼性が出るからな」

会長は苦笑いをしている。


「そうですね。つけましょう」


「あとしばらくの間は街への流通はやめてくれ」


「軍部と冒険者ギルドからも言われてます」


「軍部と冒険者ギルドは良い。一般の商人に流さねば」


「わかりました。でも私が奉仕活動で民に配る分までは文句は言いませんよね」


「どういう事だ」


「いえ。実は南部の村で伝染病が流行っております。そこに配布しようかと」


「あぁ、そうだな。しかしあそこは捨てられた村だ。お前にメリットはないぞ。治癒士も近寄らんくらいだからな」


「別に構いません。奉仕活動ですから」


「好きにしてくれ」


「はい」


S級ヒーラーだった私は、回復魔法がない世界に転移した。

私は治癒士になり、そしてSS級になった。

回復魔法はないが、人を治癒することはできた。

この先何があるかはわからない。

でもあの神様と共になら、悪くはないと俺は思う。


END



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


この作品は完結していますが、

反響があれば続編を書く可能性があります。

ブックマークしておくと、もし更新された場合に追いやすくなります。


■坂本クリア作品

異世界・現代・コメディなど様々な物語を書いています。

次に読む作品はこちらから探せます。


坂本クリアの小説まとめ|全作リンク集

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2898515/blogkey/3591538/


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