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旅の始まり

ノワールが引く馬車に揺られながら、旅気分を満喫中な俺。

いやぁ、ノワールが馬車を引いてくれてよかったよ。

頼む時さ、ノワールが嫌がるんじゃないかと思っていたけど、意外とすんなり頷いてくれた。

俺が頼んだからか? とは思っていたが、ノワールを見る感じ、楽しそうに引いているので、好きでやってくれている感じだな。

馬車の中の方へと目を向けてみると、ルフェ以外は戦闘後の疲れからか、ぐっすりと眠っている。

アルフは元が蝙蝠なだけに、天井で逆さになって眠っているが。

ノワールも戦ったので疲れていないだろうかと心配になるが、元気に引っ張っているのを見る辺り、まだ体力はあるのだろう。

そして、ルフェはと言うと、ずっと前から気になっていたと言うものを渡している。


「おいしいですね、このきび団子と言うものは。メイちゃんたちが夢中になるのもわかります」

「まぁ、そういうスキルで使っているからな」


そう、俺の『魔物へのお菓子モンスタースイーツ』によって作り出したきび団子をルフェに与えていたのだ。

俺がメイたちに与えているのを見る度に気になっていたらしい。

とは言っても、このスキルで作った物は魔物や魔族の興味を引く様にできているので、仕方ないと言えば仕方ない。

だが、元とはいえ、お姫様がきび団子を食べている姿はなんというか……シュールとしか言いようがないな。


「思えば、このきび団子を作っているユニークスキル『魔物へのお菓子モンスタースイーツ』は材料さえあれば、他も作れるんですよね?」

「え? あぁ、うん。そうだな。まぁ、まだ作ったことはないけどな」


まぁ、今のとこ魔物の料理ばかりしか更新されていないと言う問題があるがな。

もしかして、魔物が魔物を食う事によって強くなっていくって、ヘルプさんがあの時言っていたし、魔物の料理しか増えないのはそういう理由なのか?

……うん、ありえそうだな。


【その可能性は大かと思います】


あ、やっぱり?

そんなことを思いながら、ルフェさんへと視線を向ける。

ルシファーの姓を剥奪されたことによってか、四翼あった翼は一対の翼のみになってしまっている。

やはり、力もそれなりに下がっているのだろうか。


【個体名:ルフェ・ルシフェルの今の強さはAランクほどとなっております。ルシファーの名を剥奪されたことにより、力が低下しているのが見て取れます】


やっぱり、影響ってあるんだな。

まぁ、コレで生贄として狙われる心配はないんだから、よかったんだと思うけど。

それよりも、そろそろ行き先を決めないといけないし、陽も沈んできたしな。


「ノワール、今日はここら辺で野宿にするから止まってくれ。お前ももうヘトヘトだろ?」

「ガウッ!」


了解! と言う様な返事をしたノワールは野宿が出来そうな草原へと足を向け、少し街道から外れると足を止める。

俺は馬車から降りて、背伸びをしていると、足元に巨大な魔法陣が展開される。

それは馬車も入るほどの巨大な魔法陣。


「私達に安息の地を。『安息の守護リリーフガーディアン』」


ルフェの呟きと共に展開されるのは俺たちを囲む様に光の壁が生成されていき、やがてドームの形となる。

簡単に言うと結界になったと言うべきだろう。

俺はいきなりのことで驚きながらも、ルフェへと視線を向ける。


「こう見えても元は天使ですから。守護の力はお手の物ですよ?」

「……ヘルプさん」

【個体名:ルフェ・ルシフェルからエクストラスキル『守護者』を観測しました。全ての守護の力を扱う事が可能なスキルです】

「なるほどね」


今度からテイムした魔物や魔族の情報は先に確認しておいた方がいいかもしれない。

と言うわけでヘルプさん。


【もちろん、徹底解析は開始しております。少々お待ちください】


流石だぜ、ヘルプさん。

付き添って、まだ数日だと言うのに、そこまで俺の考えを読み取れるなんて。


【わかりやすい思考回路なので、わかるだけです】

「あ、うん……そうですか」


こう……もうちょっとオブラートにして言ってくれてもよくないかな?

逆にそれはちょっと傷つくぞ、ヘルプさん……。

まぁ、思考が単純なのは今更だから、それは置いといて。


「今はテントの準備だな」

「え?」

「え?」


ルフェが何を言っているのですか? と言う様な呆けた様な表情でこちらを見てくるものだから、俺も思わず反応してしまう。

え? 俺、何か変なこと言った?


「どうしてテントの準備をする必要があるのでしょうか? 馬車があるんですし、それなりに広いですから、皆寝転ぶ事はできますよ?」

「え?」

「え?」


いやいや、何かおかしなこと言ってますか? と言う様な感じで首を傾げないでくれるかな、ルフェ。

まるで俺がおかしいみたいじゃねぇか。


「いやいや、皆はそっちで、俺がテントで寝るだけだから」

「いえ、ですから、ユージさんもこちらで寝ればいいじゃないですか」

「え?」

「え?」


いや、だから、また首を傾げないでくれるかな。

この人、少し常識欠けてない?

メイが俺の前で着替えようとした時は急いで止めてたのに、一緒に寝ることに関しては抵抗はないのか。

それとも……俺が異性として見られてない?


「いやさ、ルフェの申し出はありがたいけどさ、女性ばっかりのところに男一人が一緒に寝るのは流石に問題があるんじゃないか?」

「大丈夫です。ユージさんは信頼できる人ですから、こういってるんです。私だって、誰にでもこういうことを言うわけではありません」


あ、ちゃんと考えてはいたのか。

いや、だからと言って、女性ばかりのとこで一緒に寝るのは俺が困る。

なんというか……うん、部屋に一緒に泊っているのとは訳が違うからな。

馬車が少し広いとはいえ、結局は触れあってしまうこともあるわけで。

……うん、ダメだな。

そんなことをしたら、俺の理性がガリガリと削られかねない。

スイムに対してはないとしても、問題はメイとルフェだからな……。

なら、もう一つの理由も言ってみるとするか。


「一応いうと、もう一つ理由はある」

「それは?」

「ノワールだけ外で寝させるのは寂しそうだからな。この大きさだと馬車に入れないし。だから、外で一緒に寝てあげようかと思ってな」


ノワールの体を優しく撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めてから、甘える様に鼻をこすり付けてくる。

ハハハ、可愛い奴め。


「そういうことですか。なるほど、わかりました。それなら、私もご一緒します」

「そうそう、だから俺とルフェはテント……なんでやねん」


思わずツッコミを入れちゃったよ、関西弁になってしまったけどさ。

どこをどうしたら、そういう話になるのだろうか。


「いやさ、ルフェ? 俺の話聞いてた?」

「聞いてましたよ? ノワールちゃんが寂しそうだから、一緒に外にいる事にしたんですよね。なら、私も付き合おうかと思いまして」

「もう一つの理由は忘れたのかな!?」


いや、この人常識欠けてるっつうか、少し天然だわ。

え? 何? メイといい、スイムといい、俺の元には天然か、無邪気しかいないの?


【その様ですね】


いや、肯定しないでくれるかな、ヘルプさん。

ロキも無邪気……いや、アレは無邪気っつうか、狂気だったな、うん。


【それと報告ですが、個体名:ルフェ・ルシフェルの解析が完了しました】

「え? 今?」


タイミングと言うものがないのだろうか、ヘルプさんは。


【じゃあ、KYと言うことで、このままスキル公開しますね】


あ、何気に拗ねたぞ、ヘルプさん。

それと同時に俺の頭の中にはルフェのスキルが展開される。


—————————


スキル:『剣技』


エクストラスキル:『守護者』『火炎魔法』『祝福者』


ユニークスキル:なし


—————————


やっぱりと言うべきか……。

ルシファーの名を持っている時はあったのだろうと予想できるユニークスキルはなしとなっていた。

元からないはずなら『なし』とヘルプさんが表示するはずがない。

と言うことはルシファーの名を取られる前はあったと言うことになる。

まぁ、他にも気になるところはあるが。

『堕天使』なのに『祝福者』って……これ、絶対天使だった頃の名残だろ。

まぁ、祝福っていうことは回復魔法を得意とするスキルなんだろうけど。


【後は味方を強化することも得意とするスキルです】


なるほど、だから『祝福者』なのね。

まぁ、コレを見る限り、オールラウンダーなタイプなんだろう。

剣技を使えるってことには驚いてるけど。


「テントはこんな感じでいいでしょうか?」

「え? あ、おう。そうそう、そんな感じに張ってもらってだな……いや、だからさぁ」


いつの間にか馬車からテントを取り出しているし。

ルフェはそのままテントの中へと入っていき、中から顔を覗かせると俺を見てくる。


「ユージさん、中も問題ありません。さぁ、寝ましょう。今日は疲れたでしょ?」

「まぁ、確かにルフェを助けるためにロキやらメフィストフェレスやらアポカリプスやらと戦って、疲れたから、スゲェ眠たいけど……」


だからと言って、ルフェと一緒に寝るつもりは一切ないのだが?

おいでおいで、と言う感じで手招きされても行く気はないのですが?

え? これ、どうすればいいの?


「ガウッ……」


そして、ノワールから心中お察ししますと言わんばかりの小さい鳴き声。

いや、察しているのならルフェをどうにかしてほしいんですが?

と言う感じでノワールを見ていると、腕を掴まれる感覚がして、そちらへと視線を向ける。

そこには俺の腕を掴んでいるルフェの姿が……え?


「え?」

「疲れてるのなら早く寝ましょう。大丈夫ですよ、『祝福者』を持っているので、快眠できる様にしてあげますよ」

「え?」


頭の理解が追いつくよりも先にルフェにテントの中へと引きずり込まれてしまい、そのまま寝転ぶ様に動かされる。

あまりにも自然すぎる流れに更に理解が追いつかず、更には頭に何か柔らかい感触……恐らく、いや、間違いなくルフェの膝だろう。

いや……ホントに待ってください。

自然すぎるこの流れに俺はどう反応すればいいの?

いや、っていうかさ……。


「か、快眠できる様にしてくれるのは嬉しいけど、俺よりも先にノワールとか、メイたちとかにさ」

「大丈夫ですよ。メイちゃんたちに馬車で眠っている間にしておきましたし、ノワールちゃんはユージさんが終わってからしますので」

「えぇ……」


いつの間にしてたのさ、そんなこと。

少なくとも、俺が見ている時はそんな素振りはなかった気がするけどな。

なんて思っている間にルフェの手から淡い光が溢れ出し、ゆっくりと俺の顔に近づいてくる。

え? いや、なんだか、ゆっくり迫ってくる手が逆に怖いんだけど。


「いや、だから、ちょっと……まっ……」

「ゆっくり休んでください、ユージさん」

「……て……」


眠気で重たくなっていく瞼を一生懸命開けようと頑張るが、眠気には逆らえず、俺はそのままゆっくりと目を閉じた。


「おやすみなさい、ユージさん」


その一言を聞いたと同時に俺は眠りへと落ちていった。





どこかの部屋。

そこで一人の少女———あの時助けたエリーナが本を読んでいた。

エリーナは読んでいた本をそっと閉じると、ゆっくりと外へと視線を向ける。

そう、鉄格子で作られた窓・・・・・・・・・から見える月を見るかの様にだ。


「今日は綺麗な満月ですね。今から少し占いでもしてみましょうか? 意外と面白い結果が……そういえば道具がありませんでしたね」


ハァ、と軽いため息を吐くと頬杖をつく。


「もうお父様も酷いですね。『風の護石』を人間に貸しただけでこんな仕打ちをするなんて……。まぁ、覚悟の上でしたけど。さてと、あの変わり者の人間であるあの人は来てくれますかね? 今の私の元に」


エリーナは裕司のことを思い浮かべながら、そっと微笑んだ。

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