旅立ち
メイが未だに気を失ったままのルフェさんをお姫様抱っこで抱えながら、俺たちは洞窟を出るために歩いていた。
俺がした方がいいんだろうか……うん、やめよう。
なんか変なフラグが立つ気がしたから、回避した方がいい予感がする。
それに異性に抱っこされてるなんて知ったら、嫌だろうしな!
そんなことを思いながらも、『悪魔神教』の兵たちの相手をしていたであろうスライムたちに目を向ける。
所々血が飛び散っているのを見る辺り……うん、捕食されたのだろう。
スイムが通る時に声をかけている辺り、解散か何か言っているのだろうか、スライムたちはスイムの言葉を聞くと、そのままどこかへと去っていく。
うん……どこに行くかはわからんが、一つ間違いなく言えることがある。
新しい魔物がこの世界に誕生しちまったってことだよな~。
「……気にしなくていいって言ったハズ。いつかは生まれる運命だったんだから」
「それでもですよ、ムルムルさん。気にしちゃうのは当然で……で、なんで手で一生懸命顔隠してるんですか?」
「……見られるの恥ずかしい。予備の布、持ってくるの忘れてたから」
えぇ、今更……。
「……今更でも関係ない。あの時は戦闘中だったから」
「もうここまで読まれてると、逆に怖くなってくるんですが。俺の思考と顔、大丈夫かな? なんでそんなに的確に考えてることがバレるんだ?」
【考えてることが余程顔に出やすいんですね。もう顔に書いてあると言わんばかりにです】
「マジかぁ……」
そこまで思考読まれやすい顔ってのも悩みもんだけどな。
つうか、個人的には普通にしているつもりなんだがな……それが逆に読まれやすいのか?
【もう考えても仕方ありませんし、諦めませんか?】
「ヘルプさん、今回はとげのある言い方だな」
【気のせいです】
いや、絶対気のせいじゃないと思うんだけど……。
それに思い出せば、ムルムルさんは基本人見知りなんだっけ?
俺たちには慣れたから普通に話しかけてくれていたけど……。
それよりもロキを相手にしていたリオンさんは一体どこに。
「意外と君の後ろにいたりしてね~」
「どぅわ!?」
いきなり背後から聞こえてきた声と肩を掴まれたことによって思わず跳ね上がって、悲鳴をあげてしまった。
振り返ってみると、そこには所々ボロボロで血塗れなリオンさんがいた……って、え? 血塗れ?
「なんで血塗れなんですか……」
「え? そりゃ、君。『虚の魔物』とかいう未知の魔物を相手にしていたんだよ? いやぁ、苦戦した苦戦した」
「マジっすか……」
魔王であるリオンさんさえ苦戦させてしまうとは、ロキの強さとは一体……。
いや、と言うよりロキの『時の支配者』を無効化っぽいのをしてたよな?
それなのに苦戦って……想像がつかないなぁ。
軽く笑ってみせるリオンさんに対して、顔を手で隠しながらも、その隙間からジト目でリオンさんを見るムルムルさんの姿が目に映る。
「……嘘はよくないですよ。歴代の魔王も、現魔王たちも含めて『最強』と謳われてる貴方が未知の魔物相手とはいえ、苦戦するはずがありません。と言うよりも、死ねないんですから、余計にでしょ」
「あ、やっぱり嘘だってわかっちゃう?」
「……ロキの方が結構ボロボロだったんです。それくらいの憶測はできます」
ムルムルさんの言葉にリオンさんは笑ってみせるのだが……え? 嘘なの?
この血塗れでボロボロな状態を見ると、信憑性はありそうなものだが……確かにロキのあの時の姿を思い出すと、どちらかというとリオンさんの方が軽傷に見える。
と言うか、よく見たら無傷じゃん。
この人は……。
「あ、なんかユージに冷たい目で見られてる。いやぁ、嘘ついたのがいけないのかな? それとも、妹を見捨てようとしたことが? う~む、どっちもありえそうだから否定できないんだよな!」
「安心してください。アンタの今までの行動全てが原因ですから」
「アレェ? 凄く声色が冷たいぞ?」
今までの自分の行動を振り返れよ、この魔王は。
リオンさんは相変わらずニコニコしていて、気にしている様子は特にない。
そして、そのままリオンさんはメイに抱えられているルフェの元へと歩いていく。
メイはメイで近づいてくるリオンさんを睨みつけながら、警戒している様だ。
まぁ、出発前であんなことがあればな……。
「来てたんだ。何しに来たの?」
「アハハ、こっちはこっちで声色が怖いぞ?」
「当たり前でしょ? 貴方は自分の妹を見捨てようとしたんだよ? そんな奴がどの面下げてきてるのって話だよ」
ルフェさんを抱えていなければ、今にでもリオンさんに飛び掛かりそうな雰囲気なメイ。
その時、ルフェさんの瞼がピクリと動く。
「う……ん……?」
ゆっくりと開かれた瞼。
目に差し込む光が眩しいのか、手を前に出して、光を遮る。
少しずつ意識が覚醒してきたのか、ルフェさんは辺りを見渡してから、俺と目が合う。
「……私は」
「目が覚めましたか、ルフェさん?」
「え? は、ハイ」
俺が笑顔で聞くと、キョトンとしながらも頷くルフェさん。
メイに抱きかかえられていると気付いたルフェさんはメイの肩を軽く叩く。
「その、降ろしてもらってもよろしいでしょうか?」
「うん、わかったよ」
メイはゆっくりとルフェさんを降ろすと、少しふらつきながらも立ち上がり、微笑みを浮かべてからリオンさんを見る。
「お兄様も来てたんですね。私を助けに」
「それはないかな。正直、お前を見捨ててたからな~」
ルフェさんが言いきる前に遮るリオンさん。
その顔は相変わらずニコニコと笑っていて、何を考えているのか読めない。
「だってさ、君は俺の妹なのに敵に簡単に捕まるってどういうことなのさ。お前を攫ったロキだっけ? 俺は特に問題なかったけどね」
「そうですか。まぁ、お兄様のユニークスキル『混沌』さえあれば、全てのスキルを無効化など可能ですもんね。ありとあらゆるものを有耶無耶に、滅茶苦茶にしてしまうスキルですから」
「『混沌』……」
あの時のマーブル状の何かは混沌の物だったのか。
『混沌』……一体どんなスキルなんだ。
【その名の通り、『混沌』そのものを体現したスキルです。天地が存在する前、万物が定められていない時などのことを指しております。このスキルによって、理、概念などの森羅万象が効かなくなり、個体名:ムルムルが死ねないと言っていたのは、そのせいで生死の概念がなくなったために死ねなくなったものと推測します。『不死殺し』を持っていようと殺せません。不死とは違うので】
マジかぁ……。
つうか、最早無敵じゃないのだろうか? と言うよりも、そんな『混沌』を持った人を見て、俺のSAN値とか大丈夫なのだろうか?
まぁ、何ともないのだから問題はないのだろう。
「やろうと思えばできるけど、なりたい?」
「いや、結構です」
俺の顔見てなかったよね?
それでもわかるって、ホントに心の声を呟いてたりしないよね、俺?
「それでお兄様は何故ここに? あ、わかりました。私から『ルシファー』の名を消しに来ましたか?」
「よくわかったね。そうだよ。血は繋がっていたとしても、君は敵組織に捕まってしまった。それも簡単にね。なら、その名は君が持つべきものじゃない。よって、今を持ってルフェからルシファーの名を剥奪、そして城からの追放だ。流石に王都からの追放はしないけどさ。これで君と俺はもう赤の他人っていうわけだ」
「そうですか」
お互い笑みを崩さないまま話は進んでいく。
リオンさんは本当に何を考えているのかわからないが、なんだろうか 。
ルフェさんの笑みは自身の兄の言っている本当の意味はわかっていると言っている様な笑みに見えた。
メイがこの話を聞いて飛び掛からないのは、話の邪魔をしないためなのか、それとも少しは成長したと言うことなのか。
どっちかはわからないが、まぁ、成長したのだと思っておこう。
すると、リオンさんは俺に近づいてくると、お金が入っているであろう布の袋を渡してきた。
「ハイ、お疲れ様。一日だけだったとはいえ、依頼を引き受けてくれたからね。これは依頼料だよ。これからの旅の少しの足しにでもなればと思って、少し多めに入れてるから」
「ありがとうございます……じゃなくて、ルフェさんを追放ってなにもそこまでしなくても」
「いいんだよ、俺が決めたことだし。弱い妹はいらないから」
だからって、追放というのはあまりにも……。
俺がそう思っていると、リオンさんは俺たちに背を向けて歩き出す。
確か、あっちの方向は『フェルシオン』がある方向だ。
「それじゃ、俺は行くよ。ユージに『魔王』の素質について説明してあげようかと思ったけど、もういいかな。大体、色んな奴と出会って、想像がついてきたでしょ?」
「……まぁ、何となく。人の身でありながら、『魔王』に至ろうとする者……と言われれば。だからと言って、全てがわかったわけじゃありません。俺の体は……一体どうなるんですか? これから何が起こるんですか!?」
自分が自分じゃなくなっていくかもしれない恐怖。
戦闘が終わった今、『魔王』の素質の話を振られて、その不安がこみ上げてきたのだ。
そんな俺の恐怖と不安を理解しているからか、微笑みを浮かべるリオンさん。
「安心するといい。種族上は『人間』のままだよ。悪魔神教の奴らからも聞いたんでしょ? 人の身でありながら、『魔王』に至る者……。それは君の『可能性』なのさ。人間は『可能性の体現者』だからね。『勇者』になれる者がいるならば、その逆も然り……『魔王』に至る者もいると言うわけだよ。まぁ、ちょこっと寿命が延びたり、肉体の老化が遅くなったり、多少打たれ強くなったり、目がよくなったり、身体能力と魔力が多少上がったりする程度じゃないかな。影響があるのは」
「寿命はどれくらい?」
「う~ん、わかんないけど、五百年以上は生きれるでしょ。いや五百年と言うのも短いか」
「なげぇよ」
アンタたち魔族からすれば、普通なのかもしれないが、人間からすれば十分に長すぎる年月だよ。
五百年以上って……え? マジで俺の肉体、変化していってない?
「大丈夫、種族は『人間』のままだから」
「知ってますか? そこまで生きる人を『人間』とは言いません」
「じゃあ、『新人類』」
「嫌だよ」
なんで新人類に至らないといけないんだよ。
だけど、まぁ……あの時、高速で動き回るメイたちを何とか見える様になっていた理由は納得できた。
魔力も上がってる……ということは俺も戦える程度には!
【生活魔法を多用することや、きび団子を今まで以上に作れるほどの魔力量にはなってます。戦闘で使えるほどは……ないですね。使ったとしても、下級魔法一発で魔力切れになるかと】
「俺だって……戦闘で使う様な魔法使ってみてぇよ……」
思わず泣きそうになるが、ここは堪えなければ。
だって、この人の前で泣いたら、絶対弄ばれる。
「まぁ、後はまだ完全覚醒はしてないみたいだから、頑張ってよ」
「え……?」
まだ完全覚醒してない……?
と言うことは少しずつでも覚醒していけば、俺も魔法を使えるほどに。
【なるかは保証できませんね】
久々に心折りに来るよな、ヘルプさん。
本当にテイマーとしての力しかないな……俺。
「まぁ、だからこそ『魔物使い』と言う職業だったのかもしれないね、と俺は思うよ。じゃあ、その力で君だけの軍団を作るの楽しみにしてるよ。次会う時に魔王に覚醒していれば、土地あげるから楽しみにしててよ」
「いらねぇ……」
それ、国作れって言ってるよな、完璧に。
リオンさんは背中の翼を広げると空へと飛んでいき、あっという間に姿が見えなくなっていく。
俺たちはそれを見送ると、ムルムルさんが影の中へと消えていくのが見えた。
「ムルムルさんも行くんですね」
「……うん。ユージ、メイ、皆。一緒に戦えてよかった。これから君たちが王都に戻ってくるかはわからないけど、このまま旅立つのなら旅の無事を祈っておく。後……姫様をよろしく」
「わかりました」
「……ありがとう。あ、そうだ」
ムルムルさんは潜るのを途中でやめると、影を自身の隣に伸ばすと、その中から何か……いや、馬車が一つ出てくる。
それも少し大きめなのを見ると……旅用のなのかもしれない。
「……これは私からの餞別。長旅になるだろうし、仲間も増えていくかもしれないでしょ? なら、足がある方がいいよ」
「いいんですか?」
「……いいよ。中に地図もつけておいたから、それを頼りに旅をするといいよ。馬車はノワールにでも引っ張ってもらえばいいと思うから。それじゃ、私は行くから」
「ハイ」
「バイバイ、ムルムル!」
「うみゅ!」
メイとスイムは手を振り、ムルムルさんはそれに反応して手を振り返してから、ルフェさんへと視線を向ける。
ルフェさんも小さく手を振り、それを見たムルムルさんは影に潜って、その場から姿を消した。
それを見送った俺たちは少し無言になってから、ルフェさんへと振り返る。
「ルフェさんは……これからどうしますか? リオンさんによって、勘当されてしまいましたけど」
「そうですね……。お兄様が私のことを想ってしてくれたことですし、世界を見て回ろうかと」
「? リオンが想ってしてくれたことって、縁を切ることが? 名前まで奪って」
メイが首を傾げながらも言うと、ルフェさんはクスッと笑ってみせる。
「えぇ、そうですよ。お兄様はああいう言い方しかしないから酷い人だと思われるんでしょうが……あの人は全て目的があってのことです。私の救助を貴方達に任せたのも」
……なるほど。
この戦いで『魔王』の素質が少し覚醒すると『未来視』でわかったからこそ、俺たちが行く様に仕向けたのか。
いや、もしかしたら、メイの新しいスキルやスイムやノワールたちの成長も視たうえでかもしれない。
と言うことは勘当にも意味があると言うことか?
「えぇ、ありますよ。私達魔族にとって、名とはとても大事なモノなのです。人間やエルフたちなど、他の種族が名前をつけるのとは訳が違います。名前を貰った魔物は特別、と言うのは理解できますか?」
「ふむ……ゲームで出てくるネームドモンスターみたいなもんか」
「ハイ、その通りです。名前を持った魔物は『名持ちの魔物』と呼ばれる強力な魔物となります。テイマーたちの魔物が野生よりも強いのもそこが由来しているんです……とは言っても、ユージさんはまだ他のテイマーとは会ったことないから、わかりませんよね」
「まぁ、そうですね」
早く会ってみたいもんだけどな。
だけど、確かに名持ちの魔物が特別なのは納得いくかもしれない。
ゲームで例えるのはアレだが、ああいうのが出た時にやばい感は本当にあったからなぁ。
と言うことは名前を持たなくても、色んなスキルを持った魔人であったメイって本当に特別だった……?
まぁ、考えてもわからないんだ。
旅をしていれば、いずれはメイのこともわかるだろう。
後、ルフェさんから『ルシファー』の名を取り上げた理由はなんだか察しがついてきたぞ。
「もしかして『ルシファー』と言う名を与えてもらったことによって、魔王の妹としての力はより強力となったと考えるべきですか?」
「……そうですね。強力になったと言うのは間違いですね。いくら血が繋がっていようと、ルシファーの名を襲名したのは兄のリオンでしたから。兄も『ルシファー』の名を襲名することによって、傲慢の魔王へとなりましたから。だって、お兄様も元はただの堕天使だったのですから」
「つまり……血筋そのものは関係なかった?」
「ハイ、逆に私にも妹だからと『ルシファー』の名を与えてくれたことによって、魔王の力の片鱗を持っていたんです。まぁ、結果狙われる羽目になったんですがね」
少し軽く笑ってみせるルフェさん。
つまり『ルシファー』の名を剥奪されたルフェさんは今、ただの『堕天使』となったのだと考えるべきだろう。
もう『悪魔神教』に生贄として利用されることもないと言うことだ。
だけど、それをわかっていて、今まで『ルシファー』の名を剥奪しなかったのは……リオンさんも兄妹としての証と言うものが欲しかったからなのかもしれない。
……リオンさんの別の側面を見れた気がするな。
「理解してくれて何よりです。さて、これからのことなのですが、一つ提案があります。どうでしょうか、ユージさん? 私も貴方のテイムモンスターにしてくれませんか?」
「え?」
いきなりのルフェさんの提案に俺は驚いてしまう。
いや、そこまでしなくても一緒に旅をしようと誘うつもりでいたけど……ムルムルさんからも頼まれたし。
【種族名:『堕天使』、個体名:ルフェが仲間になりたそうな目でこちらを見てきている。どうしますか?】
どこのRPG!? 絶対、俺の脳内覗いて見つけてきただろ、ヘルプさん!
俺はヘルプさんに対してため息をつきながらも、ルフェさんを見る。
「一緒に旅をしようって誘うつもりではいましたが、別に無理してテイムを望まなくても……」
「どうしてですか? 別に私は追放されたからと言って、誰にでもテイムされるわけではないですよ? ユージさんだからこそ、お願いしてるんです」
「いや、だから、無理してテイムされる必要は」
「ユージさん、そんなに私をテイムするのが嫌ですか? 友達の頼みは聞けませんか?」
友達だからこそ、聞けない頼み事なんだけどなぁ……!
だって、それって自分から束縛されに行く様なもんだと思うし。
「私を仲間だと、友達だと思ってるのならお願いします。それにテイムしてもらった方が私もより強く成長できますよね?」
「……あぁ、『魔物へのお菓子』のことか」
小声で呟いてしまったが、確かにルフェさんの考えは確かに当たりだ。
俺の『魔物へのお菓子』は確かにテイムした魔物に与えると成長を促す効果がある。
それを覚えていたからこそ、この頼み事なのか。
ルフェさんがどれほど強いかわからないが、俺の旅は『悪魔神教』と関わっていきそうだと言う予感はしている。
その時にニャルラトホテプなどが出てきた時にルフェさんが勝てると言う保証はない。
なら、テイムして『魔物へのお菓子』を使っていく方がいいのかもしれない。
……効率で考えるのはやめよう。
ここまでルフェさんが頼み込んできてるんだ。
断り続けても、同じこと延々と繰り返すだろうし、それに。
「ユージ、してあげようよ。同じ紋章、ルフェも欲しいんだよ」
「うみゅ! ご主人様、スイムもその方がいいと思う!」
「ガウッ!」
「キキッ!」
「メラ!」
「フゥ!」
「ドン!」
皆まで賛同しているのだから、断るわけにはいかないだろう。
ルフェさんへと向き直ると、俺とルフェさんの足元に魔法陣が展開される。
「ありがとうございます、ユージさん。どうせなら、『ルシファー』に代わる新たな名前をお願いしてもいいですか?」
「……わかりました」
『ルシファー』に代わる新しい名前か……そうだな。
それなら、堕天使となる前の名前でもいいかもしれない。
「それじゃ、『ルシフェル』。貴方の名前は『ルフェ・ルシフェル』だ」
「ハイ、ありがとうございます」
そして、ルフェさんの右翼に紋章が刻まれる。
これでルフェさんのテイムは完了した。
魔法陣も消失し、ルフェさんは笑みを浮かべる。
「これからお願いしますね、ユージさん、メイちゃん、皆さん」
「ハイ、よろしくお願いします」
「よろしく、ルフェ!」
「うみゅ!」
他の皆もそれぞれ声を上げて挨拶する。
「それとユージさん。もう私は姫でもないし、貴方のテイムモンスターです。敬語もさん付けもいりませんから。友達になった時から言おうとも思ってましたが」
「だけど……」
「いいんです。友達なんですから……ね?」
可愛らしく小首を傾げながら言うルフェさん。
そうだよな……ルフェさんがその関係を望んでいるだし、いつまでも敬語は失礼だよな。
「あぁ、わかったよ、ルフェ。これからよろしくな」
「! ハイ、よろしくお願いします!」
花でも咲いたのかという様な満面の笑みを浮かべる。
俺も笑みを浮かべながら馬車に近づき、メイたちの方を見る。
「それじゃ、行くか。俺たちの旅を始めに」
その言葉に皆は頷き、ノワール以外は馬車に乗り込み、ノワールを馬車に繋いで出発するのだった。
次はどこを目指そうかと考えながら。




