88話 恐怖
不思議そうな表情をしている流歌に、リンベルが気付く。
「その顔は何か考えているわね?」
「・・・ああ、なんでそんな最強と言われる人物が敵側にいるって事だ。」
「申し訳ないけどそれについてはまだ分かっていないわ・・・。単純に考えればあの人より強い者が何かをしている、と憶測が立てられるけど・・・私はあの人以上の強さを持った者がいるとは思えないわ。」
それもそうだろう。
最強と言われる程なのだから。
そして、ここでリレイズが口を開いた。
「・・・もしかしたらだが、"黒神"という何かが関係しているのではないか?」
黒神とは、前にリレイズがみせてくれた地図に書いてあった言葉だ。
それが人物なのか、はたまた何かの合図なのかは不明だが。
「黒神・・・聞いたことないわね。アランは何か知ってる?」
「いや、俺もわからない。」
どうやらこの二人も知らない様子だった。
「まぁいいわ、とりあえずあの男と会ったらすぐに逃げなさい。まず勝てないわ。」
「分かった。」
流歌はこの言葉に素直に頷いた。
死ぬ訳には行かないから。
「それと人族の中にもう一人裏切り者がいるわ。」
裏切り者。
これに反応したのはリレイズだ。
「・・・ルニアス・キアル。」
リレイズが口にしたこの人物は、魔族を殺し戦争を引き起こした者の名前だ。
流歌も聞いた事がある。
リレイズも本気で戦って負けるかもしれない。と言っていた程だ。
この男も余程強いのだろう。
「やっぱり知っていたのね。そうよ、あの男が魔族との戦争を引き起こした・・・。とりあえずまだ戦争にはなっていないけども。」
「あの男・・・全てを吐かしてやる。」
リレイズは瞳に殺意を抱いている。
「でも、わかっていると思うけどあの男も強いわ。気に入らないけど力は持っている。」
「ルニアスについて他に何か知っているか?」
「"黒の種族"と一緒にいるところを目撃したわ・・・間違い無く繋がっている。なぜ戦争を引き起こしたというのは分からないけども、何かを企んでいるはずよ。」
「やはり信用出来ない男だったか・・・くそっ!」
リレイズは壁に拳を叩きつける。
「そして問題はここから・・・"黒の種族"についてよ。この牢獄を警備していたのは倒したのよね?」
「ああ。」
アランは返事をする。
「ならばあと二人はいる。一人は武器は見当たらなかったけど、私を捕まえた人物よ。鎖の魔法を使ってくるわ・・・。最後の一人は私が捕まった時に会っただけだからどんな攻撃をしてくるのかわからない。でも、間違い無くこれだけは言えるわ・・・。」
リンベル少し間を置いて、ふぅ・・・と溜息を吐くと迷いなく言った。
「あいつも黒のマントを被ってて、黒い仮面をしていたから顔とか見れなかったんだけども・・・声からして男よ。それと、見ただけでも震えが止まらなかったわ。・・・初めて"死"を覚悟した。」
少し悔しそうに、そして恐怖を抱いた目で言ったのだ。




