87話 最強の男
「で、伝えたいことってなんだ?」
「これから現れるであろう人物達の名前よ。何人かはどんな能力か予想はついてるわ。」
「つまり、敵って事か?」
「そうよ。」
リンベルが三人に伝えたい事は、敵の情報である。
捕まる前までは単独で敵の偵察などを行っていたのだ。
「正直、言うのは躊躇ってるけど・・・聞いておいた方がいいわよね。これから戦うであろう人物の能力を少しでも知ってるだけでもこちらが有利になるわ。」
「それはたしかにあるが・・・なぜ躊躇う?」
「・・・あなた達も話には聞いた事あるとは思うけど、あの人がいる。」
「まさか・・・。」
アランとリレイズは、何が言いたいのか察しがついたようだった。
「人族の希望とまで言われた男・・・シグナリア・ヴィレルズよ。」
この言葉に、二人は口を開けて沈黙する。
それを破ったのは一人の男・・・流歌だ。
「おい、そのシグナリアって男は一体誰なんだ?」
そして流歌のこの問いにリンベルは驚愕する。
「まさかあんた知らないっていうの!?あのシグナリアよ!?」
「わからないから聞いているんだろう。」
「はぁー・・・全く困った人だわ・・・。いい?シグナリア・ヴィレルズってのは人族の中で最強と言われた男よ。武器は光り輝く聖剣、そして魔法に特化した神使・・・いや、他の種族でも使えないはずの光魔法を使うのよ。」
「光魔法?」
"光魔法"という単語に流歌は引っかかった。
もちろん魔法の中でも火や水などといった属性があることは既に知っている。
しかし光属性というのは滅多に聞かないのだ。
魔族の中には"闇属性"の魔法を使う者がいる、というのは聞いたことあるが・・・。
実際にその使い手を見てみないと分からない。
「何も知らないのねあなたって・・・。光属性の魔法とは基本的に"精霊"しか使えないと言われているわ。まぁ、その"精霊"自体も私は会った事ないし、そんな話を噂程度でしか聞かないからよく分かってないのだけれども・・・それを人が使えるって時点でおかしいのよ。」
"精霊"・・・流歌も話だけだったら聞いたことがある。
隠された場所で、存在しているという。
だが実際に会ったという話は聞かない。
その為、それは幻だ、夢だ。と言う人も多いのだとか。
もちろん流歌も会った事はない。
「なるほどな・・・それで、どんな攻撃をしてくるんだ?」
「言葉にすると難しいけど、とても強力よ。例えば怪我をしても一瞬で治ってしまうとか、膨大な魔力でありとあらゆる敵を消滅させるとか・・・。もはやシグナリアというのは人族の中では伝説的存在よ。戦うところを私達も数回しか見たことないけど・・・あれは間違い無く最強よ。」
"最強"・・その言葉を聞いて流歌の頭の中にある一つの疑問が浮かぶ。
なぜそこまで言われる男が、敵になってしまったのか?という事だ。




