第3話3
葉月「ごめん、ちょっと待っててすぐに拭くもの持て来るから。」
葉月の住んでいるマンションへ移動してきた二人。
下を向き、雨に濡れているのか涙なのかわからない状態の真綾。
玄関先で葉月が持ってきたタオルで真綾の頭を拭く。
葉月「ごめん、シャワー先に浴びて着替え持ってくるから」
真綾「ありがとう・・・」
今にも消えそうな弱弱しい声で返事をする。
葉月「ここに僕のジャージ悪いけど置いておくね」
シャワーを浴びた真綾が出てきて、入れ替わりでシャワーを浴びる葉月。
リビングの椅子で下を向き暗い顔をしている真綾。
シャワーから上がり、キッチンで飲み物を用意する葉月。
スッと湯気の立つマグカップが目の前に置かれる。
葉月「ホットミルク、熱いから気を付けて」
真綾「ありがとう」
外からの雨の音しかしない室内、葉月は真綾に理由を聞くわけでもなく静かに隣に座っているだけ。
やがて雨音が聞こえなくなって室内に静寂が戻ると真綾の頬が静かに濡れる。
葉月がそっと真綾の手の上に手を置く。
葉月「もし、何か吐き出してしまいたいなら吐き出してしまったほうがいいよ、泣きたいならうんと泣いてしまえばいいよ」
やさしく真綾に言葉を掛けると、真綾の頭を自分の胸に包み込む。
その瞬間真綾の中からそれまで止まっていたものが一気に溢れ出し止まらなくなる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
どれほど立ったのだろうか落ち着きを見せた真綾が葉月からそっと離れる。
脱衣所から洗濯終了の音がなると真綾がそっと葉月の胸から顔を離す。
真綾「ありがとう」
葉月「どうしたしまして、僕は隣にいてあげられる事しかできないから」
真綾「そんなことない、助かったよ」
葉月「助けになったならよかったよ」
すっかり冷めてしまったホットミルクに手を伸ばす真綾。
葉月「温めなおそうか?」
真綾「ううん、大丈夫」
まだ赤い目をした真綾が落ち着いた顔をして話し出す。
真綾「私の話を聞いてくれる?」
葉月「もちろん」
真綾「重い話になるけど聞いてくれると助かる」
葉月「聞いてあげる事ぐらいしか出来ないし、聞いた話は誰にも言わないよ」
真綾「ありがとう、じゃあ聞いてもらおうかな・・・」
葉月は真綾の手の上に手を置く。
真綾「私の家はさ、両親ともそれぞれ不倫してるんだよ。昔から、そうだね物心つく前なのかな、気が付いたら夜に誰もいないんだ。」
さびしそうな表情をし葉月を見つめる真綾。
真綾「まあ、最低限の食事位はあったけど家族らしい時間はしたことなかったんだよね、両親に振り向いてほしくてかまってほしくて家の家事とか勉強とか頑張ったんだけどねダメだった。」
頬を再びつたわる涙。
真綾「中学になったころにはさすがに気が付いたよ、もう私には興味無くそれぞれが自分の思うままに生きてることにね」
そっと涙を拭く葉月。
真綾「中学で何となく陸上部入ったら思いのほか夢中になれて、学校ではそれなりにやって行けてたんだけど」
葉月の手を握り返す真綾。
真綾「2年生の時に先輩に告白されたんだ、でも両親の事もあって断ったんだけど、それでもあきらめずにアタックされて告白を受けたの」
一拍置いて深呼吸する。
真綾「最初はものすごく優しくて頼りになってすごく充実したんだけど・・・」
手が震え、涙が止まらなくなる真綾。
葉月「無理に話す事ないよ」
顔を左右に振り話し出す。
真綾「夏休みの終わりに先輩から誘われて家についてしまったんだよね」
そっと話を聞いている葉月。
真綾「そのまま先輩と関係を持ったんだけど・・・、その後ねすぐ捨てられたんだ・・・、ただやりたかっただけだって。」
下を向き涙が止まらない真綾。
真綾「部活終わりの男子部室から私との関係を笑いながら自慢してる声が聞こえて・・・」
だんだん嗚咽交じりになりながら話をやめない真綾。
葉月「今でもその先輩とは関係を続けたいと思うの?」
真綾「その後ねすぐに本命の人と一緒に歩いてる姿見かけたの、その時はっきり遊ばれたって本当にただ一時の為だけに・・・」
葉月が真綾を抱きしめる。
固まる真綾。
葉月「もう良いよ!、それ以上はまーちゃんが辛いだけだから言わなくていよ、言わなくて良いから・・・」
再び外から雨の音が聞こえてくる。
真綾を抱きしめたまま動かない葉月。
葉月の背中に手を回す真綾。
葉月「落ち着いた?」
抱き合ったままの二人。
何も言わずうなずく真綾。
真綾「今日、テスト終わってスマホに誰に聞いたか、私を捨てた先輩から連絡来て、メッセに既読つけちゃったんだよね」
葉月「復縁要請?」
顔を左右に振る真綾。
真綾「あまりにもメッセ飛んでくるからブロックしたんだけど、誰かが最寄り駅知ってたみたいで駅手前で見つかって逃げてたんだけどつかまって、ホテルに連れ込まれそうになったんだけどなんとか逃げて駅前で落ち着く為にあそこに居たの」
葉月「そっか、話してくれてありがとうね」
真綾「ううん、聞いてくれてありがとう、楽になったよ」
葉月「来てた服、乾燥終わったみたいだし着替えたら今日は帰る?」
真綾「帰ってもつらいかも」
葉月「じゃあ家に連絡してここに泊まってく?」
真綾「親に連絡は意味ないかな、二人とも出ないし連絡すると怒られるんだ」
葉月「そっか、じゃあ好きなだけいればいいよ」
真綾「ありがとう、優しいね葉月は」
落ち着いた真綾は葉月から離れる。
葉月「今日は申し訳ないけど私の部屋のベッド使って」
真綾「悪いよ、私ソファーでもいいよ」
葉月「大丈夫、何時もの事だしベッド使って」
真綾「じゃあお言葉に甘えて使わせてもらうね」
そう言って葉月に案内された部屋に入る。
入った瞬間ふと違和感を感じる。
まるで客間の様にほぼ何もない部屋、あるのは勉強机とベッドのみ。
ベッドは使ってる雰囲気があまりない。
テストの疲れと、精神的な疲れがあり観察も早々にベッドに潜り込んだ。




