第14話3
新キャラ登場です
それは夏休みが終わり2学期が始まった初日だった。
1学期の終わりと変わらず早めに教室に入る。
お気に入りのライトノベルを読み始めた時だった・・・、
教室に手を繋いで恥ずかしそうに入ってくる二人。
一人は『銀狼』と揶揄される様な雰囲気を持っていた一ノ瀬、もう一人は密かに恋心を抱いていた女の子森村さんだった。
長く団子頭のヘアースタイルがとても似合っていて、背はあまり高く無く、丸い眼鏡で小動物を思わせる様なおおらかな印象だった。
彼女に思いを寄せる様になったのはゴールデンウィークが終わり体育大会の前辺り、授業が終わり帰り支度をしている時に落としたノートを通りかかった森村さんが拾ってくれた時だった・・・。
花「落としましたよ」
男子生徒「あ、ありがとう」
花「どういたしまして」
彼女が微笑んだ。
その一瞬の微笑みが僕の脳裏に焼き付いてしまう。
「はなちゃん、早く〜」廊下から顔を出して友達に呼ばれて行ってしまった彼女。
今だにあの微笑みが忘れられなかった・・・。
その微笑みをくれた彼女はベリーショートにヘアースタイルを変え頬を赤らめて右耳にイヤーカフをして、髪を耳にかけた時に見えた左手薬指のリング。
僕はそれを見て心に深く沈んだ気持ちがズンっと押し寄せる。
意味を知っている、彼女はあの微笑みよりも一人に飛び切りの笑顔を見せて他愛も無い話を友達としている。
その笑顔を見た時に僕の恋は終わりを告げた。
帰宅しようと教室を出て生活指導室の前に彼女を射止めた銀狼が廊下で待っていた。
花「ありがとうございました」
教師に頭を下げて待っていた銀狼に気がつき笑顔を見せる森村さん。
手を繋ぎ下駄箱に向かう背後姿を見て後悔が湧いて出てくる。
でも僕には勇気が無かった。
思いを伝える一歩が踏み出せなかった。
前を歩く二人の笑顔の間に入る勇気は無い。
それが僕と銀狼との違いなのかもしれない。
生活指導の先生が僕に気がつく。
教師「森村は罪作りだな」
少し疲れた顔の教師。
僕に顔を見て「君もか」という顔をしている。
教師「彼女、ゴールデンウィークの前に倒れたのを彼氏に助けられたんだと、そこから彼女は少しづつ距離を縮めて夏休み中に告白して付き合いが始まったばかりだと、今日だけで君みたいな顔をした男子生徒を10人は見たぞ?」
僕は「そうなんですね」としか言葉を出すことが出来なかった。
教師曰く健全なお付き合いで程よく進んでいる、引っ掻き回すならそれなりの覚悟をしないと駄目と忠告され.僕にはそこまでの勇気も恋動力も無かった。
二人の関係が落ち着いて来た頃の事、突然お昼に事件が起きた。
忽那「君が最近噂の彼女かい?」
2年の先輩が森村さんに突然交際を迫って来た。
見るからに仲良く食事をしている所に割った入ってしかも意味不明な発言をしていたと思ったら・・・。
彼女は隣に彼とキスをし始めて啖呵を切った。
その内容が更に衝撃だった。
既に婚約中と本人が発言した事で教室中がワイワイのと女子が騒ぎ出した。
僕はこれ幸いと邪魔な先輩を引きづり廊下へ追いやってしまう、我ながら良い仕事をした。
二人はまたもや放課後に生活指導室に呼ばれていたが、まあ今回は仕方が無かったのだろう森村さんが銀狼にひたすら謝っているのを見かけたが銀狼は怒る事もなく許しているのを見た。
こうして僕の森村さんに対する気持ちは何時も間にか『応援』したいに変わって行った。
あの出来事から少し時間経ったある日この事。
立夏「良い加減にして下さい!」
下駄箱の方から声が聞こえてくる。
僕は何事かと下駄箱に向かうとあの先輩が峯崎さんに絡んでいる。
忽那「彼氏いないんだろ?、僕がなってあげるから僕と付き合いなよ?」
立夏「いや、彼氏いらないって言ってるじゃ無いですか!、私彼氏よりしたい事があるんです、貴方邪魔なんですよ!」
相変わらず嫌がられてるのがわからないのかウザ絡みしている様子なのを見て僕は少し勇気を出す。
「先輩、嫌がってる人に絡んで何が良いんですか?」と少し大きな声で話しかけると二人が僕に気がついた。
忽那「どこの誰だい?君は」
明らかに邪魔されて苛立ったのだろう、声が少し大きくなる。
僕は負けじと怖いのを我慢して反論する。
「いや、明らかに急いでいそうですし、嫌がってるのを無理矢理話しかけてるじゃ無いですか?」
僕は話してる間に峯崎さんにこっそり『行って』とハンドサインを出すと、それを受け取った峯崎さんは気配を消してその場を立ち去った。
先輩は僕に対して邪魔されたのが気に入らなかった様で段々とヒートアップして怒声を浴びせて来るが、右から左へと受け流してみるか
下駄箱でやり取りをしていたので先輩の怒声を聞いた教師が飛んできてお互いを別の場所でそれぞれ事情聴取された。
結局、僕は他の見ていた生徒の証言もあり直ぐに返されたが、家に帰り部屋に入った途端に震えがくる。
16年の人生で初めての事だった。
明日先輩に絡まれたらどうしようと・・・。
峯崎さんから気持ち悪と思われたんじゃ無いかとか色々マイナス思考が頭を巡って寝付けなかった。
翌朝、眠気には勝てずに朝方寝たせいで寝不足気味で学校へ行く、何時もの場所で電車を待ち通勤通学に人達に揉まれて最寄駅で降りる。
学校に着き眠い顔で教室に入り自分の場所に何時も通りの時間が始まる・・・と思っていたが思いもよらない人から声を掛けられる。
立夏「おはよー藤宮君」
昨日絡まれてた峯崎さんだった。
藤宮「お、おはよう、ございます・・・」
立夏「昨日ありがとうね、おかげでバイトの時間に間に合ったよ」
彼女は笑顔で僕に挨拶とお礼をしてくれた。
藤宮「い、いや・・・、あの先輩、前に森村さんに、絡んでいたから・・・、それに、かなり声、大きくて、聞こえてたから・・・」
立夏「そっか、あの先輩無駄に声デッカいし、うざいしね」
藤宮「あの後、生徒指導に、連れて、行かれてたよ・・・」
立夏「えっ、そうなの?、藤宮君は?」
藤宮「僕、は、簡単な、話だけで・・・」
立夏「ごめんね〜、助けてもらったのに何もお礼出来なくて」
藤宮「いや・・・、べ、別に、お礼は、特に・・・」
立夏「今度、何かの時にお礼するね」
藤宮「いや、別に、お礼は、良いから・・・」
立夏「そう言わない、ね、お礼するから、じゃ」
彼女はそう言い残すと何時ものメンバーの所へ行ってしまう。
「峯崎さ・・・ん・・・」と言うのが遅く僕の声は彼女まで届かなかった。
その後は特に何時も通りの学校生活に戻っていく。
お昼休みに女子達の噂話が耳に入る。
「あの先輩、どうも次騒ぎ起こしたら停学になるみたい」
と当然と言えば当然なのだがどうやらこのクラスの五人の仲良し組に加えて男子でちょっと評判の良い子には声を掛けているらしい。
当然知らない女子は居ない人物だけに警戒され、彼氏は居ようがお構いなしにアタックをかけるものだから教師の間でも有名らしく、色恋で暴力事件にならる前に手を打った形ではあるんだと思う。
こうして僕の恋が終わりと同時に秋がやって来るのだった。
次回は夫婦漫才です。




