第10話2
やっと・・・、やっと・・・
花「作業台がありますが何を作るんですか?」
一太「ああ、自分用のシルバーアクセサリーを作るのに使ってるんだよ」
一太は自分の両耳についているイヤーカフを指さす。
初めて一太を知った入学式の時から必ずつけている一太のイヤーカフ、銀狼のあだ名がつく一部になっていた物だった。
花「自分で作ってたんですね」
一太「なんとなく欲しくなって初めて作ったもので何度も手直して出来たんだよ」
花「何時もつけてるので大切な物だと思っていましたが自分で初めて作った物だったんですね」
一太「葉月に何度も作るようにせがまれたけどね」
花「初めて作った物なら思い入れがありますね」
二人で向かい合って一太が作り過ぎた料理を食べていたら、外から独特の重低音が聞こえてくる。
一太「はじまったね」
花がテラスの方を向くとビルやマンションの間から打ち上げられる花火が綺麗に見える。
花「花火、綺麗に見えますね」
一太「父さんがここにカフェを建てた理由の一つだからね」
次々と打ち上がる花火、少し小さく見えるが恋人とみる花火。
周りに人がいない二人きりで観る特等席。
ハナがテラスに移動して手すり手前で立ち止まる。
後ろから一太が花を抱きしめる。
花「一太君・・・、抱きしめらるって幸せですね」
一太がハナの右耳に何かを付ける。
気になり触ると金属の感触が伝わる。
花「これ、大切な物じゃ・・・」
つけられたのは一太が着けていた右耳のイヤーカフ。
一太「着けてて、俺の決意だから」
花「いいんですか?」
一太「うん」
自分の思いれがあり今まで着けていた物を貰い、頬に涙がこぼれ落ち始める。
花「あれ、なんで・・・」
慌て始める一太。
一太「ごめん、何か痛かった?嫌だった?」
母「違います、違います、自分が一太君の大切な物を貰えるぐらい大切だと思ってくれたことが嬉しくて・・・」
一太の胸に顔を押し付けるハナ。
花「一太君・・・」
一太を見つめる花。
見つめ返す一太。
チュッ
花が少し背伸びをして一太にキスをする。
固まる一太。
花「本当は今日、私が一太君に思いを伝えるつもりでした」
一太「うん・・・」
花「一太君が全部壊してしまったのでお返しです」
もう一度背伸びしてキスをする花。
一太「じゃあもう一回壊すね」
そういうと花の左の薬指に指輪をはめる。
花「え・・・?」
一太「男除け、シルバーだから気兼ねなくしてて、いづれ本物を渡すまでの繋ぎだよ」
左手の薬指の意味はさすがに知っている。
花「本当に私のやりたい事全部壊されました・・・」
一太「ごめんね、でも男性のお客さんの対応している時ちょっともやっとしてたから安心させて・・・」
花「はい、気持ち受け取りました、私を絶対裏切らないでくださいね、私も裏切りませんから」
一太「うん、裏切らない、もし裏切ったと思ったらその指輪外していいから」
花「わかりました・・・」
少し遠くで打ちあがる花火を背景に長めの口づけを交わす二人、互いの気持ちを初めて確認した特別な日だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ポコンッ
葉月たちと特別協賛席で花火を堪能していた真綾の元に通知が来る。
少し小さくビルやマンションの間から花火を背景に顔をくっつけて自撮りした二人の写真とコメントが送られてきた。
はな『まーちゃんありがとう、思いが通じました』
メッセージを確認した真綾が思わず立ち上がり。
真綾「よっしゃーーー!」
叫び周りが驚く、直ぐに我に返り周りに謝る。
葉月「真綾、どうしたの?」
突然叫んだ真綾を心配して葉月達が覗き込む。
真綾「これ!」
送られた写真を見せる真綾、それを確認する三人。
立夏「あ、はなちゃんとうとう一歩踏み出したんだね」
紗香「おめでとうだね」
葉月「一太も外堀がほとんど埋まってたしね」
真綾が写真をもう一度見ると
真綾「いや、はなちゃん髪型が・・・」
立夏「あ、いやベリーショートになってる」
萌「あ、ホントだ眼鏡もしてない」
さわがしいので紗香がやってくる。
紗香「何を騒いでるの?」
真綾が写真を見せる。
紗香「はなちゃんの思い通じたのね」
葉月「母さん知ってたの?」
紗香「ええ、今日私がカットしたんだもん、そりゃやれることは全部やってやったわ」
胸を張る紗香。
真綾「でも、いきなりベリーショートはまた冒険したね」
紗香「もともと、ヘアドネーションをしたかったみたいなの、で今までおとなしめで引っ込み思案な所が自分でも気になっていたみたい」
葉月「そうなんだ」
紗香「あとね時折一太が真綾を目で追ってる事があるんだって、それでちょっとジェラシー感じてたみたいなの」
真綾「え、マジですか?」
紗香「多分ね、葉月が笑える様になったでしょ?、その横には真綾ちゃんが居るからそれで目で追ってたんだと思うのよ、でもまあ好きな人が従兄弟の彼女を目で追ってたら気にしない方がおかしいわ」
真綾「そっかぁ・・・」
紗香「まあ、撮影は何とかするし、むしろショートの方が彼女似合うしね」
立夏「てか、この写真情報量多すぎない?」
沙也「はなちゃんのショートに目が行きがちだけど、左手に指輪してるよ?」
萌「ペアのイヤーカフもしてるよ」
真綾「いや、告白すっとばしてプロポーズしたんかな」
葉月「イヤーカフは一太のオリジナルだよ、自分で作ってる」
真綾「指輪は?」
葉月「多分シルバーで自作じゃない?」
立夏「なんというか徹底してるね」
葉月が気が付く。
葉月「もしかして一太今日伝えるつもりだったのかも」
沙也「あー、その可能性はあるのか」
立夏「まあ、二人にとって結果オーライだからいいんじゃない?」
真綾「指輪かぁ・・・」
真綾が葉月に目線を送る。
葉月「真綾、いいけど多分普段使い出来ない物が送られると思うけど良いの?」
真綾「マダエンリョシテオキマス・・・」
葉月「ピアスで我慢してて、近いうちに送るから待ってて」
二人の世界が展開される。
立夏「はいはい、ご馳走様です」
沙也「てか、すごい気になったんだけどそのピアスってイミテーションだよね?」
葉月「鑑定書ついてるよ」
沙也「マジか」
真綾「私、片方だけど外すの怖いもの」
葉月「時折確認してるね」
真綾「そりゃ、確認するよ」
紗香「折角の協賛席なんだから花火を楽しみなさいな、その話は何時でもできるでしょ」
それぞれ違う場所ではあったが同じ花火を見ている7人。
毎年花火大会を見ると思い出す年になった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
花火大会が終わりハナと一太が花を送る為に自宅へ向かう。
手を繋ぐ二人、ふと立ち止まる花。
「どうしたの?、足痛い?」
一太が花をのぞき込んだ時ハナが一太の耳元で囁く。
「一太君、私一太君が求めたら全部受け止めますからね、お薬も飲んでますからいつでも大丈夫ですよ」
一太の頬キスをする、一瞬で湯気が出る一太。
うれしさが滲みでてる花が一太を引っ張り自宅へ向かった。
花の自宅マンションに着く。
花がカフェの手伝いを始めてから自宅への付き添いはしていたがマンションの前までだった。
しかし、今日は違う交際するという事はやらないといけない儀式がある。
そう親への挨拶である。
花が自宅へ入る、その音に気が付き奥から声を掛けられる。
冴子「おかえり」
花「ただいまお母さん」
と奥から玄関に迎えに行くとベリーショートになった花といつもはここまで来ない一太が居る。
一太「夜分遅くすみません、お久しぶりです冴子さん」
冴子「お久しぶりね一太君」
覚悟を決めた顔を見た冴子。
冴子「話を聞くわ」
リビングへ一太を招き入れる。
もう一回続きます。




