犠牲者④
「冥土の土産だ
教えてやるよ〜
俺のナイフは「生きているんだ」
生物のように」
「何を言っている?」
「俺は一つのものにだけだが透過させるスキルを持っている
それを生きたナイフに付与した」
『どうやら奴は2種類のスキル持ちのようだ
(1)自身の武具を生き物へと変化させる(思うように操る)
(2)対象の物を透過(1つまで)』
腹部へのナイフ刺突
致命的な決定打を受けたことにより
襲撃犯の勝利が確定する
『た、誰かぁ。助けてくれ』
今にも消え失せそうな声で助けを呼ぶ成宮教官
ここで俺は致命的なミスを犯す
「ねぇねぇ、羅星くん。
そこで何してるの?」
背後から唐突に声をかけられる
目の前の出来事に意識をとられ背後から近づいてくるクラスメイトに気づくことが出来なかった
「おーーー?誰かいるようだな?
出てこいよ〜」
そう、こちらに呼びかけてくる声をよそに俺は後ろを振り返る
声を掛けてきたのはクラスメイトの眞田
だったようだ
彼はランキング39位で俺と立場が変わらないため、行動を共にすることは比較的多かった
同種であるためか向こうも俺と付きやいやすいのだろう
行動を共にする際はいつも眞田から声を掛けてきていた
『そこに誰かいるのか?!』
成宮が大きく声をあげ、こちらに呼びかけてくる
『助けを、、、教官たちを呼んできてくれ!」
助かる可能性を見出した成宮は先程よりも大きな声量でこちらに呼びかける
「残念だが、お前たちはここで終わりだ
ここで助けを呼ばれては流石の俺も対処しきない可能性があるからな
それにここへ**が向かっているらしいし」
最後の方は小言のように呟いたため正確に聞き取ることが出来なかったが誰かがここへ向かってきているようだ
おそらく椎名達のことを言っているのだろう
「悪いが時間がねぇーんだ。待ってる余裕はない
こちらから行くぞ!」
そういうと奴は全速力でこちらに向かって走ってくる
*襲撃犯視点*
俺は気配を辿り木の向こうにいると思われる2人組を始末しに全力で走る
「これで終わりだ!!」
「あれ?」
木の後ろに男子生徒が倒れていた
首にあざのようなものが確認できた
もう一方の男子生徒に首を強打でもされたのだろうか?
意識を失っている
『いやそんなことはどうでもいい。重要なのはもう1人がどこへ行ったか?だ』
少し離れたところに気配を感じたため
初級の火炎を放ち様子を見る
火炎により燃やされ灰となった木の背後から
もう1人の男子生徒が姿を現す
「やるじゃねぇーか。」
「僕は簡単にはやられませんよ」
「お前じゃダ、、、メだ!助けを、、。呼べ
お前は40位の羅星だろ?お前の実力では到底敵わない」
「だとよ?笑」
襲撃犯は成績最下位の生徒だと知るなりガッカリした表情を見せる
「見逃してくれませんか?」
男子生徒はヒソヒソと喋り始める
「ここで見たことは口外しません。絶対に。
だから僕達生徒だけでも逃がしてくれませんか?」
目の前の生徒はどうやら少しズレているようだ
普通の生徒ならば目の前に倒れている教官も救い出そうと交渉するはず、しかし目の前の生徒から伝わってくる気配はとてもそのような考えを抱いているようには到底思えない
「僕はランキング40位の羅星と言います。
こんな僕を痛めつけても良いことなんてありませんよ?」
「確かにそうだな。
俺は強者を叩きのめして壊すのが趣味なんだ。お前みたいな奴は眼中にない」
「ただ、坊主、羅星って言ったな?
成績40位って本当かお前
俺の勘がお前は何かが違うと言ってるんだが」
教官の口ぶりからも成績最下位の生徒であることに嘘偽りはないだろう
助けが来たとわかった時の教官の眼差しは期待に満ち溢れていたが、姿を現した生徒を見るなり目が黒く染まり始め、絶望の色へと染め上がっている
だが、目の前のこいつは何かがおかしい
本能が訴えてかけている
今すぐに逃げろと
だが、俺にだってプライドがある
これから組織でのし上がっていく上で避けては通れない道
目の前の敵がどれだけ強大であろうと立ち向かわなければならない
今ここで挫折すれば俺は一生腰抜けに成り下がってしまう
俺は目の前の生徒に挑むことに決めた
初級魔法で様子を見るつもりだったが
『全力で狩る』
「いくぜ坊主!」
俺は木々を脚力で高速移動し目にも止まらぬ速さで奴を翻弄する
仮にこいつが単なる雑魚で俺の勘違いだったとしても顔を見られた以上、生きては返せねぇ
一撃で仕留める
俺様のスピードについてこれないと見越したのか目で追うのをやめた少年
狙うなら今だ
そう思っていた
が俺の足が止まる
少年が少し腕を高く上げた
手にはバイオリンが握られていた
一体どこから?
『前奏曲:エウロパ』
前奏→間奏→終奏と約200秒間に渡る演奏
効果範囲は羅星本人によって操作可能で0m〜80mほど
奏でられた演奏による効果は本人にも効力が及んでしまうが、長期的な試行・訓練の末、身体に耐性がつき、終奏以外の効力は本人に及ばない
今までの大体の敵は終奏を発動させる前に対処してきたため、終奏まで発動させることがなく、本人は前奏から間奏までの耐性しか持ち合わせていない
範囲攻撃であるため周囲に人がいる際の使用は避けるべきだと考えている




