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78.

「ねえ、クリストファー。僕とクライブって似ていると思う?」


 ここは王族たちが食卓を囲む食堂。突然のクライブの乱入で、遅れていた朝食兼昼食を皆で摂っていた。


「うぐっ!ごほっ、げほっ!!」


 意表をついたルルドールの問いにクリストファーは口に入れたばかりのパンを噛まずに飲み込んでしまった。


「おおっ!大丈夫ですか、クリストファー殿!!」


 いつの間にか仲良しになり、隣に座って食事をしていたガロンが慌てて背中を叩く。


「ぐほっ、うっく…はー、死ぬとこだった!!あ、ありがとうございます、ロックフォード様!」


「もー、クリストファーたら、大袈裟なんだからー!っで、どう思う?」  


「えっ?」


「だからー、クライブと僕って似ていると思う?思わない?」


「えーっと、それはだな……」


「私も是非に伺いたい。ディオス殿、どうなのですか?さあ、答えてください。」


 二人のサディストに責められて、クリストファーは少し涙目になりながら、この意地悪王子たちに小さな声で告げたのだった。


「……に、似ていると思います……」


「「えっ?どこがっ!?」」


 二人は同時に声を上げてクリストファーを睨んだ。『言われたから答えただけなのにー!』ますます涙目のクリストファーは、助けを求めて隣に座る宰相に顔を向けた。しかし彼は二人の剣幕に恐れをなしたのか、彼と目を合わせようともしなかった。


「う、裏切り者……」


 小さな声でクリストファーは宰相への呪いの言葉を口にしたが、隣の男は聞こえないふりを決めこんだ。  


「クリストファー、早く答えてよ!!」


「ディオス殿、早く答えなさい!!」


「……そ、そういう所がそっくりなんだよー!!」


 自棄になったクリストファーの叫び声が食堂中響き渡った。


「あー!!こうなったら言ってやる!!おい、ルルドール!」


「え?あ、はい」


「まずおまえはいつも俺をホモだのロリだのショタだの、しまいには裸を見せたり、キ、キスしたり…とにかく俺を毎回振り回して責めて、いたぶって喜んでいたよなっ!」


「えっ?キス!?」


「あっ、アビー!ち、違うんだ!!君達の事を誤解して、落ち込んでた僕を慰めてくれたから、お礼に頬にチュッてしただけ!ほんの感謝の気持ち。ホントにそれだけだって!!」


「じゃあ、裸は?」


「えっ?えっとー、な、なんだったっけかなー、あはははー」


 追及する女王にルルドールは笑ってごまかそうとする。


「とにかくおまえは、巷では『妖精王子』なんて呼ばれているが、俺から言わせればただの変態サディスト野郎だ!!」


「へ、変態サディスト……」


 いつもクリストファーに言っているような言葉だったが、いざ自分が言われてみるとかなりの衝撃を受ける。しかも賛辞の言葉以外、聞き慣れていない『妖精王子』だからこそ、その衝撃は倍増された。


「……ねえ、アビー。ぼ、僕って変態サディスト野郎かな?」


「えっ?………………」


「ちょっと間が長いんだけど、ひょっとしてアビーもそう思っているのかな?」


「…………」


「やっぱ思ってるじゃん!!」


「あ、いや、ちょっとだけだよ。へ、変態と野郎はともかく、ほんのちょっぴりサディストかな?でも、本当にちょっとだけ」


 再会したその夜に言葉巧みにアビゲイルをベッドに誘い込み、ヘトヘトになるまで貪ったのは、他でもないルルドールだ。しかも翌朝も……。その日は夜になるまでベッドから起き上がる事が出来なかったほどだった。早々と白旗を上げたアビゲイルをルルドールは容赦なく『攻撃』した。これをSと言わずしてなんと言う。


「ふっ、妖精王子が聞いて呆れるな。この変態サディスト野郎め!」


 そんなルルドールの姿をもう一人のサディスト、クライブがいい気味だとばかりに嘲笑う。が、しかし……


「そして、クライブ殿下!!貴方、わざとルルに違う花を見せつけて、白薔薇と勘違いさせましたよね!?……女王陛下っ!」


「え?あ、はい!」


「もしかして幼少の頃、クライブ殿下にねちっこく責められたことはありませんでしたか?」


「ええっ?何故分かるんだ!?」


「やはりおありになる?」


「あるどころか、母上が亡くなる少し前まで、会うたびに泣かされていたよ!」


「ふむ、なるほど!!クライブ殿下、貴方もやはり、おかしな性癖をお持ちの変態ロリコンサディスト野郎だったのですね!」


「変態ロリコンサディスト……」


 クライブとて、その容姿から祖国では女性たちの憧れの的だったので、この物凄い例えが自分を指したものだとはにわかに信じ難かった。  

「ア、アビゲイル……私は変態ロリコンサディスト野郎なのかい?」


「………………」


「な、なんで黙るんだ!?」


「クライブ、貴方、自覚はないの?」


「確かに、君を責め抜いて泣かせたさ。でもその後は必ず、うんと甘やかしてやったじゃないか!」


「うへっ!クライブ。こ、こわーい!キもーい!!しかもロリコン!!僕よりヤバい!」


 クライブの醜態に息を吹き返したルルドールが反撃に出た。だがここでもクリストファーの一撃を喰らう事となった。


「何を言っているんだ、ルル。おまえもその仲間の変態じゃないかっ!!容姿こそ異なるが、二人の性格はそっくりなんだよ!っこの変態どもがっ!!」


 吐き捨てるようなクリストファーの言葉に二人の顔色がショックで蒼白に変わる。


「そんな、ねちっこい性格してると、今にお優しい女王陛下にだって捨てられますよ、お二人とも!!」


「「うっっ!!」」


 形勢逆転。先ほどまでは断末魔さえ聞こえてきそうだった、クリストファーの口からはこれでもかというくらい、強烈な言葉が浴びせかけられる。二人の王子はノックダウン寸前だった。すると、


「ぷっ!ふふふ……あははは…はぁ。ああ、なんて楽しい食卓なんだ!!まさかまたこの場所で、笑いながら食事が出来るとは思わなかったよ。ここで食事をするのは10年ぶりなんだ。昔はよく父や母、兄と今のような、他愛の無い話をしながら食事をしたものだった。それも今では身内は誰ひとりとして、いなくなってしまったがな……。だが、皆のお陰で久しぶりに楽しい気持ちにさせられたよ。ありがとう。」


「……アビー、僕がいるじゃないか。僕が君の新しい家族になるよ。それに、クライブだって、ロックフォード殿だっている。君はひとりじゃないよ。」


「そうだな、ルル。私には素晴らしい夫や兄、それに父のようにいつも見守ってくれる人もいるんだもの。寂しくなんてない。」


「父……」


 ガロンがその言葉を噛みしめるように呟いた。そしてゆっくりと椅子から立ち上がった。


「女王陛下、皆様。私にはこの6年間、隠してきたことがございます。本当は明日、陛下に告白する予定でしたが、今、この場で皆様に聞いて頂きたいのです。実は………」


 ガロンは一度大きく深呼吸をしてから言葉をつなげた。


「実は、亡くなった一人息子、シーザーには忘れ形見、つまり子どもがいるのです……」


 

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