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71.

 ルルドールの『知恵熱』は一夜眠ったら平熱に戻ったが、ベッドに横になっている間、アビゲイルがつきっきりで看病してくれたのが嬉しくて、なかなかベッドから出ようとしなかった。


「ルル、熱が下がって本当によかった。でも来客用の部屋の方がベッドも広いのに、ここでいいの?」


「僕はここじゃなきゃイヤなの。それにこのベッド、アビーの匂いがするんだもん。」


 クンクンと枕の匂いを嗅がれ、アビゲイルが慌ててそれを取り上げようと手を伸ばす。


「わっ!ルル!!何してるの?ダメ!!」


 しかし、反対にその手を引き寄せられ、そのままルルドールの胸の中に倒れこむ形になってしまった。


「ああ、でも本物の匂いの方が何倍もいい!」


 ルルドールはアビゲイルのプラチナブロンドの髪をひと房手に取ると、その香りを楽しみながら口づけをした。


「君の体からは甘い香りがする。一体どこから香ってくるんだろう?ここかな?」


 そう言うと自分と女王のからだの位置をくるりと入れ替えて彼女に覆い被さり、首筋の匂いを嗅ぎ始めた。


「あっ、ルル。やめて…」


 アビゲイルがルルドールの胸を両手で押し返そうとするが、その手首にも口づけを落とされ、匂いを嗅がれる。


「それとも、ここ?」


 ルルドールは手首から腕、脇腹までスンスンとアビゲイルの匂いを嗅ぎまくる。


「ここかなー?」


「や、やめて。ルル!く、くすぐったい!あっ、ふっ、ふふふふ…」


 執拗なルルドールのクンクン攻撃に女王は我慢できず声を立てて笑い始めた。




 

 宰相ガロン・ロックフォードは女王の部屋の前にいた。ルルドールの容体も気になったし、イールの情勢も落ち着き、女王の婚姻の予定も決まった。そろそろ自分の秘密を告白する時期であることを男は感じていた。時刻は午前10時を過ぎており、二人とも起きているのだろう、中からは物音がする。ガロンがノックをしようと扉に体を近づけると中から女王の叫び声が聞こえた…ような気がした。


「な、なんだ!?」


 ガロンがそっと耳を寄せ、中の様子を窺っていると、


『ああっ!ルル!やめてっ!!』


『ダメだよ、まだまだするからね!』


『いやー!ああっ!!』


『ほら、ここはどうかな?』


『はあー!!もう無理!死んでしまうっ!!』


『ほらっ、アビー、言うことを聞くんだっ!!』


『きゃーー!』


 ドアを叩こうとしていたガロンの手が怒りでふるふると震えた。女王を先代の王に代わり見守ってきた。それに一時は息子の婚約者だった彼女だ。いうなれば、自分は彼女の父親代わりでもある。それを粗雑に扱われては、いくらラドハルトの王子で女王の婚約者だとしても、許せるはずがない。


「この、若造が……嫌がる女王に非道な行いをしおって!!」


 この時のガロンは頭に血が上っていたせいか、ルルドールが身を呈してまで女王の命を守り、大切にさえすれど無体な事などするはずがないことなど、きれいさっぱり頭の中から消え去っていた。そしてドアノブをそっと回すと、勢いよく扉を開け放った。


「そこで何をしている?我が女王陛下に不埒な真似をする輩は、たとえ隣国の王子とて許す……え!?」


「え?」


 ガロンの目に飛び込んできたのは、ベッドの上に寝そべる女王の腰や背中を丹念にマッサージする若い婚約者の姿だった。そしてベッドの上の二人は、ポカンと口を開けたまま、いきなり入ってきた侵入者を不思議そうに見つめていた……


「………………お、おはようございます」


「…ああ、おはよう」


 ガロンの気の抜けた挨拶に、これまた間の抜けた挨拶が返ってきたのだった。



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