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61.

 今から6年前、ルルドールを誘拐したのは当時14歳だった、アムダルグ帝国第二皇女ナターシャだった。第一皇女が18歳という若さでこの世を去った時、ナターシャは12歳だった。父も母も病弱な姉にかかりきりで、良くも悪くも少女は早い時期から自立していた。


 それに加え、姉の死後、今までナターシャにはそれほど関心を示さなかった父母が、亡くなった姉の分まで彼女を可愛がるようになった。しかしその結果、それが少女の我が儘な性格に拍車をかけることとなってしまったのだった。


 ルルドールを初めて見た時、ナターシャは新しいオモチャを見つけた気がした。『この子は私の物』そう思って少年をいつも側に置こうとしたのだが、ルルドールはなにかにつけてあのイール国の女王と行動を共にしていた。


『あんな年増とばかり一緒にいるなんて……』今までも欲しいものは全て手にいれていた皇女は考えた。『そうだ!あのオモチャをアムダルグに持って帰ろう!』


 その後ナターシャはルルドール誘拐に失敗し、アビゲイルにぐるぐる巻きにされた状態でラドハルト国王の前につき出された。周囲は自分を嘲笑する目で溢れていたが、ナターシャはその目から逃げず、キッと前を見据えていた。


 アムダルグ特有の赤毛には癖があり、毎朝侍女を困らせた。国土は近海で日除けになる物が少ないゆえに、太陽の陽を直接体に浴びる機会が多い。いつの間にか色白だった素肌はそばかすが占領し、年頃の少女を悩ませた。


 ナターシャはけして、美しくないわけではなかった。顔立ちはアムダルグの三大美女と呼ばれた母親譲りだし、 唇は紅を引かずとも艶めいていた。捕らわれた今でも赤茶色の大きな瞳は、ギラギラと輝き、結局のところ容姿は良いのだが、この負けん気の強さが仇となり、国内外で少女の評判は最悪だった。


 しかし自身の思うままに行動してきたナターシャだが、さすがに今回ばかりはそうはいかない事に気が付いた。皇帝に代わりに出席していたソルシアン皇子がひたすらリカルド王に謝罪をし、アムダルグからも多額の慰謝料が支払われたので不問に付されたが、この一件が尾を引いて、20歳になる今現在でもナターシャに嫁ぎ先は見つかってはいなかった。


 ナターシャは6年前、自分が引き起こした事件がきっかけで、自身が周囲からどう思われていたかを思い知ることになった。『無知で傲慢な皇女』。それが人々が少女に下した評価だった。その日以来、彼女は心を入れ換えて多くの事を学んだ。依然として彼女を欲しいという物好きは現れないが、ナターシャはそれならそれでいいと思っていた。


 しかし、彼女を取り巻く環境はすぐに変わることとなる。ある一人の男によって……


 あの日、皆の前に引き立てられた日、一人の男が少女の瞳に魅せられ「ごくん」と唾を飲んだ事を彼女は知る由もなかった。


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