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48.

「あっ、クリストファー、一体どこにいたんだよー?君がいない間、こっちは色々あって大変だったんたからー!」


ルルドールとアビゲイルが宰相と共に会場に戻っできた。後ろからはアニスとカサンドラ、その二人にそれぞれ寄り添うようにソルシアンと護衛の男がピタリと二人をガードしながらついてくる。時よりアニスに蕩けるように微笑みかけるソルシアンにクリストファーはあんぐりと口を開き驚いている。それに気付いたルルドールは彼の側までやって来て文句を言ったのだった。


「……ああ、ルル。な、なあ、あれ、ソルシアン皇子とアニスだよな?ええっ?皇子の護衛とカサンドラぁ?お、おいルル、俺の目はおかしくなったのか?あっ、今アニスの頬にソルシアン皇子がキスしたぞ!!あの野郎!嫌がる少女に公衆の面前で無理やり……」


「はあー、あれのどこが無理やりなのさ?出来ることならそうであってほしいくらいだけどね。」


「え?じゃあ、アニスもその気があるのか!?ああっ!それに、カサンドラはあんなオヤジと……まさか弄ばれているんじゃないだろうな!?」


「うーん、あそこはそんな風に見えてもしょーがないかな……あはは」


 もう何がなんだかさっぱり分からず、ルルドールに尋ねてみたのだが、もっと分からなくなるクリストファーであった……



「駄目だ。完全にキャパオーバーだ!おまえの事でいっぱいいっぱいだったのに、その上……」


「うん、心配かけてごめんね。クリストファーのお陰でアビーとは上手くいったよ。本当にありがとう!」


「……そうか。よかったな、ルル。」


「うん!僕もう死んでもいいくらい幸せだよ。ふふふ」


 妖精王子の満面の笑みを見てクリストファーはほっとした。あとはルルドールを狙った黒幕を突き止めることが出来たら全て終わる。そうなればルルドールは生涯イール国で暮らす事になるだろう。クリストファーは妖精王子との別れの予感を感じながら、その日まで彼を支え続けて行こうと心に誓ったのだった。 


 曲が流れ始め、人々が踊り出す。ソルシアンもアニスの手を取りダンスホールに向かう。そんな二人の姿を眺めながら、まだ信じられないかのようにクリストファーが呟いた。


「……それにしても、俺のいない所で本当にいろんな事が起きたみたいだな。」

 

「そーなんだよ。僕、君に話したいことが沢山あるんだよね。」


「実は俺も面白い話を仕入れてある。」

 

「え?なになに?」


「その話は後でだ。ほら、おまえの女王陛下が呼んでいるぞ。」 


「あ、ほんとだ。アビーが呼んでる。僕、行くねっ!」 


 見るとアビゲイルがこちらに小さく手を振っている。ルルドールは嬉しそう手を振り返すと女王のもとに飛んでいった。

 

「やれやれ、あれじゃまるで、飼い主と犬だな。」


 クリストファーは苦笑いしながら彼を見送った。そして奥の赤いカーテンの隅にさりげなく目をやる。するといつの間にやら、カーテンの陰にいたローダスも男達も姿を消していた。注意深く辺りを見回してみたが、どこにも見当たらない。恐らく既に会場を出ていった後なのだろう。嫌な予感が男を襲う。彼は咄嗟にルルドールたちのいる方向に目を向けた。



 ルルドールと女王、それに宰相ロックフォードは今、庭園に続く大きな硝子の扉付近にいた。三人で何やら真剣に話をしていて、硝子戸の外は全く気にしていない。庭園の小路にはいくらかの外灯があるものの、そこから外れて中に入ると暗闇が広がっていた。逆に、きらびやかなダンスホールの中は外から丸見えで、もしも外に敵が潜んでいたなら、中にいる人間は恰好の標的になるだろう。


『何かが起きる』クリストファーの騎士としての勘がそう言っていた。彼がルルドールに駆け寄ろうとしたその時、パァンという破裂音と共に硝子戸が勢いよく砕け散った。


「しまった!遅かったか。皆、床に伏せろ!!」


 クリストファーが叫び声を上げる。


「きゃあーーーー」


 周囲からはけたたましい悲鳴が響き、恐怖で混乱する人々が逃げ惑う。


「くそっ!これではルルの所に行けない!!」


 クリストファーは右往左往する人々の波に邪魔をされ、前に進むことが出来なかった。しかし、そうこうしている内に二度目の銃声が鳴り響いたのだった。


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