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45.

 ローダス・イーリア。前王の腹違いで出来損ないの年の離れた弟。母親は下町の娼婦で、たまたまお忍びで遊び歩いていた、先々代の国王の『お手つき』となった。その後、王都の外れに家を与えられ、女は贅沢三昧の生活を送っていたが、懐妊が判明したと同時に王宮に移り住む。しばらくすると王家に生まれた者の特徴に似た、男児が誕生した。


 赤子の容姿は母親似で、目のつり上がったきつめの顔は、父王とも、ましてや20歳年上の兄王子にも全く似ていなかった。王家特有のプラチナブロンドはどちらかというと灰色に近く、透明感が強いはずのゴールドの瞳はくすみ、母親が娼婦上がりなこともあり、本当に国王の子なのかと疑問視する声が挙がるほどだった。


 後宮には王妃しかおらず、側室を置いてはいなかった。しかしそれは色恋沙汰のトラブルが煩わしかっただけで、国王は王妃だけを愛していたわけではなかった。その証拠に彼は女が欲しくなった時にはお忍びで娼館に行っては、その日の気分で様々な女達と関係を持っていた。


 そんなある日国王は、ローダスの母親である一人の娼婦に出逢ったのだった。女はそれほど美しくも教養があるわけでもないただの娼婦だったが、あの手この手でそれは熱心に国王に『奉仕』した。それがいたく気に入ったのか、同じ女を二度とは抱かなかった王が、この女だけは幾度も指名するようになり、とうとう屋敷を買い与えて子まで成す間柄になったのだった。


 もともと王妃は体が丈夫ではなかったので、王子を一人しか産むことが出来なかった。だから彼女は、夫である国王が然るべき家柄の娘を側室に迎え、子を産ませるのであれば、それを受け入れるつもりでいた。しかし、まさか国王が孕ませた娼婦を王宮に連れ帰るとは夢にも思っていなかった。

 

 当時、ガロンの父にあたる宰相と大臣たちは国王を説得し、娼婦を城から追い出そうとした。しかし国王が頑なにそれを拒否したので、宰相は国王が王位を王子に譲って隠居する事を条件に、娼婦を王宮の隅に置く約束をしたのだった。


「あたしのお腹には陛下のお子がいるというのに、追い出そうなんて!陛下、その男を死刑にしてください。それに、譲位するなんて、絶対駄目です!」


 その話を聞いた娼婦は烈火のごとく怒り狂った。女はなんとか国王に譲位だけは踏みとどまるよう、何度も願ってみたが、聞き入れてはもらえなかった。


 国王の寵愛を手に入れた娼婦には大きな野望があった。もし腹の子が男なら、この国を統べることが出来るかもしれない。その為にも今、譲位されてしまえば、自分の計画が台無しになる。しかし、どんなに国王を言いくるめようとしても、所詮は元娼婦の愛妾。そんな女の話をまともに聞いてくれるはずもなかった。


 譲位の話は着々と進んでおり、話を覆すことは難しい。それに腹の子が男児かどうかは生まれてみないことには判らない。なら手っ取り早く自分の地位を確固たるものにする為に必要なのは王妃の座だと女は思ったのだった。

 

 娼婦は身の程知らずにも、国王が政務に勤しんでいる間に、王妃の暮らす後宮に足を踏み入れた。そして今まで男たちに貢がせた金や宝石で王妃付きの侍女をまんまと買収し、誰にも気付かれる事のないように、毎日ごく少量の毒を王妃に与え続けた。幸い、彼女は元々体が丈夫ではなかったので、少しずつ衰弱していく原因が自分の与えている毒のせいだとは、誰も思わなかった。


 そして、娼婦が臨月を迎えようとしたある日、王妃の命の灯はついに消えてしまった。それから間もなくして、女はその命と引き換えたかのように無事に男児を産み落としたのだった。

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