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25.

 シャワーを浴びて、すっきりしたルルドールにまたまた女子二人が取り囲み、あーでもない、こーでもないといいながら、超特急で麗しい王子に仕上げていく。その合間のすこーしの時間でクリストファーの支度は終了されていた。


「きゃー!か、かっこいい!!これぞまさに妖精王子だわっ!!やはり私の見立ては間違っていなかったわ!!」


 アニスは大興奮で自分の『完成品』を自画自賛する。そして当のアニスはといえば、先ほどルルドールが『アニス嬢』として着ていたドレスと全く同じ物を自分のサイズで作らせていた。それを今、彼女は着ている。


 色かたち全てが同じドレスだったが、この少女とルルドールの女装とは印象が全く違っていた。美しさだけを追求するなら、間違いなくルルドールの方が上だったが、生き生きとした人間らしい愛らしさはアニスの方が数倍上だった。ルルドールの女装が人工的な造花の様な美しさなら、アニスは今、花開いたばかりの一輪の薔薇の様な、生への喜びを感じさせる美しさを持っており、いくら姿かたちを似せても二人は似て非なる存在だった。


 悲しい出来事を克服した少女は今、誰もが振り返るほど、におい立つ魅力を我知らず振り撒いていた。元来が陽気な少女だ。久しぶりの外の空気は彼女にとって、とても新鮮だった。


「アニスさん、私にまでドレスを作っていただき、ありがとうございます。三人お揃いなんて、嬉しいわ!」


 そしてもう一人、同じドレスを纏う女性がいた。彼女は年老いた両親を助け、宿屋を切り盛りしていた。今年で20歳になる彼女は極め細やかな心配りの出来る美しく優しい女性だ。今まで何人もの男に求婚されていたが、両親と同居してくれなければ、結婚する気はなかった。ルルドールが巻き込まなければ、今でも何事もなかったように、宿屋と食堂のことだけを考えて暮らしていっただろう。そんな彼女にも転機が訪れたのかもしれない。彼女…カサンドラはルルドールを手助けする事こそが自分に課せられた使命のように思っていた。


「そうなのよ、どうせなら、ルル様と三人一緒に着たかったわ!少し残念だけど、仕方ないわね。」


「でも、この格好では舞踏会の会場には入れませんね。」 


 カサンドラには招待状は届いていない。ホールに入るなら、侍女の格好をしていなければならない。


「ところがそうでもないのよねー。実は父が裏から手をま……じゃない、お偉いさんにお願いして、今夜の舞踏会にクラーロ家の兄たちも参加出来るようになったの。私も今日、出掛けにこの話を父から聞いたばかりなのよ。正直、兄たちの事なんてどっちでもよかったんだけど、カサンドラさんのドレスが無駄にならなくてよかったわ。それで、お願いなんだけど、よかったら次兄、サンダートのパートナー役を引き受けてくれないかしら?長兄のカイルは私が相手になるからいいんだけど、なんせ急に決まった話で困っているの。」


「え?ええ。私でよければ是非!アニスさん、ありがとうございます!これでルル様を近くで見守る事が出来ます!!」


 カサンドラは頬を染め目を輝かせた。会場内に入れると言っても侍女ではそうそう自由にホールを動き回ることは出来ない。その点、招待客ならルルドールを近くで手助けする事だって可能だ。


 そんな話をしながらも二人はせっせと手を動かし、妖精王子に最後の仕上げを施した。そして部屋を出る時に箱の中からアニスが取り出したのは、クラーロ家の薔薇園に咲き誇っていた白薔薇、『サリアナホワイト』だった。


「ルル様、これを女王様に。」


 ふわりと白薔薇からの良い香りが部屋に広がる。ルルドールは顔を近付け、その香りを胸一杯に吸い込んだ。


「ありがとう、アニス!僕、頑張ってみるよ!!」


「ルル様、頑張って!!」


 カサンドラがルルドールを励ました。クリストファーも頷く。


「みんな、本当にありがとう。さあ、リベンジだ!!」


 大輪の美しい花はルルドールに勇気を与えてくれた。白薔薇を受け取ったルルドールはダンスホールに続く廊下に一歩踏み出した。


 


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