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21.

 ルルドールが舞踏会に行く日は女子会?が開かれた五日後だ。超特急で身支度を整え、『アニス嬢』に化けなければならなかった。アニスの迅速な行動のお陰で必要な物は三日間で全て揃い、女子二人の大きなきせかえ人形と化したルルドールはあーでもない、こーでもない言われながら、男子から女の子にへんしーん!していった。


「きゃー!!か、可愛すぎる!!お人形さんみたい!」


「本当に!ああ、私の部屋に飾っておきたいー!!」


 あまりの完成度に二人は手を取り合ってぴょんぴょんと跳び跳ねた。しかし、当のルルドールは初めての女装に戸惑うことばかりだ。


「うわっ!ドレスってこんなに重いの?それに歩きづらっ!!カツラは蒸れて暑いし、サイアク~!!女の子って大変なんだ。 僕、初めて知ったよ!皆たのしそーに着飾っていたから、楽チンなんだと思ってた。」


 同じ瞳と髪の色の、アニスによく似た少女がぼやく。


「そうよ、女の子は普段から大変なのよ。…それにしても、確かに私に似てはいるけど、ルル様の方が綺麗っていうのも、なんか癪にさわるわねー!!」


 アニス自身、元々愛らしい顔立ちの美少女だったが、ルルドールの人間を越えた美しさはもはや神の領域だった。パーツ全てが特級品の非の打ち所がない容貌、決め細やかな白い肌、口紅を塗られた唇は艶かしく、きっと男達を虜にするだろう。


「なんか、私も癪にさわります!」


 カサンドラまで言い出した。彼女だって宿屋の看板娘と言うだけあって、目鼻立ちのハッキリした美人で、今まで何度も彼女を目当てに来る常連に『白薔薇の告白』を受けている。


「ねえ、カサンドラさん、私たちも舞踏会に付いていきましょうよ!」


「え?どうやって?確か招待状は『アニス嬢』宛ですよね?』


「だから、私たちは『アニス嬢』の侍女ってことでどうかしら?」


「まあ、凄い!私もルル様の様子を中で見られるの?」


「ええ!ぜひそうしましょうよ。」


 今回、舞踏会自体が大規模な為、参加する令嬢にはお付きの者たちが待機する部屋が設けられている。化粧直しや不都合が生じた時には直ぐに手助け出来るようにエスコートと侍女、合わせて三人までは同伴が認められていた。もちろん、クリストファーはいち早く名乗りを挙げていたので、御者を務める兄、ダンには外で待っていてもらおう。本来ならダンだって独身の令息だ。エスコート役を引き受け、良縁をゲットするにはまたとないチャンスだが、諦めてもらおう。とアニスは思うのだった。


「えっとー、盛り上がってるところ、悪いんだけどさー、これ、脱がせてくれる?もう駄目。ムリ!」


 すっかり女装させたルルドールの事を忘れていた二人に彼が根を上げて頼み込んでいると、ドアの外からノックする音が聞こえた。どうも、男どもが『妖精王子』の女装姿を拝みに来たらしい。


「アニス、私だが、入っていいかい?」


 父、ザックが猫なで声で扉の外から話しかける。『やれやれ、これだから男は……』二人の女子は顔を見合わせため息をつきながら、ドアを開けに行ったのだった。その間もルルドールはまだぼやいている。


「あのー、僕のドレス、脱がせてくれないのかな……」


 そのぼやきも終らぬうちに、ドアが開き父、そして三人の兄たちが部屋に入って来た。まずはルルドールに挨拶をしようと彼の方に目をやった四人は、彼を見るなり石のように固まった。そしてそのまま四人の男は暫くの間、彼の女装姿をポカーンと口を開けて見つめていたのだった。するとどこからか、ボタリっと床に何かが垂れる音が聞こえてきた。女性陣がその音の方向を見ると、長男カイルの鼻からは大量の鼻血が出ていた。


「きゃー!お、お兄様ー!」


 その声にクラーロの男たちは我に返る。


「うわぁ!!カイル兄さんっ!鼻血!鼻血!!」


「え!?うっ、うわーーー!!」


 慌てて父と弟たちは大出血の兄を連れて退散していった。その様子を後から来たクリストファーが呆れ顔で眺めながら部屋に入って来た。


「全く、嘆かわしい!ルルの女装ごときにあんなに取り乱して!どこの変態だっ!!」


 クリストファーは平然とルルドールの前に来て言う。それを見てカサンドラは驚いて尋ねた。いつもはルルドールの仕草にいち早く頬を染め反応する彼がなぜに無表情なのか気になって仕方がなかった。 


「あの、クリストファー様はルル様のドレス姿を見て、何も思わないのですか?」


「は?何も思わんが。……しいて言えば、キモいな。」


「ええー?クリストファー、それ、酷くない?僕、傷つくなー!」


 ルルドールは大袈裟に肩を落として文句を言う。するとクリストファーは胸を張り答えた。


「俺はいつものルルが一番だと思う!」


 『…………ああ、筋金入りのホモなのね。』二人の女子はまた顔を見合わせて、アイコンタクトをとるのであった。



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