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アウトローに学ぶ異界生存戦略.76

 口さがない聖職者は『狸のドゥーラン』に対して私を『薄汚れた子狸ウィルダム』などと無責任な評し方をする。

 私がドゥーランに噛み付くだけで中身は狸爺に劣る物真似でしかないなどという悪評を私は甘受してきた。


 確かにドゥーランを高位にあるべき人と仰ぎ、その手腕を学んできたが。

 だが、それを猿真似などと言われる筋合いはないだろう?


 今では彼のやり方を自分でアレンジし、この立場まで上り詰めてきた。


 そして狸親父が死んだ今となっては私こそが枢機卿に相応しいとの声も各所より上がったのである。


 恥じることをしてきたつもりはない。私は私の糧とするために上手を見て習い、下手を踏まずに生きてきたのだ。


 だが(しがらみ)というのは嫌でも目につく。

 私に絡みつく鎖のような冷笑の視線は私の信仰という熱を奪い去るには十分であった。


 他のヤヌ神の信奉者のように私は祈らない。

 ただ乞うなどとは私にはできない。


 そんな私だからこそ今の地位を勝ち取ったのだ。


 人力車に屋根と窓を付けたような御車内で私はラダ・バ・コスタへの道のりを過ごす。

 枢機卿自らが出向くという事に教団内は騒然となったが、従者を少数付けることで何とか反対の意見を押し切る形となった。


 就任したばかりの枢機卿が戦闘に巻き込まれ死亡したのであれば、席がまた空くという偶発性に富んだ希望を抱いている者もいるだろうが、この舞台は"あの"ドゥーランが仕込んだものである可能性が高い。

 であるならば、必然的に私は自治都市群を信仰の力で無血開城させた聖者となろう。


 あの若造、マダイラの神官は吉兆を私に齎してくれた。


 信仰は薄いが縁起は担ぐのが私だ。


 連れ立ったところで大王に手柄が取られることもないだろう。

 カーマ神官とショーイの同行を快く私は許したのだった。


 馬車などという冒涜的な乗り物で着いてくるなどと言ってたため、私の聖なる行列の後方から着いてくるように言ってある。


 なぜ、人力より劣る物に頼るのかは知らぬがまあいいだろう。


 他にも敵国の兵士が一人と卑しいゴブリンが一匹着いてきているのが癪だが、ああも頼まれたのだから悪い気はしない。

 カーマ神官が大王派閥に取り込まれているという風聞は間違っていたかもしれない。

 ならば私がその『冒さざる血』の知名度を利用してやろう。


 適当に餌をチラつかせておけばいいのだろう?

 小僧の自尊心を満足させてやればいいのだ。

 枢機卿として礼を尽くし、野蛮人に盗られた彼の地の解放への協力を惜しまずにしてやれば簡単だろう。

 あまり賄賂はよろしくない。

 この手の輩で常識が通じる者は少ないのだ。


 聖戦士たちを伴った行列は外から見つ者にはやはり新枢機卿の力を見せつけるいい機会だろう。

 ドゥーランなどは嫌っていたがやはり最後は見栄えの良い事で人心は動くのだ。


 私の力はこの座に相応しいと、新枢機卿は狸爺を遥かにしのぐ聖人だと知らしめるのに手を惜しむ気などない。

 盛大に私の就任を天に、神に、人に認めさせてやるのだ。

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