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アウトローに学ぶ異界生存戦略.77 ラダ・バ・コスタ

 目新しい城壁が築かれ周囲を囲っている城塞都市群。

 その中央で時折もくもくと蒸気を吐き出す巨大都市船、それこそラダ・バ・コスタの中枢にして最強の私設軍隊『ラダ海軍』所有の大商人ラダ氏族の治める海上都市である。


 彼らはヤヌ神話において海の民であり、諸説ある逸話に民族を守られた者たちである。

 この点だけを見ればマダイラの民と同様に聖地の人間であるが、彼らは違った。


 国々からの干渉がない事を理由に彼らは彼らの海を通る物を根こそぎ奪い取り、商船などが通ると襲う海賊と化していた。

 その当時は国と国の交易も盛んであったのだが、聖なる血族の海賊たちに苦しめられてきた。


 そこで諸国の主教はそれぞれ同じ結論に至った。

 『コスタの海にもはや神性はなし』と。

 それに食いついたのが後の大商人であり、当時の大聖人であったモルゲロイ・ラダ大司教、通称『鉄火龍のラダ』であった。


 彼は各国に海賊狩りを受け困り果てた元海賊の彼らコスタの民を元の漁民へと戻すだけにとどまらず、"聖地の民"から一転して"神の及び知らぬ民"にされ、商人たちの復讐により十分の三まで数を減らした彼らを自らの名の元に改宗させたのだ。


 彼らコスタ人は元より"海の神の眷属"と呼ばれるほどに漁業に精通し、大嵐の中でも船を巧みに操り、海中でも敵に組み付き戦うと言われるほどの海の戦士であった。

 そんな彼らを各国周辺の海で、貧困漁村の海賊などから守る傭兵へと叩き上げたのがラダ大司教である。


 海賊から傭兵団、そして規模が大きくなるとコスタの民の戦士たちは、ラダの指示の下で強大な軍隊へと姿を変えていった。

 彼らは国々から"敬われる地"から"見捨てられた地"へとなったが、彼らの自立した民族の精神は元よりどの国も手出しが出来なかったのだ。

 そこに金の匂いを見出した各国の豪商たちが合わさって自治都市としてラダ・バ・コスタは誕生した。

 

 その都市群は今も広がりを見せる。そして各都市を守るための城壁を築くほどの財力を持ち合わせている。

 彼らの進出に各国は、ただ手をこまねいていた訳ではなかった。


 コスタの民には商才がなく、ラダ氏族にはモルゲロイからの遺言によりあくまで"民の行く末を導く"事を優先するため、都市群の都政を執り行う各都市長の中には各国出身者や国から賄賂を受けている者もいて、国益のためにしのぎを削っている。

 大国ヤーラカーンの大陸統一宣言などで国家間の関係が悪化する中で、ラダ・バ・コスタが中立地帯として各国の貿易の仲介をするようになってからはさらに裏での争いは過熱していった。


 この大陸一の海軍の姿はショーイには衝撃的であった。

 ただの非文化的なだけとヤーラカーンを見ていたため、この大陸の技術レベルを侮っていたからだ。


 海に面した港には海上ドッグがある。そこで整備されている船。

 これは側面に付けられた外輪を機構により動かし推進力とする物だ。

 それは帝国で見た物と変わりがないように見える。


――帝国と繋がりがあるのかもしれない。


 何もタイタニア人だけが海を越えて新たな土地を探している訳ではないかもしれない。

 この大陸の人間もその一部は海を越えて新天地を探しに行っているのかもしれない。


 そこで帝国とこの自治都市群が繋がりがあるのだとすれば、私たちを抵抗の少ないマダイラの地へと誘導なども出来るだろう。


 これはただ帝国が大陸を植民地とする以外の思惑も動いているようだ。

 大陸一の海軍を有する国と言えるほどの規模の自治都市群。それは小さな連合国とも呼べるかもしれない。


 国の規模で動けるのであれば、自ずとその目的は似通ったものになるだろう。

 新興国家が異大陸の力を借りて勢力図を塗り替えようとし、異大陸の帝国は大陸その物を我が物にせんとする。


 ショーイというただの学問の徒には大きすぎ、予測が出来ない問題であると思う。

 

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