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アウトローに学ぶ異界生存戦略  作者:
1章 異世界で奴隷から神官、そして魔の者への扉を開く
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アウトローに学ぶ異界生存戦略.67

 決意が固まった。

 この石の部屋から俺は出る。


 粗末なスープを掻っ込む。

 パンなども用意されていた。全てを租借し、喉から奥に押し込む。

 暴食の姿を心配するような者もいたが、ここ数日まともな食事をしていなかったのだ。

 遅れを取り戻すかのように食い散らかした。


 喉が鳴る。胃に溜まる。腸へと流れる。血肉となる。


 心臓が脈動する。神がここにいる。


 初めはただの寄り道、俺の考えた作戦の障害となるだけの巡礼だと思っていた。

 だが、ここで託された。


 祝福を与えられた。


 そして心臓に宿る。


 ここで得た物はただの神託などではない。

 許しを求めても、願いを乞うても自分が返事を聞けなければ意味がないのだ。


 俺は返事を聞くことが出来た。

 だからこそ、星々に宿る意思は俺を睨んだ。妬んだ。羨んだ。


 俺は俺とこの身に宿るもう一つの意思に対して報いねばならない。

 立ち上がらなければならない。

 

 願うは己を認める事。誓うはこの身の繁栄。捧げるはこの人生。

 

 死んだものは世界に還る。問題は生き残った者だ。

 世界の祝福に気付かずに生きるのは罪だ。

 俺が俺であり続ける。そして、俺が俺を認める尊い御方を満足させてやるのだ。

 そして俺も満たされる。


 それが俺の生きる意味……。


 ショーイと目が合う。

 彼にも尊い御方はついているのだろう。

 だが、気付かなければ意味はない。


 そして、彼の持つ魔法の知識。

 彼は祝福を感じられぬが、感じられぬがゆえに感じる方法を模索している。


 その知識は俺の役に立つだろう。


 なんだか元の世界での出来事がすべて今のこの瞬間のためにあるような気持ちになる。

 あんなに嫌だった出来事全てに今は感謝したいほどだ。


 あの平手打ちをしてくる者の顔が浮かぶ。

 嫌な気持ちはもうないような気がする。

 ただただ懐かしい。

 いつまでもこの心の平和を乱したくない。


 今から王都へと向かい、直ぐに出立すればまだ間に合うだろうか。

 まあどちらでも構わないのだが。


 俺の元に一人の若い神官が現れた。

 身なりは良い。王都の者だろう。

「カーマ・ケージ様」

 俺は気にせず食事を楽しむ。心臓が動く。動き続けるには燃料が必要だ。


「カーマ様、王都よりお伝えしなければならないことがございます」

 手を止める。


「今宵、カーマ様のヤーラカーンでの神官位を認める儀式を――」

 そこからはあまり聞いていなかった。また手を動かして食事を続ける。


 くだらない。


 一応処罰は受けたのだ。これ以上関わる必要は感じなかった。

「――であり、ショーイ様共々――」


 くだらない。


 罰を受けて身の程を知ったかと聞きたいだけだろう。

 そして、ジョアルやダーヴィルを通してショーイの力も伝わっているだろう。


 それをいち早く取り込みたいだけなのだろうと思った。


 内輪でのくだらない争いに関わる暇はない。

 今は大事なのだ。


 俺が俺の神を失うことになるかもしれないのだ。

 心臓が動く。


 愛おしい。ただ動いていることが喜ばしい。

「――そこでは今後のカーマ様方の――」


「分かった行こう」

 突然返事を返したので若い神官は押し黙る。


 ただただ命令された通りの指示を遂行するだけの人形の様で滑稽であった。


 俺は最後に焦げたパンを喉に押し込み立ち上がる。

 思い切りよく背伸びをし、大聖堂からの使者に向き直る。

「用件は解った。準備をするまで待ってくれ」

「消耗していることでしょうし、外には荷車を用意しております。そこでしばしの間、体をお安めください。この度のお働き大王様もたいへんお喜びになっておりました」


 紋切り型のお世辞に頷くと石の部屋に戻る。


 特に何もない。

 入るときも支度金すら持たされていなかったのだ。

 何もないのが当たり前だろう。


 ショーイが眠りこけていた。

 俺がここにいた間、何をしていたかは知らないが余程疲れたのだろう。


 しかし、急がねばならない。俺は無駄な時間を過ごす気はさらさらないのだ。


 ショーイの方を揺らす。

「フーガ少尉!敵襲だぞ!」


 飛び起きたショーイが俺を強く睨んだ。

 お決まりである。兵隊はこの言葉に弱いのだ。


「大聖堂の神官たちが俺たちを呼んでいるそうだ」


 ショーイの瞳に光る物を見た。

 彼も何か考えているのだと思うと、これから少しぐらいは様子見してもいいだろうと思った。

 ここで一章の区切りとします。

 お付き合いいただいた皆様大変ありがとうございました。

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