アウトローに学ぶ異界生存戦略.65
それからまる一日が経ってやっとカーマが目を覚ました。
未だ意識の混濁があり夢と現実の境が判断できないようだが余りに脆い。
もしかしたらダンジョン内でこいつは何か私に見えない物を見たのかもしれないと思うが、もし何か見ていたとしてもここまで衰弱しているのは不思議だ。
私が死神と出会った時もここまでではなかったと思う。
それから引きこもった期間であれば私の方が遥かに長いのだが。
それからネクロパレスの瘴気の範囲が地下へと戻ったため、既に王国の調査隊が内部へと足を運んでいる。
大聖堂の老いた神官なども何人も忙しなく動いているのを見かけている。
あの後に内部に入った冒険者から話を聞いても第二階層より深くは兵士たちが道を塞いでいてそれより奥を見ることは叶わないそうだ。
何か大きな物が運ばれているようで、異界化により広くなったダンジョンから運び出された物がヒルダニアから王都へと送られていくのを確認している。
ヒルダニアとネクロパレスを往復する兵士の疲労は溜まる一方だが、酒場でも兵士たちだけで固まっていて内部事情は神官服を着ている私にも全く話してはくれなかった。
私はカーマの看病という名目で監視付きではあるがヒルダニア内で行動する許しがでた。
このヒルダニアには胡散臭い輩もたくさん集っていた。
情報は金になる。
何とかこの地で起きたことを知り得れば、暗躍を望む者たちに高く売れるだろう。
権力が集まれば軋轢が生まれる。
軋轢が生まれれば裏で小競り合いが起こる。
滑稽だ。
野蛮人の事ではない。
ブリュータス帝国の事だ。
非文明的な国で起こるような下らない内部分裂が我が帝国でも起きていた。
私の所属する派閥は、この大地に眠るお宝が敵の手に渡るのであれば焼き尽くした方がいいなどとくだらない考えを起こしている。
私も鞍替えする時期なのかもしれない。
だが……。
あくまでタイタニア人である私は、ブリュータスの未来を担える者へと力を貸すつもりだ。
帝王の元に下るとしても手土産が必要だな、などと考えを巡らせる。
不穏分子の情報。ヤーラカーンの内部情報。魔法の画期的発展。
すべての手札をそろえれば私にもまだ鞍替えするチャンスがあるように思える。
渡り鳥などと言われようが、蝙蝠と言われようが私には興味のない事だ。
私が願う事。それは『私が』楽しむこと。単純に切り分けるとたったそれだけの理由である。
魔法と人間、魔法とマナ、魔法と真理。
そのすべてが私を楽しませる。喜ばせる。必死にさせる。
私はただ私の欲望のために動くのだ。
それが"死の香り"に精神を犯された私が、今なお生きる力を失っていない理由でもある。




