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アウトローに学ぶ異界生存戦略  作者: 沖
1章 異世界で奴隷から神官、そして魔の者への扉を開く
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アウトローに学ぶ異界生存戦略.64 ヒルダニアへの帰還

 何でも、ネクロパレスの外では大騒ぎだったらしい。

 瘴気内に入った冒険者や周辺の獣を狩りに来た新米が何人も戻ってこない。


 もっとも近い入り口の廃寺院からはたくさんの異形の大烏が鳴いている。

 ヒルダニア冒険者協会への報告も相次ぎ、ダンジョンの異界化として王都まで早打ちの使者が行く事態とまでなった。


 王都からわずか数キロの聖地のダンジョンの暴走は王都の民草だけにとどまらず王族内にも緊張を走らせたようだ。

 もとよりヒルダニアまでダンジョンの瘴気により隔離された異界が伸びれば、ヤーラカーンの地下迷宮は国土のほとんどを支配する巨大ダンジョンと成り得る可能性があるからだ。

 それに地下から瘴気が侵入した場合は、その出口となる貴族や大聖堂、王宮の隠し扉などから高貴な者たちを飲み込む形でいち早く拡大することが考えられる。

 臆病でない貴族などでも王都からの脱出を考えていたようだ。

 だが、ヤーラカーン内の主要都市は全て地下迷宮の上に建っている。


 私は寧ろそうなった方がヤーラカーン崩壊を招き都合がよかったのだが、意図せず国難を退けてしまったようだ。

 カーマから剥ぎ取った神官服と頭巾を被り、カーマの眠る寝台の近くに座る。


 草臥れた寝台に眠るカーマの様子は優れない。うなされている。

 ヒルダニアの寺院は今までになく混雑しているらしい。

 個室の外では王都の大聖堂からの神官位の者たちが寺院の僧に色々と情報収集を行っていた。


 私は腰に差したリボルバーを握る。

 弾丸は入っていない。

 

 逃げようと思えば逃げられるが……。

 私は他のタイタニア人に荒らされる前のヤーラカーンを巡れる事と、この混乱を帝国本国に伝えて猛攻撃を仕掛ける際の自分の利益を天秤にかけていた。


 近くには戦うことを知らない僧が多数。他には兵士もいるだろうか……。


 私は弾の込められていないリボルバーのシリンダーを回転させる。


 ふぅ、っと息を吹き込む。

 シリンダーの円筒の中がほんのりと光った。


 切り札は返してもらった。

 私はこのままこの小僧に付いていることのメリットを考えた。

 ダンジョンの異界化を鎮め、この男はこの後どのような扱いを受けるだろう。


 大王とその反抗勢力に板挟みになりながら、それでも重用はされるのか。


 私を生かしておいて何をしようとしていたのか。

 考えを巡らせる。


 何をしでかそうというのか。


 元より奴隷として連れまわそうとし、逆に手駒にされたのだ。

 元より私たちタイタニア人とこの者たちの間には隔たれた壁がある。


 それは変わらないだろう。


 どうせ違う生き物であるのなら、このまま私の研究に付き合って貰おう。

 魔法使いの魔力を"見る"ことができる。

 この蛮族の特徴は今は取るに足らないものかもしれない。

 しかし何れ必ず、私たちタイタニア人にとって厄介な特徴になるだろうことを既に理解していた。


 ならばその特性を先に研究し尽くして、貴様らの寝首を掻いてやるのもいいかもしれない。


 どうせなら私がヤンマ大王の首を帝国本国に持ち帰ってもいいだろう。と考えたが、その後に逃げる算段も合わせて準備をしなければならないことは明白であった。

 

 その間にこの地の魔源流までも私の手(・・・)に。


 今更ではあるが、私の中に野望の炎が燻りだす。

 ただ研究材料を間近で見るだけでは足りない。


 新たな知見をこの地で得る。そして、私は偉大な魔法使いの一人として名を残すのだ。

 そのためにもまだまだヤーラカーン側で知りたいことは山のように転がっていた。

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