アウトローに学ぶ異界生存戦略.63
次に意識を取り戻し心の扉を開け放ち瞳を開け瞼を開けた時、俺の眼球には空が映っていた。
夜空に浮かぶ星々。
そのすべてが今の私には誰かの視線にしか思えない。
俺を乗せた何かは上下に揺れながらどこかへ向けて進んでいた。
胸をさする。
あの石ころが胸から心臓を貫いたはずなのだが傷跡すら手触りの中にはなかった。
「おや、神官様がお目覚めになったぞ!」
足元の方から大声で叫ぶ男の声。
そちらを見ると見たこともない男がいた。
どうやら担架に乗せられていたようで、俺はそこに横たわっていたのだ。
すぐ横を見ると同じように負傷者が運ばれていた。
下半身には噛み傷が残り、血で濡れた布で止血が施されている。
ただただ運ばれるままに、俺は身を任せ天を見る。
びっしりと天空を彩る光。
その一つ一つが俺を見ていた。
――ぱちり。
――ばちん。
――ぱちり。
――ぱちっ。
しかし、その天を飾る眼球たちには統一性がないようにも思える……。
腰の拳銃を触りたくなった。
あのハイになる感覚。理性が吹き飛ぶ快楽。
今俺が見ている。起こっているすべての怪異はあのドラッグの副作用の様にも思える。
腰に差していたはずのリボルバーに手が触れることはなかった。
反対側を触る。短剣は二本差さっている。
俺の手が震える。
今まで体験した中で、あの不気味な生きた城や多数の自分の目よりもあの魔法を体感した時の感覚の方が脳にぴったりとこべり付いている。
そりゃあ嫌な事より、良い事の方が記憶に残っている方がいい。
あの尊い御方を拝んだ事のように……。
そういえばなぜ、あの夢の中ではただのゴミのように見えたのだろう。
直に目にしたときにはあんなにも神秘的なお方であったのに。
俺の思考は、魔法で世界の真理と繋がる快感の記憶からアノ御仁のその後についてに変わっていった。
ああ、あの方の棺はむやみやたらに開けてはいけない。
あの御方はあそこで眠り続けなければならない。
それはどうしても抗いがたい感情であった。
あの方は尊い。だからこそ、あそこから出してはいけない。
そのような考えが延々と巡る。
俺の運ばれている方向の反対に、あの御方の眠るネクロパレスが見えると思い担架の棒に手をかけてよろよろと上体を起こそうとした。
そして、自分の腹を見た。
私の腹、その鳩尾から内部に入った先にあるモノ。
心臓。
自分という肉袋越しにも分かる。
私の心臓は神聖な脈動を開始していた。
中だ。
俺の中にも、たしかに神は宿っている。
その瞬間、全身の毛が逆立つような、鳥肌が立つような怖気が走った。
天空をみる。
すべての眼球が俺を恨めしそうに見つめていた。
言葉にならない悲鳴をあげて俺は卒倒した。




