アウトローに学ぶ異界生存戦略.57 決着の……
「カーマ様!」
俺たちの周りの魔物たちの動きが明らかに鈍った。
じわじわと甚振る様な、なぶり殺しにするようなジリジリとした緊張がなくなり、その一体一体が思考を放棄したように停止する。
その一体に槍を突き刺し、その一体は剣で首を刎ね飛ばした。
こちらの限界も既に来ていたようだ。
方向と共に魔物に向け走り出す戦士たち。
ある者は剣で、ある者は槍、ある者は斧。
弓や弩などで牽制していた者も我先にと得物を振るい獲物へと矛先を向ける。
俺の後ろから何人もの冒険者が敵陣に走り出し、肩にぶつかっていく。
俺は放心したかのように周囲を見回しながら、その乱戦となっていく戦場を我関せずと遠巻きに見ていた。
「勝った……」
本当に突然の事だった。
魔物たちから向けられる敵意と殺意は一つとなり纏まっていたはずであった。
だからこそ俺たちから手を出すことは難しかった。
しかし、それが今はどうだ。
魔物たちの研ぎ澄まされたような圧力は消え去り、ただ個体ごとに戦意を持っているだけだ。
恐れることはない。
――ははは……呆気ない。
俺は息苦しさから咳き込む。
そして、息を整え始める。
――ここは勝った。あとは内部か……。
周りで冷静さを残している者たちと目があう。
ダーヴィルもその場で周りの状況を見定めんとしていた。
「カーマ様。先頭部隊を追いましょう」
他の者と同様に頷きあうと乱闘となっているその場を潜り抜け、城の内部へと走り抜ける。
中ではダレスたちが聖地である礼拝堂を取り戻さんとしているのだ。
この場の魔物たちを倒したからと言って終わりではない。
まだだ……。気を緩めるなよ……。
腰に下げたリボルバーに手が触れる。
反対側に差した二つの短剣が金属音をたててぶつかり合う。
周りのダーヴィル達を見る。
消耗はそれほどではないようだ。
もとより魔物たちがこちらを抑え込もうとしていたから精神的な疲労は溜まっているだろうが肉体的にはまだまだやれる。
俺も斬りかかるくらい……。やってやるさ!
城の入り口――エントランス――の左右には柱が立っている。それには植物が絡みつくようになっていた。
そこで違和感に気づいた。
――生気がない。
植物らはまるで物言わぬ土塊のように、いや元より物言わないのであるが……。
植物に妙な無機質な印象を受ける。
それに……。
――なぜ魔物化するほどのダンジョンの奥地、その瘴気の満ちる中で植物はそのままの姿を保っているのか!?
俺はこの大したことがないように思える不安に、なぜか考えを巡らせている。
何かおかしい。
内部の様子を見るのが恐ろしくなった。
中では一体何が起こっているのだろう……。
共に走る戦士たちの中でこの不安を抱いている者は俺だけなのだろうか……?
内部への扉に辿り着く。
「な!?」
――なんだこれは?
扉の取っ手を掴むことを躊躇してしまった。
ここまで近づいてやっと感じた。
この城からは……。この城は……。
扉を蹴破り内部に飛び込むダーヴィル達の後ろに続くのが恐ろしくなった。




