アウトローに学ぶ異界生存戦略.46
歯軋りと共に立ち上がる。
決意を決めたかのような表情に周りの視線が集まる。
「ショーイを助けに行こう」
独り言であったが、頷きで応える者たちがいてくれた。
「私たちもこのまま足踏みをして悩むなんてできませんからね」
ダレスはそのニコッとした表情を周りの者たちにも見せる。
そして体ごと振り向き、その剣を掲げ注目を集めてから士気を高めるための一言を張り上げる。
冒険者としての矜持、人が今までこのダンジョンと過ごした歴史、その全てを彼は背負った。
「ネクロパレスは!俺たちヒルダニアの冒険者が長年管理してきた!それをたかが一回の抵抗でどうにかできると思ってるなんてダンジョンってのは図体がデカいだけの能無しらしい!脳があったら叩き割ってるがな!」
ダレスの豪気な笑い声、それに絆される様に他の者たちの間にも笑いが起こる。
「カーマ神官様、私たちも仲間をみすみすダンジョンの餌にするつもりはありません。是非協力させてください!」
ダレスはその筋骨隆々な二の腕を力ませ、お茶目なアピールをしてくる。
仲間を失ったばかりだというのに愛嬌を振り撒き、他の冒険者たちを鼓舞するその姿はまさにリーダー気質の現れだろう。
「カーマ様、私も微力ながら」
そういう彼。長剣を腰に差したダーヴィルがその濁った瞳の中に、一際意思を放つ光を宿していた。
他の冒険者の中からも雄叫びをあげ戦意を高揚させる者、パーティで息の合った足踏みや武器の突き立てをして仲間の意識を再確認する者たちなどがいる。
「武器は……」
「やられた者から回収した物であれば」
カルナの言うとおり武器だけは数がある。
もともと大した魔物がでない地であったため防具よりも武器の手入れの方が重要視されていたのだろう。
そして首を切り落としたとて、死線を連れ添った友の死体をダンジョンに打ち捨てておく気はさらさらないようだ。
動物や魔物に食い荒らされないように、そして墓を掘ってやるためにと死体とその首を丁寧に扱ってこの廃寺院の傍まで運んできた者も少なからずいる。
今この場にいる者全てが、仲間の終の人生最後の花道を背負っていると言っても過言ではない。
泣き笑いと共に肩を組む者たちもいた。このまま思い出を語りつくさんばかりである。
これは危ういとも思う。皆の内の誰かが生き残ればいいと信じ、不要な犠牲とも考えずに前へ出過ぎる者も出るかもしれない。
しかし、彼らに構っているような余裕が今の自分にはない。
それに冷静に行動するとしても、誰かが囮にならなければならない状況は出てくるのかもしれないと考える自分がいる。
そう。誰かを踏み台にしてでも生きたいという心は未だに残っている。自分が何故生きたいのか、何を行いたいのかさえ無いというのに……。
「……」
無言で握りしめた拳を高く掲げる。その拳は震えてはいるが、俺のその姿を見ると冒険者は沸き立つ。
それを一見冷めた様子で見つめる少女がいた。短い髪には砂埃を被っている。
「カルナ……さん?」
「はい、なんでしょう?」
少々見下げるようなテンションで受け答えをするカルナ。
それに少々動揺しながらも彼女には聞きたいことがあった。
頭をはたいて小奇麗にしながらも、カルナは俺と話しながらも頭を四方八方に動かす。
カルナはいたって冷静に周りを見回し、この中で既に戦意を失っている者やただ縮こまる新米冒険者たちにも目を配っている。
この場での者たちの温度差は激しい。
聖戦にでも行くかのように、何かに憑りつかれた様に戦意の高揚した者。仲間、友の死を受け入れられない者。
彼らの溝は、お互いに無視する形で深まっていっている。
お互いの気持ちは分かるのであろう。だが、その違いを決定付けた物が判らずにただ自分の感情のままに今を過ごしている。
「この聖品、燭台について色々と知りたいことがあるのですが……」
「ええ、構いません。何をお知りになりたいのでしょうか?」
俺の鈍った頭を回転させるには、彼女のような軽蔑に似た眼差しが必要だったのかもしれない。
自分が正しくないとはっきりと思われているような誰かからの意思表示。
多少はそれに反発するような気持ちも生まれるが、それによって自分の今の状況を冷静に振り返って評価することが出来ると思う。




