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アウトローに学ぶ異界生存戦略  作者: 沖
1章 異世界で奴隷から神官、そして魔の者への扉を開く
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アウトローに学ぶ異界生存戦略.43

「友ヨ……」

 地獄の底から這いずるような声がでる。


 思うに私がダンジョンマスターとして蘇生されたのは、私自身が既に人の形をした幽鬼に他ならなかったからだろう。


 友を弔う場から我が居城へと戻る。

 ずいぶん朽ち果てたものだ。所々が崩壊しないように修繕などされてはいるが、これでは人が住める環境ではないだろう。

 城の荒廃具合から己がどれほどまで眠っていたのかを想像する。


 名すら思い出せぬ……。

 時の流れ、もしくは神が私にお与えくださった情け。

 私は、己が虫食いの記憶により正気を保っているのだろうという結論に至る。


 全てをあったまま覚えていたのなら、私は絶望の小舟で出航しようなどと思いもしなかっただろう。

 小舟から私は希望という楽園を目指すことにした。


――我ガ子、我が娘……。友トノ約束ヲ果タス……。


 まずは小舟を軍艦へと作り変え、大海原のごとき大陸中を探し回る。

 波風立てながら進めば必ずや我が子孫が、私を見つけてくれるだろう。


 そして、得るべきは世界。

 ダンジョン(世界)の中に我が子孫が治める領地を興す。


 そして、誰にも……。友と私の力を我が子孫以外には誰にも渡さぬ……。


 私を囲むように世界に歪みが出来る。

 その数三つ。

 暗く、孤独を孕んだ黒い歪み。

 そこから一体ずつ我が眷属が生まれ落ちた。


 私のこの行為は、果たして私の意思なのだろうか?

 それともダンジョンの意思なのだろうか?

 経験にない事柄も、記憶にある事柄も全てが混濁していく。


――アアアアアッ!


 私は、私のこの感情は私の物だ!現実に今私がそう感じているのだ!


 私は例えようのない恐怖に身震いし、そのはっきりと分からない疑問を何度も何度も繰り返し頭から引っぺがす。


 私の子や娘はあの戦いの中生き残ったのか……?

 どうやって?


 疑問に思ってしまったら私は私でいられなくなってしまう。

 恐怖が私を包み込む。


 地獄の底から響く叫びが城中に反響した。

 狂いそうな私の魂。

 そうだ。記憶が虫食いなのだからきっときっと。大丈夫だ。

 何て事もない。


 私が幽鬼として執着していただけの意識が、ダンジョンに肉体を伴う蘇生をされた事で狂い出したのだ。

 私の弱り切った精神、衰弱した神経はこの肉体にはそぐわないほど脆い。


 私の影には悪魔がいる。

 ダンジョンという悪魔は私を生き地獄に落とそうというのだ。


 激しくこの身をのた打ち回らせる。

 恐怖。恐怖。恐怖。


 記憶の断片が、時間の流れが、そして人間としての精神を保っていることが私を蝕んでいるのだ。

 

 私はどうなってもいい!どうなってもいいが、私と友の生きた証だけは!

 すべてが無駄だったなんて事は断じて認められない!


 精神に異常をきたしてはならない。私は正常でなければならぬのだ。


 大きく見開いた瞳、暗黒の瞳の中に一人のちっぽけな人間が映る。

 せっかく領民として生きるチャンスをやったのにも関わらず、アレは逃げ出そうというのか?


 私がのた打ち回る音が止んだため、哀れな羊はこちらを振り向いてしまった。

 ぞっとするような恐怖に支配された人間だ。だからせっかくのチャンスを棒に振ってしまったのだ。

 

 私の中に恐怖と安堵がほどよく流れる。


 私はまだ大丈夫だ。アレのように恐怖に支配されて動き出してはいない。まだ大丈夫……。

 

 走り出す冒険者、その後ろには複数の者が慌てて追っていく。


 アノ者たちには私は何に見えるのだろうか?

 ふと自分の今の姿が気になった。

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