アウトローに学ぶ異界生存戦略.42 ネクロパレスの記憶
限りなく広がる意識の中、意識の混濁が時折起きる。
それを振り払うと自分が自分である事が再び確認できるようである。
手繰り寄せた運命。
かつてダンジョンに身を沈めた友人もこのような超越感に満たされていたのだろうか。
石柱に支えられた天井、そして友を葬った地。
祭壇に近づく。
私が。
私が彼を殺したのだ。この手で。
遠い記憶を引き摺り出す。もはやそれすら困難極まりない。
あれは例年よりも酷く寒い冬であった……。
友の犯した罪。私も共犯者である。
今では名も思い出せぬこの地で私は領主であった。
辺境の貴族としての地位ではあったが、港町と孤島の城下町の二つを統治する要所を治める名誉に当時は心奮わせたものだ。
あの時は良かった……。
私と領民らを遮る身分の差を出来るだけ感じぬように取り計らい、私は田舎者と貴族らに謗られながらも穏やかな日々を過ごしていたように思う。
私は領地の新たな利益を得るために港に寄る船乗りたちとも酒を飲んでは語らい、各地での状況をより市民に近い目線で知りえた。
北で戦争が起きれば武器を輸出し、東で食糧難による飢餓が起きれば食料を売りつけた。
王都に近いこの地にはあらゆる情報と物資が集まる。それ故にできたことだ。
しかし、当時の私はその事を自分の手柄だと思い過ぎていたのかもしれない。
私の友人、今は名前さえも思い出せない……。
彼の気が狂いだしたのは、もしかしたら私のせいかもしれない。
その冬、友は城下町の寺院から城へと続く地下道内にて毎夜のように何やら行っていた。
友は避難部屋の一つに礼拝堂を置きたいと私に言っていたのでその準備だろう。
当時の私は友の言葉に納得し、小間使いなどに物資なども調達させ彼を手伝った。
彼の事を信頼していたと言えば聞こえがいいが、結局のところ私は自分の生まれ持った特権を振りかざし、彼の心を蝕んでいたのかもしれない……。
毎日休みもせず設置作業は進み、見る見るうちに聖なる風格を持ってくる空間を私は興味深く一度だけ見に行った。
その時に止めておくべきだったのだ!
私は見る影もなく痩せ細った友人の姿を見ても、ただ信仰のために心血を注いでいるとしか感じなかった!
彼の身を案じるのであれば、一時でも彼の声に耳を傾ける時間が作れただろうに!
そして、あの夜に奇怪な現象が起こった。
天から雷鳴が降り注ぎ、数度、十数度と地揺れが孤島を襲った。
そして、あの忌々しき紫光が地中から地面を貫き我が領土を怪しく照らしたのだ。
ああ、我が友よ……。旧来の友よ……。何故だ……。
私は頭を抱え地面に膝を落とす。
友人の落ち窪んだ瞳に暗く闇が覗いていたのが今なら分かる。
私の友人は越えてはならない一線を越えてしまったのだ。
手を伸ばせば救えたのかもしれない彼に、私が彼の苦悩に気づこうともしなかったせいで!
彼は手の届かぬところまで行ってしまったのだと、その時直感した。




