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アウトローに学ぶ異界生存戦略  作者:
1章 異世界で奴隷から神官、そして魔の者への扉を開く
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アウトローに学ぶ異界生存戦略.38 ショーイ(フーガ・コートリー)の宿願

 私は実に勉学の徒であると自画自賛した。

 祖国でのタイタニア人の歴史の立会人たちが記した自叙伝などの極めて経験的で抽象的な文章から、魔道学や魔術史などの枝分かれした各マナ研究までを包括的にまとめ組み立てなおし、魔法学という一つに体系立てるのは大変骨が折れる作業である。


 ブリュータス帝都に、念願の私所有の研究所を打ち立てたのは数年前。

 私自身は兵役などとは無縁な知識人のため一年中そこで研究に打ち込みたいのだが……。

 今回の異大陸の調査隊及び先遣隊として未曽有の地へ向かえるというのは、私の探求心をくすぐることを止めなかった。


 ああ、そうだ!

 私はフィールドワークと言う現地での研究に憧れを抱いてやまなかったのだ!


 偉大な魔法使いは大抵『外』での新たな知見によってその偉業を達成した。

 それが今はどうだ!?

 タイタニア人の母である大陸は、そのほぼ全てが我々ヒト種の領土である。

 各国によって分割統治されてはいるが、もはや得るべき新たな知識などは、探求を名目にした墓荒らし共(勿論冒険者などといった一攫千金狙いの傭兵崩れも含める。)により食い散らかされてしまった中に埋もれていることだろう。


 そんな中、私に舞い降りた新たな大陸への切符。

 これを逃すことなどできようか!?


 私の研究の最たる目標である『マナと魔法の関係』をいくら帝国で追い求めようとも、そこには過去の産物にしがみつく老人共とライバルたちの邪魔がある。

 頑迷な軍部もそうだ!

 私の研究発表が何度踏みにじられただろうか?


 魔法をタイタニア人だけの特権などと呆れかえる勘違い!

 傲慢も甚だしいとは思わんのか!?


 このところ私には運が味方している。

 歓喜に打ち震える姿を人前に晒す気はないが、これだけは言わせてくれ。


 ヤーラカーンの地下大迷宮!

 他の者に荒らされていないあるがままのダンジョン!

 ああ、私は今!前人未到の研究対象の!真理の扉の前に来ている!

 この地でのマナの魔源流へと到達すれば、私の研究の答えが見つかるかもしれない!


 私の興奮がご理解いただけるだろうか?

 いや、そんなことはどっちでも問題ない。

 私が求めるは私の理想、そして夢なのだから他者の理解など元より不要なのだ。


「ショーイ様……何をしているので?」

 頭を丸めた巨大僧のジョアルが私を現実に引き戻す。

「まあ見ていろ」


 私の手首に巻いた戦鼠(ウォーラット)の腸。

 そして地面には血で描いた魔方陣。


我切望する故に(ウィッシュ)

 私の声に呼応するようにダンジョンの岩肌に描いた歪な魔方陣が光りだす。


 手首に巻かれた腸のアクセサリーが力尽きている戦鼠(ウォーラット)の腹の中へとミミズの様に這い戻る。


「ヅ……ベギュゥゥウ!」

 のたのたと死骸が動き出す。


「これは……!」

 周りの護衛冒険者たちが震えたような声を出す。


「古い呪術だ。命の循環を無視した物だと。異端だと君らは思うのだろうがね……?」

「いえ!決してそのような……」

 言葉尻に迷いが見える。

 マダイラという"冒さざるべき地"の"冒さざるべき"血族だと思わせていることはとても都合がいい。


「ダンジョン内部をよく知っているのはダンジョンにより生み出された迷宮種の魔物だ。君たちは魔物が魔力の暴走した動物などだけだと思っているのかね?」

 私の言葉に対する返答はない。

 この地では魔法が使えるものは一握りのようだから、その分析も遅々として進んでいないのだろう。


 そして、それを信仰象徴とするのであれば尚更である。


 原生種、異貌化種、迷宮種……。


 そのすべてが何故生まれ、何処へと向かうのか。

 魔法とマナの関係のその先、世界の真実。

 私の求める物はさらに先へとまだ続くのだ。

 こんな所で足踏みをする暇はない。

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