アウトローに学ぶ異界生存戦略.37
後で聞いた話だが、ダーヴィルは俺を見捨てたわけでも対の大蜘蛛と戦っていた訳でもなかった。
蜘蛛の巣穴と呼べるような、通路から縦長のフロアとその奥の卵の部屋までの巨大なゾーン。
その途中に地上に向けて穴が開いていたことを覚えている者はいるだろうか?
ダレスとその仲間の槍使い(僧兵にスイと呼ばれていた女)はそこから地上に出ていたのだ。
もう一体の大蜘蛛(これは俺と対峙した物より数段階小さかったらしい)が天井まで幾重にも張り巡らされた糸を踏み台に地上へと昇るのに対し、ダレスは同じ個所を的確に踏み抜き後に続いて飛んでいったらしい。
ピンと張り切った糸は大蜘蛛の跳躍力もヤヌ人特有の脚力も支えるほどの強靭さであるようだ。(蜘蛛の糸がUSAも目に付けるほどの超素材なのは知っていたが……異世界でも通用する知識らしい。)
地這い蜘蛛(ダレス等が倒したのは地雷蜘蛛と呼ばれる亜種の雄らしい。)が戦鼠を絡め取ることよりも、突き刺した槍を持つスイという付属品を巣の外に出そうとしたのかは不明だが、もしかしたら他の餌も生きたまま繭のように糸で包まれていたのだから子供には新鮮な餌以外は与えないという親心があったのかもしれない。
死体は巣の外に放り出すというただの習性かもしれないが。
ダレスが外で見た光景はやはり霧に包まれていたそうだ。
地雷蜘蛛が地表の獲物を捕らえるために作った穴を通じて、地表にまでダンジョンエリアが形成されていたらしい。
ダンジョンの異常により運悪く地表の牢獄に閉じ込められしまったのは、外で獣狩りをしていた新米冒険者。
地雷蜘蛛の穴をダレスが塞ぐ形で協力して、数名は命からがらだが生き延びた。
ダレスが来る前には他にも猛獣狩りの冒険者がいたそうだが、地雷蜘蛛に捕えられ地下に引きずり込まれた者、地下から抜けられないかと試し途中の粘着性の糸に絡まりそのまま繭にされた者がいたようだ。
化け蜘蛛に捕えられ、糸で体中を覆われた後に助けることは到底不可能だそうだ。
当然のように溶解液を体内に流し込まれ、皮以外は液体スープにされるからである。(だから傷のある戦鼠は餌袋に適さないとして外に放り出されたのかもしれない。)
とまあそういう訳で俺の恐怖の対象は既に取り除かれていたのである。
そこでダレス等地表組を地下に下ろすために、ダーヴィルが大蜘蛛の卵をクッションとして地面に敷き詰める作業をずっとしていたようだ。(あまり気分の良い光景ではないため想像はしない方が良い。)
という訳で俺が恐怖に慄いていると、体中を蜘蛛の成りそこないの液体でびしょびしょにしたダレスたちが現れ、無事俺は救助された。




