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アウトローに学ぶ異界生存戦略  作者: 沖
1章 異世界で奴隷から神官、そして魔の者への扉を開く
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アウトローに学ぶ異界.14

 ヤーラカーン王都ベリュンヒルダでは、物見に引っ切り無しに人々が往来する広場がある。


"海を越えた先、血も涙もない悪鬼の国ブリュータスのフーガ・コートリー先鋒将軍"

"この者等はマダイラの地の教徒、部族の尊厳を尽く殺戮した悪辣非道の異教徒である。"

"これよりヤーラカーンは異教の国と、それに恭順した信仰心の欠片もない周辺の賊国に神罰を下すべく、まずは三千の兵にてラダ・バ・コスタを平定する。"


 立看板にはそう記され、広場の中央には顔が酷い形で硬直した息絶えた男の死骸が吊るされている。その下には三人のブリュータス兵が罪人として地面から首だけ出した状態で、もちろん口を聞けぬようにして放置されている。


 ほとんど真実しか記されていない。

 確かにフーガ少尉たちは奴隷商人と結託し、ヤヌ信徒たちの尊厳を蹂躙した。

 大陸一の海上戦力を持つラダ・バ・コスタを掌握しようというのも将軍らの決めたことだ。

 しかし、フーガ少尉は俺の企みもあり、殺すには惜しいので代わりにガーダーに少尉の服を着て吊るされてもらった。別にいいだろう。既に毒が回りきって心臓すら動かなくなっていたのだ。

 着せ替えるのが難しかったので硬直していた邪魔な両腕は切断したが、死体損壊なんてのは殺人に比べれば大して心も痛まない。そもそも俺は神職ということなので見守り、指示するだけで実際に仲間の体を冒涜したのは今生き埋めにされている奴らだ。

 まだまだ死体などを見ると吐き気などはするが、なあに既に感覚は麻痺してきている。直に慣れるだろう。

 むしろガーダーには感謝してもらいたいものだ。これから彼は将官としてこの地で語り継がれる予定なのだから。


 俺としては大して関わりもない他人なのでどうでもいいが、隣のフーガは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

「少尉殿、命あっての物種です」

 ビックホースは至って冷静だ。都合が悪いのでショーイと偽名を使わせている元フーガ・コートリー少尉を気遣う言葉はあるが、どう見ても本人は無関心なようにしか見えない。

 タフというより感情の起伏が感じられない。彼がブリュータス帝国兵となって経緯など知らないのだから何故そうなのかなんてのは質問しない方がいいだろう。文句もなく黙って従う彼をつついて藪蛇になっては困る。


 馬車の荷台にせっせと荷物を運ぶゴブリンは、ヤーラカーンに捕まった時点で死を覚悟していたようだが、付近のゴブリン族との交渉に使えそうなので生かすことにした。

 ショーイが言っていた"ゴブリンとも交易がある"というのは大国ヤーラカーンには当てはまらないようで何かと彼らゴブリン族を理由も乏しく討伐するその悪名だけはゴブリンに広まっているらしい。

 ビックホースにより"俺"に慈悲をかけてもらったことを伝えると、ゴブリンはその卑しくも醜い顔をさらに一層醜く綻ばせた。

 たしか昔読んだファンタジー物のマンガだとゴブリンは大抵根性も悪い。いつ裏切られてもいいように心の準備くらいはしておこう。


 その内、ビックホースからゴブリンとの意思疎通方法くらいご教授願いたい。

 というよりこの世界でおかしいのはヒト種の言語は共通だが文字は違うという点だ。それを常識とする彼ら現地人に聞くのは自分の立場を危うくする可能性があるので今は深く考えないようにしておく。

 おそらくバベルの塔ならぬなんやかんやがあって文字の壁だけが出来てしまったのだろう。

 しかし、このおかげで異なる大陸に存在しながらゴブリンというだけで、ビックホースがこの地のゴブリンとの間を取り持ってくれるのだ。デメリットがなければいいのかとも思う。


 広場から眺める昼間のベリュンヒルダは、人々の往来さえなければまさに外国の世界遺産のように心に何かを訴えかける魅力がある。というのは俺が現代人だから感じるのだろうか?


 それにしても太陽をバックにした宮殿は素晴らしかった。後光が差すようだ。

 その外壁にまで見事な彫り物がされており、その一つ一つが太陽光を反射し、または受容し、そしてその神秘性を高めている。

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