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アウトローに学ぶ異界生存戦略  作者: 沖
1章 異世界で奴隷から神官、そして魔の者への扉を開く
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アウトローに学ぶ異界.13

「余は、統一戦争を始めた殺戮者である余の国に対し、救われた恩義をこのように真摯に示すカーマ神官を尊重しよう」

 ヤンマ大王はあまりに悲哀に満ちた表情をしている。このような歳で身に着けるものではない。彼の短い人生で何があったのだろうか?

「異議はないか将軍?発言を許そう……」

「ハハッ!滅相もございません。私は大王様の決定に従います」

 イガ将軍は大王を前にする緊張からか汗を流している。いや、この汗は大王の周囲の大臣たちの不服そうな表情への緊張だろう。

 彼ら重鎮が大王の発言に対し反発を隠しているのは明白だ。それほどまでに大王を侮る。

 幼子を傀儡として仕立て上げたが上手くいかずに地団太を踏むのは、このように年齢だけ重ねたクズどもなのだと俺は自分の親と重ねて見るように嫌悪感を持った。

 俺も大概なのだが、と自嘲する。


「うむ……。ではカーマ神官よ。そなたの部族はどうなったのだ?」

「私が捕まり運ばれたのはブリュータス人の駐屯地のようで――」

 俺は出来る限り言葉を濁さず、そして嘘をつかないように慎重に言葉を選んだ。子供にまで嘘など吐くなど到底俺の自尊心が許さなかったのだ。だが、所々の点は曖昧にしている。


 タイタニス人に契約魔法で縛られ、奴隷としてブリュータス本国に売り渡される所であったこと。

 神官としての特異な点(マナなどに過敏な点、もちろんこれも嘘ではない。)からフーガ少尉に引き取られたこと。

 彼らが資源を求めて奔走していること。

 彼らの技術力の高さは、大王の治める大陸切手の大国(ヤーラカーンというらしい。)を遥かに超えていること。

 などを事細かに伝えた。


 フーガ少尉については、将校ということで取引材料とすることを提案した。出過ぎた真似だという趣旨の視線をイガ将軍から受けもしたが、ここは俺がヤーラカーン国に友好的だということを印象付けるいい機会だ。

 大王とその側近の勢力と大臣ら国家の要の勢力、どちらかに与しようなどとは考えてもいないがどうせ巻き込まれるならいい席を用意してもらいたい。と行動を決意するには十分なギスギスした空気だ。

 最も大王に近づきながら最も大王に敵対しているのが彼らだと言ってもいいだろう。それほどまでに態度は露骨であった。


 そこで俺は思い出したかのように『契約魔法』の内容が気になりだした。そもそもどれほどの効力を持つのか、またどのように破棄するのか。それらを少尉に聞かなければ今後に差し支えるかもしれない。


「聡明なる大王様においては、この度の侵略者への対策などはどうお考えでしょうか?」

 俺の質問は不敬であったのかもしれない。神職が戦争に口を出すのはタブーなのかもしれない。

 そもそも大国の主に対し、たかが一部族の神官が口出ししていい訳がない。

 だが聞かずにはいられなかった。俺は救われた。確かに救われたが、今後滅亡する国に救われても嬉しくもない。


 勝てる算段はあるのか?勝てないのだとしたら外交で平和的に被害を抑えることが出来るのか?


 やばくなったら逃げればいいといっても逃げ場所がどこにあるのかさえ分からないのだ。なるべく勝ち馬に乗って自分のしばらく安心できる居場所が欲しいというのは我儘であろうか?


 重鎮や近衛兵、将軍とは違い部外者の態度に驚くともなく、あっさりとヤンマ大王は答えた。

「分からぬ。相手と一度も話していないのだ。一方的な侵攻に対して対抗するだけで今は精一杯だ」

 うん。状況は悪いようだ。

 大国と自ら名乗るであれば、それなりの軍備も土地も人もいるのだろうがそれを相手であるブリュータス帝国が無視している。

 野蛮人と唾棄し、その技術の差を用いて制圧しようというのだろう。それに少尉の話では海を越えて来た戦力だけでも彼らを打倒すには十分なのだ。

 良くて善戦。悪くて根絶やし。


 俺がここでやるべきことが決まったようだ。

「畏れ多くも大王様、この私に捕虜を尋問する機会をお与えください」

 今度はヤンマ大王も目を見開いていた。


「たかが神官に何ができる!」

 俺と大王のやりとりに、静観を決め込んでいた重鎮たちが口々に叫びだす。

 やれ、他国のように侵略者に魂を売ったのだとか大王に媚びる浅ましい豚だなどと散々であったが、ここでもやはり気がかりが増えた。


 "他国のように"

 ヤーラカーン以外では帝国に従属した国もあるのかもしれない。そこは適当に、そこらの人に聞いても世間知らずくらいで済みそうだ。

 今知るべきことを知るために俺は一呼吸して息を整えて大臣たちの野次を遮るように大声で話しだす。

「彼らは我々とは異なる文化風習を持った者たちです。我々の常識で計り、彼らの権謀術数にかかってはいけません。なので私に考えがございます」

「ほう……。申してみよ……」


 大王が乗っかってきた。これで俺にも出来ることが増える。

 野垂れ死にだけは御免だ。見下されながらビクビク怯えて暮らすのも御免だ。

 そして、俺は素直に思った。


 異世界なんて糞食らえ。

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