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アウトローに学ぶ異界生存戦略  作者: 沖
1章 異世界で奴隷から神官、そして魔の者への扉を開く
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アウトローに学ぶ異界.10 VSゴブリン

 森の中からは弓矢やこん棒で武装したゴブリンが頭を覗かせている。

 その顔や体には何やら迷彩模様のように様々な色の塗料でペインティングがされていた。

 それに練られた香料が俺の鼻を惑わせたようだ。


 敵の数の詳細は分からないがざっと数えても両手で収まる範囲ではない。


 こん棒と木盾を持ったゴブリンが三体、先だって森からこちらを覗き込む。盾を前に構えてこちらの出方に対応できるようにしているのであろう。


「ひぇっ……!ヒッ!」

 膝をやられ地面に仰向けになった兵士が次々と放たれる矢から逃げるように足掻く。


「怯むな!たかがゴブリンだ!」

 長髪をなびかせるように兵士たちを奮い立たせる少尉は、馬上から前衛のゴブリンの一体に向けライフル銃を向ける。


 次の瞬間発砲。

 弾丸は木盾を貫通し、ゴブリンの胸に当たったようだ。


 それに続けとばかりに他の四人の兵士たちが馬上から掃射を開始した。


 次々と倒れこむゴブリンたち。兵士たちはボルトを片手で引き、空となった薬莢を排出、次弾装填と流れるようにを繰り返す。


 圧倒的な威力の銃にゴブリンたちは飛び跳ねるように逃げ回るも、ライフルにより確実に数を減らされていった。

 そして、敗走を決めた生き残ったゴブリンたちは手ごろな負傷兵を引きずり森の中へと消えていった。


 フーガ少尉は馬から降りずに、前衛をしていたため置いていかれたゴブリンに近寄り、その体を銃剣で一突きしてトドメを刺すとゴブリンを持ち上げてこちらへと戻ってきた。


「これが我々から逃げ出すための策かね?」

 冷たく俺を見下ろす。俺は何度も首を横に振り否定したがそれが簡単に認められるはずもない。


「ガーダー、怪我はどうだ……」

 少尉は負傷し馬から落ちた兵士の男、ガーダーへと声をかける。


「そんなことより少尉。へへっ、一匹生け捕りにできましたぜ」

 大量の汗をかきながらもガーダーは何やらぶつぶつと唱えている。


「そのようだな。よくやった」

 他の兵士が森に少し入り、ガーダーの魔法により体中をツタのようなもので縛り上げられたゴブリンを銃剣にひっかけて連れてきた。


 どさりと地面に放り投げられるゴブリン。その表情はとてつもなく醜く、口の端をへの字に曲げ威嚇をしている。

「ゴブリン語が話せる奴はいたか……」

 俺に対して大げさに困ったふりをする少尉。


「おお!ビックホース!お前がいたな!」

 最後尾から周囲を警戒する浅黒い肌の上半身のやけに盛り上がった男が呼ばれ、少尉の下へと馬を走らせてくる。

「奴はタイタニア人ではないが、優秀なハンターでな。貴様らのようにゴブリンとも交易のある種族出身なのだよ」


 少尉は俺を見下したまま頬を引き攣らせて笑う。俺はその間、全身の血の気が引くような思いをしながら少尉に否定をし続けた。

 ビックホースと呼ばれた男は無表情ながら、生け捕りにされたゴブリンの前で馬から降り、何やら言葉を発しているようであった。

 そしてゴブリンが吹き出し大笑いをし始めると、少尉は不愉快そうにしながらもボルトアクションライフルに弾丸を詰め始める。


「それで……、なんと言っている……?」

 フーガ少尉が声のトーンを落としながらビックホースに問いかける。俺は肝が冷やしながらその返答を待つ。


「矢に毒塗った。お前の仲間は直に死ぬ……と」

 ビックホースはそう通訳すると大笑いするゴブリンに向け、また何かを話かける。


「ガーダー……あまり動くなよ。毒が回るのが早まる」

 その言葉に頷き、ガーダーは最小限の動きで馬を引き寄せてその鞍に覆いかぶさるように乗り込んだ。


「これで少尉たちに迷惑はかけませんよ。このままキャンプ地まで一人で戻ります」

「それには及ばん」

 少尉はガーダーの提案を蹴り、ガーダーの担がれた馬の下へと寄る。


 そして、ガーダーの傷口に指を這わせ、その血と混ざった毒をすくい上げる。

 ひとしきり臭いを嗅いだ後に指先をペロッと舐めて唾を吐きだした。

「毒が塗られているようだが、これは現地の物ではないな……。ふむ、クレーマ蔓の神経毒だろう。ガーダー安心しろ。これは我々にとっては免疫のある毒だ。すぐには死なん」

「少尉……こいつはどうしましょう?」

 ビックホースはゴブリンに話しかけながらも器用に言語を使い分ける。


「何やら聞かなければならないことが多そうだ。連れて帰るぞ」

 そういうと俺に向かって吐き捨てるように言った。


「現地人の貴様がゴブリンの好む生息域を知らなかったなどとは言えんだろうな?奴等の使った毒は我々の大陸から流れた物だ。貴様らには未曽有の脅威を持った毒だろうが、治療薬ぐらいいくらでも用意できる。残念だったな」

「俺は何も知らない!知らなかったんだ!」

「そうかな?ゴブリンの習性を知っていれば、この場で無知な我々を一網打尽にし、その間に食料を持って逃げようという魂胆だったのではないのか?」

 ダメだ。少尉の中では既にシナリオが出来上がっている。俺の言葉だけで説得は出来ない。


 そして俺は来る時とは違い、少尉たちに銃を向けられながら先頭を歩く。


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