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第十二話 婿入りの提案


ビクター王子の贈り物は続き、彼自身も田舎の屋敷にしばしば訪れるようになった。


「この屋敷はすばらしい。屋敷も、庭も、とても気にいりました」


「庭は母が大事にしていたもので、今はアンリオンが大切にしてくれています」


「アンリオン?」


「はい。子供の頃からともに育った人です」


「ああ。いつもあなたのそばにいる下僕ですね」


「下僕⁉ そうではないです」


「召使でしょう」


「 いつも助けてもらっていますが、召使というのではなくて、私にとっては、兄のような存在です」


「そうですか。でも、兄でよかったです」

とビクターが笑った。


「どうしてですか」


「とても親しソうですが、兄弟とは結婚できないでしょうから」


ビクターの口から「結婚」という言葉が出たので、ローズは赤くなった。


「しかし、私は思うのですよ。あなたが結婚して、こんなすばらしい屋敷を出るなんて、もったいないことだと」


「それは、大丈夫です。父が再婚して、弟ができました。彼がソーントン家を継いでくれますから、私は好きなお方のところへ嫁いでよいと言われています」


「それはだめでしょう」


「なぜですか」


「お父上はソーントン家の婿だと聞いています。あなたの義母に生まれた弟君は、ソーントン家の血を全く引いていませんから、家の名前は残っても、血筋は途絶えてしまいます」


「それは……」


「それでよいのですか。お母さまが守ってこられた血筋をここで途絶えさせてよいのですか」


「よくはないですが」


「こういう考えはどうでしょう。私がこの家に入ります。そして、あなたと私の子供がこの家を継いでいくのです」


「そんなこと、できるのですか。あなたは王子殿下ではないですか」


「私はあなたのためなら、地位でも、何でも捨てる覚悟です」


「それは、うれしいですが、そんなことができますか」


「できますよ。幸いなことに、私は三番目の王子ですから。たとえ第一王子だったとしても、あなたのためなら、どんなことでもできます」


ビクターの優しい言葉は、ローズの心を完全に掴んだ。


ビクターが帰った後、アンリオンはひとりで庭に出た。


夜の庭は静かだった。バラが暗がりの中で輪郭だけを見せていた。リリィ夫人が愛したバラ。アンリオンが丹精に手入れをしてきたバラ。


あのビクターの言葉を、アンリオンは廊下から聞いていた。


ローズ夫人が守ってこられた血筋。


その言葉が、ローズの心のどこに刺さるかを、あの男はわかっていて言っているのではないか。この屋敷と財産を、自分のものにしたいのではないだろうか。




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