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天上の地上へ(地下世界・ロボット・戦争)  作者: 一天草莽


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04 疑似海面の空の下(4)

 二機が上空から陽動を仕掛けて、とりまの乗る一機が地底から敵の施設を襲撃する作戦が始まった。


<五六三十>

「ほほう。たったそれだけの戦力で余の前に立つというか。敵ながら、見事な覚悟よ」


 地上。

 拠点となっている研究施設の前で、仁王立ちして構える五六三十。


<五六三十>

「たとえば獅子はウサギを狩るのにも全力で臨むという。悪いがこの戦い、微塵たりとも容赦しないことをここに宣言しよう」


 右腕を敵に向かって突きつけ、通信を開いた状態で叫ぶ。


<五六三十>

「こちらから問おう! そちらに投降の意志はないか!」


 アゲハのブリッジからリーダーが返答する。


<リーダー>

「我ながら、大切な部下たちをこれほど絶望的な戦場に送り込まなければならない現実には辛いものがあるよ。だけどね、俺たちは自分の命を投げ打って、無駄死にするためにここにいるわけじゃない。命を懸けてやらねばならないもののために、ここまで来たんだ。だから引き下がるつもりはないよ!」


<五六三十>

「なるほど。たかがレジスタンスながら、実に惚れ惚れさせてくれる生き様よ……」


<リーダー>

「お願いだよ、各機出撃だ。俺たちの抵抗を思い知らせてやろう!」


<五六三十>

「いいだろう。貴様らに投降を呼びかけておりながら、この五六三十、その勇ましい答えを待っておったわ! 全軍、敵の強襲艦と機械人形二機を撃墜せよ! 戦闘開始である!」


 そして戦闘が開始された。





 一方、地底を進む坂下たち。


<宮川>

「なあ、俺たちって息吹二式とかいう巨大な人型ロボットに乗って、アゲハを出た後は地中に潜ったんだよな?」


<坂下>

「はい。そして見事に地中を進んでいますね」


<宮川>

「なんでここは地中なのに視界が良好なんだ? どうして土の中を掘り進むことなく移動できるんだ? そもそも敵ってどこの何者だ?」


<坂下>

「あはは、よかった。そういうことを疑問に思っていたのは僕だけじゃなかったんですね」


<宮川>

「ずっと虚勢を張り続けてきたが、もう大概無理だ。ついていけん」


<坂下>

「ひょっとして、ずっと無理していたんですか? 先輩は覚悟とか責任感が普通の人よりも強いんだなって思ってたというか、むしろこの状況を楽しんでいるのかと思っていましたよ」


<宮川>

「あ、そう? マジで?」


<坂下>

「本当ですよ。僕とか中上はずっと不安だったんで。だから先輩が不安がってるのは意外です」


<宮川>

「それはこっちこそ意外だな。地底の戦争に巻き込まれている実感がなくて、実は勢いだけで受け答えしてたからな」


 しばらくは戦闘もなく進む。


<坂下>

「あ、前方に何か見えます!」


<宮川>

「何か見えるって、そりゃ敵兵に決まっている。お決まりの展開だろ?」


 彼らの進行方向にいたのは大帝の防衛部隊だ。


<物語物部>

「おや、敵の反応? それも地底から? 天晴れなことに、わたくしが警護を任されたこの施設に向かって、ほとんど一直線に?」


 防衛部隊の隊長を務める物部もののべは敵の反応があった方向へと、機体の向きを変える。


<物語物部>

「確か敵は上空から来ていると連絡があったはず……っと、なるほどなるほど~、もしやこれは敵の作戦ですか。ならばしかと対応させていただきましょう。ですが、それよりもまずは敵兵発見の報告から」


 戦闘行為を始める前に本部へと連絡する。


<物語物部>

「しかし、よくこの場所を特定したものですね。あえて警備兵の人員を削減してまで、怪しさを隠したというものを。やはり目立つのでしょうか。このわたくしを含めて」


 一呼吸の間をおいて動き出す大帝の機体、一丸式いちまるしき


<物語物部>

「この物語物部、一世一代のひのき舞台に臨む所存でお相手いたそうぞ」


 しかし、その相手をする、とりまたちは冷静だ。


<宮川>

「とりま、無理に敵と戦う必要はない。隙を突いて施設を破壊してくれ」


<坂下>

「ひとまず僕は見方を教わったレーダーで敵の伏兵がいないか警戒してみます」


<宮川>

「確実に敵は援軍を呼んでいる。これは時間との勝負だろうな」


 とりま機に向かって真っすぐ突っ込んでくる敵の機体。


<宮川>

「おい、かわせるか?」


<とりま>

「……!」


<坂下>

「ぎりぎり、かすめた!」


<宮川>

「やれるもんだな、さすがだ。まるで地中を流れる石のようだ」


<坂下>

「後ろの敵、反転して追ってきます!」


<宮川>

「とりま、相手にせず突き進め。敵はどうも馬鹿らしいぜ。吹っ切れ」


<坂下>

「うわ、今更ながら撃ってきました! 最初からそうされていれば足止めを食らったかも!」


<宮川>

「しかし助かったぜ。よし、そろそろポイントだぞ!」


<坂下>

「というか、もう施設の真下に来ました!」


<宮川>

「とりま! こっから直上だ! 一気に浮上して施設の内側から全弾ぶちまけろ!」


<とりま>

「……ん!」





 爆破され、炎上する施設。薄れていく上空の膜。


<土間>

「おお、空にあった疑似海面が消えていく。あの三人のことを信じてよかったみたいだ」


<リーダー>

「そうだね。だけど彼らがこちらを信じてくれたことを、まずは感謝しなければならないよ」


<土間>

「それもそうだ。帰ったらハグしてやろう」


<リーダー>

「それより、急がないと上空の膜が完全に消えてしまうよ」


<土間>

「了解。全員、聞こえるか? 今すぐ地中に潜れ!」


 退避を始めるアゲハたち。

 それとは違って動揺しているのは、勝利を確信していた大帝軍だ。


<五六三十>

「なんだと? 我々の防衛目標だった施設が爆破されただと!」


 五六三十は驚愕のまなざしで施設を振り返り、叫ぶ。


<五六三十>

「うぐううう、ぬわああああ! ここまでか、ここまでかぁ!」


 悔しそうに空を見上げる。


<五六三十>

「やむをえん、全軍、退却だ! 死にたくなければ遅れずに地中へ潜れ!」


 思い思いの場所で地底に潜っていく大帝軍。


<五六三十>

「敵を侮ったつもりはなかったはずだ。抜かりなかったはずだ。ならば、これが天命だというのか? 我々の運命は、こんなにも閉ざされているものなのか……」


 無念さに首を横に振る五六三十。


<五六三十>

「全員無事に地下にもぐりこめたか? まさか地上に取り残され、そのまま消滅してしまった者はおるまいな!」





 アゲハは大帝の追撃を振り切って坂下たちを回収する。一時の休息。


<リーダー>

「お疲れ様」


 坂下たちを出迎えるリーダー。宮川は自嘲気味に首を振りながら答える。


<宮川>

「いいや、疲れたのはおそらく、とりまだけだ。俺たちは何もできなかった」


<坂下>

「その通りです。すっかり彼女に頼ってばかりで」


<リーダー>

「あんまりそう言わないでほしいな。リーダーである俺だって偉そうに命令するばかりで、みんなに頼っているだけの立場なんだ」


<宮川>

「どうだろうな。大学生の俺とレジスタンスのリーダーじゃ、立場と責任がぜんぜん違うだろ。そっちは胸を張っていいはずだ」


<坂下>

「そうですよ」


<リーダー>

「そうかな? なんにせよ、ここまでやれているのは、みんなのおかげだよ」


 疲れからか、ふう、とため息を漏らす。


<リーダー>

「それより、今のうちに今後のことについて話しておきたいんだけど。いいかな?」


<坂下>

「はい、なんでしょう?」


<リーダー>

「成り行きで保護することになった君たちのことだけどさ、どこかのタイミングで地上に返したいと思うんだ。残念ながら天草の地下周辺にはまだ敵がたくさんいるから近づけないけど、日本のどこかになら安全に送り届けられると思う」


<坂下>

「そうしていただけると助かります。けれど、無理に急ぐ必要はありませんよ。まだ二週間くらいは夏休みが続きますし、攻撃のせいで地上は混乱していて、夏休みが明けても学校が再開できるかはわかりませんし」


<中上>

「……そうね」


<坂下>

「それに……むしろ、僕はこのまま帰りたいとは思いません」


<リーダー>

「どういうこと? もしかして君たちも一緒に戦ってくれるってこと? 恥ずかしながら、もしそうなら本当に心強いんだ。よければぜひ高給で雇わせていただくよ。地上の人員はとても貴重なんだ」


<坂下>

「いえ。申し訳ありませんが、その申し出は断らせていただきます」


 リーダーは困惑する。


<リーダー>

「えっと、つまりどういうことなのかな? 君たちは協力してくれるの? それともやっぱり地上に戻りたいの?」


<坂下>

「協力はします。でもお金はいりません。雇われるわけじゃないんです」


<リーダー>

「どういうこと? 地底の戦争に、君たちは無償で……」


<坂下>

「だって、困っている人が目の前にいるんですからね」


 言いながら心配する目でとりまを見た後、顔をリーダーに戻す。


<坂下>

「頼りにしてください。これでも僕たちはボランティア部ですから」


<中上>

「この人、部長なんです」


<宮川>

「おいおい。一緒に巻き込まれている俺が言うことでもないが、高校生がボランティアでやるには命がけ過ぎるだろ。ボランティア軍、というのならその通りかもしれんがな」


 ともかく、こうして彼らは協力者としてアゲハに同乗することになった。

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