03 疑似海面の空の下(3)
天草の離島にある研究施設。向き合う二人の男性。
<福島>
「先ほどから不穏な空気を感じているのだが、作戦が完了するまで守ってくれるのだろうな? ここは今後も前線基地となる大事な場所なのだ」
<大帝兵士>
「安心しろ。この天草を海に沈める前、地上の協力者を使って本土からつながる橋はすべて爆破してある。これで地上の敵は援軍を送りにくくなっただろう。海と空については、地上の軍事力など我々の敵ではない。現時点で地上からの反撃らしい反撃はゼロだ。それどころか、あの擬似海面に覆われた内側が見えないとみえる」
<福島>
「しかし地上の人間は地底の人間と違って、水の膜で覆われた内側への出入りは自由なのだ。反して、そちらは擬似海面となっている膜の外側、むき出しの地上には一歩たりとも出られない。もしこの施設を破壊されてしまえば、地上への進撃もできなくなるぞ?」
<大帝兵士>
「それは誰に言われなくともわかっていることだ。太陽の光が届かない地底と深い海底でのみ生きることを許されてきた我々は、自らの手でその牢獄を広げねばならんのだからな。中途半端な覚悟では生きていない」
<福島>
「ふむ……しかし、この地を中心に九州一帯を疑似海面で覆うつもりだったが、たった一人の人柱を失うだけで、こんなにも小規模のドームになってしまうとは」
<大帝兵士>
「人工的に生み出された人柱の一人だったのだろう? 他の検体はすべて命令に忠実だというのに、あれがまさか自我をもって逃げ出してしまうとはな……。いや気にするな、さすがのあなたもこればかりは予想外だったのだろう。でなければ、あんな少女ごときを見失うわけがない」
<福島>
「うむ。……しかし前向きに考えるなら、理論を越えた成果を得られたとも言える。なにしろ理性も感情もないという想定が崩されたのだから」
研究者の男、福島は肩をすくめる。
<福島>
「無論、そのせいで逃げられた今となっては少しも嬉しくはないがね」
地底から出現した援軍のおかげで危機を脱する宮川とカイル。
<なだら>
「えっと、あのバイクにカイルが乗っているんですか? 彼の機体は?」
<チャフカ>
「事情は知らんが、初めての地上でバイクに乗ってみたかったんじゃないのか? たぶん後ろの人影だろ」
<ジュニア>
「ズームした映像確認! いるみたいですよ、みなさん!」
<なだら>
「よし、それでは行きましょうか!」
チャフカとなだらが搭乗する二機は出撃した後で左右に別れ、敵へと攻撃を開始する。
<リーダー>
「ジュニアは彼らをアゲハの機銃とミサイルで援護射撃して。同時に艦は弾幕を張りつつ一時後退しよう。土間さん、いろんなところから来る対空砲火に警戒してくださいね」
<土間>
「任せてくれ! アゲハの装甲とバリアシステムなら多少は当たっても平気だが、当たらないに越したことはない」
アゲハは弾幕を張りつつ後退する。
そして上空にて本格的な戦闘が始まる。
<カイル>
「助かったらしいのはいいが、戦闘に巻き込まれる前に安全なところまで行くぞ」
<宮川>
「わかったから空を見上げようとして身を乗り出すなよ! しっか、つかまってろ!」
戦闘から離れるため、宮川はバイクのスピードを上げて岬に向かう。
その間、しばらく続いていた戦闘はジャレス側の勝利で終わる。
<ジュニア>
「えへへ、みなさん聞こえますか! とりあえず制圧完了です! やっりました!」
<リーダー>
「みんな、ありがとう。それじゃあ、こちらに気づいた敵の援軍が到着する前にカイルを回収したい! お願い!」
<なだら>
「了解。では自分たちが周囲で警戒に当たりますので、そのままアゲハは予定通り岬に着艦してカイルを待ってください」
<土間>
「頼むぞ、なだら。それからみんなも」
<チャフカ>
「おうおう、俺たちに任せとけ。地上の世界に出たのは初めてだが、こういう状況も想定して何度だってイメージの中で訓練してきた。あとはやるだけだ」
<なだら>
「えっと、みなさん大丈夫ですよね? 勝ったと安心している時が一番危ないですよ」
<ジュニア>
「あっ、周囲への警戒は僕がやってます! アゲハの機銃は三百六十度対応型です。安心してください!」
付近に敵影がないことを確認して、合流場所の岬に着陸するアゲハ。
<宮川>
「おい、カイル。あれは?」
<カイル>
「俺たちの船、アゲハだ。周りで飛んでるロボットも乗っけられる戦闘用の強襲艦だ」
<宮川>
「ほほう」
適当な場所に停止したバイクから下りて、アゲハに向かう二人。
ハッチが開いて出迎えるのは彼らのリーダーだ。
<リーダー>
「やあ、カイル、無事だった? 襲われたようだけど死んでない?」
<カイル>
「いやいや、リーダー。生きてます。この姿を見て無事だと悟ってくださいよ」
<リーダー>
「えっ? どこが無事なのかな! ひどい怪我をしているみたいだけど!」
<カイル>
「そうでした! アドレナリンのおかげで興奮していて自分でも忘れていました!」
<リーダー>
「とにかくカイル、早く乗って。その傷、ちゃんと治療したほうがいいよ。それに今はゆっくりしている時間がない……と思う」
<カイル>
「はい、了解です、リーダー」
宮川がカイルの肩に手を乗せる。
<宮川>
「おい、カイル。悪いが、さすがに坂下たちのことが心配なんだ。ここで置き去りにされるわけにはいかない。差し支えないなら俺も乗っけてくれ」
<カイル>
「……リーダー。民間人を乗せるのは気が進まないとは思いますが、彼はここまで俺に協力してくれた仲間です。できれば事態が収拾するまで、この艦で保護していただきたいのですが」
<リーダー>
「うーん……」
アゲハが着陸してから腰を伸ばすようなストレッチをしていた土間が興味を持ったのか、即答できなかったリーダーの背後から顔を出す。
<土間>
「待て待て、誰を保護しろって? ……ふむ、実にいい男じゃないか。こき使いがいがある」
<宮川>
「乗せてもらえるなら、こき使われても平気です」
<土間>
「ふっ。冗談だ。邪魔にならないかどうか、そちらの覚悟を問うたまで。避難が必要な民間人はいくらでも丁重に保護するさ。な、リーダー?」
<リーダー>
「うーん……」
<カイル>
「リーダー、これから戦闘に向かうので難しい状況なのは理解しますが、どうかお願いします。何度か敵に捕捉されてしまった以上、彼らも俺たちの協力者として命を狙われるかもしれません。顔を知られてしまっているなら危険です」
カイルは頭を下げる。それにならって宮川も下げる。
リーダーは苦笑して答える。
<リーダー>
「まあ、カイルの頼みなら断りたくないかな。いいよ。ほんとはさ、この戦いに地上の人たちを巻き込みたくないんだけどね?」
<カイル>
「助かります!」
<宮川>
「おいおい、助かるのは俺だ。……ありがとうございます!」
<リーダー>
「いやいや、別に。それよりカイル。えっと、助けに向かった実験体の彼女は?」
リーダーは後ろを覗き込むように身を乗り出して首をかしげる。
<カイル>
「確かに発見したのですが、訳あって別行動中です」
<リーダー>
「別行動って?」
<カイル>
「言いにくいことですが、もろ戦闘中です」
<リーダー>
「……それじゃ助けに行かないとね」
<カイル>
「……助かります」
カイルは面目なさそうに頭を下げる。
依然として、たった一機で奮闘する坂下たち。
<坂下>
「後ろ、来てるよ!」
<記憶喪失の少女>
「うん!」
冷静に回避しながら機体を反転させて、背後を狙っていた敵を撃墜する。
<坂下>
「すごいな。なんか僕にも敵が止まって見える」
<中上>
「たぶん錯覚よ、それ」
少しは動きに慣れてきた気がする坂下だったが、直後に死角から敵の霊戦に背後を取られ、機体は攻撃を受ける。
<中上>
「きゃあっ!」
<坂下>
「続けざまに背後から攻撃か! やっぱ僕には敵なんて止まって見えないな!」
操縦している彼女には見えるんだろうか、と疑問に思った坂下はタイミングを見計らって記憶喪失の少女に声をかける。
<坂下>
「ねぇ、いける? 君は大丈夫?」
<記憶喪失の少女>
「……うん!」
再び反転して、反撃に出る少女。
だが敵の動きは早く、うまく追いつかない。
<中上>
「それにしても速いわね。さすがに戦闘機ってところなのかしら。あんまり詳しくないけれど、音速で飛ぶものもあるんでしょ?」
<坂下>
「あるよ……って、あ! もう一機、海から出てきたよ!」
<中上>
「あれも戦闘機よね! 海から出てきたってことは海底に基地でもあるの?」
<坂下>
「あいつらに囲まれたらピンチだ!」
<中上>
「すでに囲まれているわ! とっくにピンチって感じよ! ね、あなた、私たちは応援しかできないけど頑張って!」
<記憶喪失の少女>
「んっ!」
増援が出現してきた敵軍に翻弄され、苦戦する記憶喪失の少女。
すると、そこに戦闘機とは別の姿が現れた。
<カイル>
「よっしゃ、再びどんぴしゃで見つけたぜ!」
<リーダー>
「この状況でも一機で戦い続けていたとは、さすがにやるね」
援軍のカイルたちだ。
<中上>
「何? あれは敵じゃないみたいだけど」
<坂下>
「やった! 見て! 敵は撤退していくみたいだ!」
増援を確認した敵部隊は抵抗せず、潔く撤退する。
コックピットに通信が入る。
<リーダー>
「そこの君、聞こえているかな? この艦に収容するよ!」
<坂下>
「……だってさ」
<中上>
「……ですって」
<記憶喪失の少女>
「……うん」
乗っていたいロボットごと収容された後、アゲハのブリッジに入る坂下たち。
<カイル>
「よかった。生きて再会できたらしいな。実験体の少女は無事だったか?」
これに答える中上が、記憶喪失の少女の背を押して自分の前に立たせる。
<中上>
「はい。無事どころか、私たちが生きているのはこの子のおかげです。あれに乗った彼女は一騎当千の活躍ぶりでしたから」
<リーダー>
「それは頼もしいなぁ……。救うどころか逆に救われてしまうんじゃ、助けに来たはずのこちらの立場がなさ過ぎる気がするけどね」
横に立っていた坂下が気まずそうに会話に割って入る。
<坂下>
「あの、みなさん。ちょっといいですか?」
<カイル>
「なんだよ、どうした?」
<坂下>
「彼女のこと、実験体って呼ぶのが作戦なのかもしれませんけど、できれば今から呼び方を変えてもらってもいいですか? なんだかいい気持ちがしなくて」
<カイル>
「そうだな、別にいいぜ。けどお前、彼女の名前は知っているのか?」
<坂下>
「えっと、ちょっと待ってください。……ねえ、名前を教えてくれるかな?」
<記憶喪失の少女>
「……?」
名前を問われた少女は首をかしげる。何も答えられないようだ。
<宮川>
「うーん。やっぱり記憶喪失なんじゃないか?」
<カイル>
「そうだろうな。記憶を喪失しているというか……。坂下だっけ? お前が彼女に名前をつけてやれよ」
<坂下>
「え、僕がですか? 彼女に名前を? うーん、記憶喪失の彼女が自分のことを思い出すまでの名前ってことですよね?」
<宮川>
「そうだ。難しく考えたってしょうがないだろ。ここは直感に従ってパパッと付けてやれ。一時的とはいえ、いい名前をやれよ」
<リーダー>
「なかなかに無理を言うよね」
そう時間はかからず、ひらめいた坂下は手を打ち合わせる。
<坂下>
「……よし! とりあえずまあ、とりまちゃんで」
<カイル>
「なかなか思い切った名前だな」
<宮川>
「それでいいのか彼女にも聞いてみろよ」
<坂下>
「あ、えっと、とりまちゃん、それでいいかな?」
<とりま>
「……うん」
<宮川>
「それじゃ決まりだ」
記憶喪失の少女が嬉しそうなのを見て、宮川は満足げに頷く。
<リーダー>
「さて、それじゃあ次の作戦だけど」
<カイル>
「実験体の少女……失礼、とりまは保護しましたが?」
<リーダー>
「ということで、今から作戦はフェイズ2に移行だね」
<カイル>
「フェイズ2って、それは本気ですか?」
リーダーとカイルは二人で話し始める。
<坂下>
「えっと……」
<宮川>
「坂下、こういうとき部外者は口を挟まないほうがいい」
<坂下>
「それもそうですね」
大事な作戦会議の邪魔にならないよう、一歩下がって様子を見守る坂下たち。
すると、今まで端に立っていた大人の女性に声をかけられた。
<姉原>
「あなたたち、怪我はない?」
<坂下>
「あっ、大丈夫です。えっと、あなたは……」
<姉原>
「あたしは姉原奈々。親しみを込めて姉原さんって呼んでね。戦闘に出ることはないけど、ここで医者みたいなものをやらせてもらっているの。怪我したらいつでも世話になってね」
<カイル>
「見ての通り、俺はすでに世話になった」
声が聞こえていたのか、ちらりと顔を向けたカイルは包帯をした左腕を見せる。
それで用事が済んだのか、リーダーとの会話に戻る。
<坂下>
「ひどい怪我だったんですけど、なんとか大丈夫そうですね」
<姉原>
「私というより、地底の医療技術がすごいだけなんだけどね。ともかく、いーい? 怪我の治療だけじゃなくて生活面のサポートも仕事みたいなものだから、言ってくれればなんでも色々と世話してあげるわよ」
<坂下>
「なんでも?」
<宮川>
「落ち着け。限度はあるだろ」
<中上>
「何を想像したんだか」
<坂下>
「え、いや、何も想像してないよ。けど、ありがたいですね。たぶん今後、何かとお世話になると思いますし」
<姉原>
「ええ、ぜひ遠慮しないでね。限度は広いから」
一方、話し合いを続けていたカイルとリーダー。
<カイル>
「俺は一旦ここから後退して、こちらの体勢を整えるべきだと思うのですが」
<リーダー>
「でもさ、よく考えてみようよ。後退して体勢を整えるのは誰だと思う?」
<カイル>
「……敵である大帝、ですよね」
<リーダー>
「うん。今はまだ史上初の地上侵攻で敵も不慣れみたいだけど、それでも体制が整ったなら、敵は一国の軍隊なんだ。それを相手にしている俺たちは小規模のレジスタンス。普通に考えれば正面からは戦えないよ」
<カイル>
「そうですね。……では、かなり危険ですが、ここで勝敗を決めましょう」
<リーダー>
「よし、だったら決まりだ。それじゃあ、みんな聞いてくれるかな!」
リーダーが全員の注目を集めて作戦を説明する。
<リーダー>
「敵の拠点がある場所は、ドーム状になっている水の膜の中心だ。そこにある敵の施設を破壊すれば、上空に広がっている疑似的な海面を消すことができるはずだよ」
<カイル>
「つまり、そこを攻撃するのが作戦目標ってわけですね」
<リーダー>
「うん。……大帝は地上に侵略の拠点を作りたいらしくて、部隊の多くを地上に展開させているんだ。地底からの妨害は想定していないだろうから、地下からなら拠点を叩きやすいと思う」
<チャフカ>
「どんなに戦力をそろえていたとしても、地上の軍隊が地底を攻撃できるわけがないからな。透過技術を持っているのは地底人だけだ」
<なだら>
「地底は地底で、僕たち以外の勢力が大帝に攻撃を仕掛けるような動きもないですし」
<ジュニア>
「うん、それで行きましょう! 地上にある敵の拠点を地下から叩くんです!」
<カイル>
「とはいえ、具体的にはどう出ます?」
<リーダー>
「息吹二式の二機とこの艦で、目立つように上空から施設への陽動をかけよう。その間に、残る一機で地底から敵の拠点へ強襲して、できれば完全に破壊して欲しい。地上を包む偽りの海面が消えてしまえば、大帝も地上から撤退するしかなくなるだろうからね。そうすれば、ひとまずこの戦いは俺たちの勝利だよ」
<なだら>
「それなら息吹二式の二機には引き続き自分とチャフカが搭乗しますが、もう一機には誰が?」
<姉原>
「そばで聞いているだけのつもりだったけど、ごめん。医療担当のお姉さんから言わせてもらうと、カイルは腕が大怪我で出撃は許可できないわ」
<カイル>
「なんとか出血は止まりましたけどね」
<姉原>
「戦ってる衝撃で傷が開いたら次こそ死んでもおかしくないから」
<リーダー>
「そっか。となると、残る一機のパイロットはとりまに頼みたいね。そのアシストは……うん、正直に言わせてもらえれば誰でもいいんだけど……」
そう言いながらも坂下を見たリーダーだったが、彼よりも先に宮川が名乗り出た。
<宮川>
「それなら俺と坂下が行こう」
<坂下>
「……え、僕も?」
<土間>
「基本的に息吹二式は二人乗りの機体ですが、先ほども三人で搭乗していたのでしょう? 後ろに二人乗れないこともない。自分は彼らなら別にいいと思いますが」
<坂下>
「いつの間にやら、ありがたい信頼だ……」
<カイル>
「俺からも頼むよ。パイロットは慢性的に不足しているんだ。実験体として大帝に調整されているとりまを一人で行かせるわけにはいかないだろ?」
<坂下>
「とりまちゃんを一人で……」
坂下はとりまを見る。彼女はすがるような目で坂下を見ていた。
具体的に何かを言われたわけではないが、彼女にすべてを任せて自分だけが逃げるのは違う気がした坂下だ。
<坂下>
「……わかりました」
<宮川>
「よし、じゃあ決まりだ」
<リーダー>
「ありがとう」
<チャフカ>
「頑張れよ。訓練していない素人を行かせるのは不安だが、とにかく頑張れよ」
<ジュニア>
「僕たち、仲間として期待してますからね!」
<坂下>
「あはは……」
ひとまず話はまとまったとみて、リーダーがとりまを見る。
<リーダー>
「それでね、それぞれの作戦担当だけど、地下から敵施設を強襲するのはとりまたちに任せたいんだ」
これに驚いたのは一緒に乗ることになった坂下だ。
<坂下>
「えっ? 地下からの強襲を? そんな重要な任務を僕たちがですか?」
<リーダー>
「確かに重要だけど、地下のほうが敵は少ないんだ。地上侵攻が始まっている分、上空での陽動のほうがはるかに危険だと思うよ。間違いなく激戦になるからね」
<宮川>
「そういうことだ。お前だって、たかがボランティアで死にたくはないだろ? ……正規軍ではないからボランティア軍であることは間違いないかもしれないが」
<坂下>
「ぐぬぬ、わかりました! こうなったら行きましょう!」
<リーダー>
「うん。それじゃみんな、作戦開始だ!」
おー! とみんなが答える中、不安を隠せずにいる坂下に中上が近づいて、その腕をつかんだ。
<中上>
「死なないでね」
<坂下>
「うん。……いや、そんなに強くつかんだら痛いって」
<中上>
「さっきの仕返し」
<坂下>
「さっきのって……ああ、あのときか。それなら後ろから抱き締めてくれれば……って、うっ。ほんとにやらなくても」
ふざけているわけでもなく、中上は背中に顔をうずめながら伝える。
<中上>
「坂下、死なないでね」
<坂下>
「……うん」




