第六十八話 グランゼル王国の砦
騎士たちを圧倒したゴーレムが、静かに佇んでいる。
先ほどの戦闘では“デストロイモード”をまざまざと見せつけ、あの偉そうな指揮官まで一瞬で吹っ飛ばしたんだから、大したもんだ。
俺やウルフが手出しする余地もなかったほどに圧倒的だぜ。
「よくやったな、ゴーレム!」
俺が声をかけると、ウルフが「ガウガウ!」と飛び跳ねながら吠える。
ミナギさんも感嘆の声を漏らした。
「すごい……あの騎士たちを一掃するなんて、やはり古代の技術は素晴らしいですね」
ゴーレムはモノアイをわずかに光らせるだけで、いつも通りの無表情。
けど、俺にはちょっと戸惑ってるように見える……案外かわいいやつだな、お前。
「なんだ? もしかして照れてるのか?」
無反応なようでいて、モノアイの光が微妙に揺れてる気がする。
こいつなりに照れてんだろうか……謎だ。
しかし、安心するのはまだ早い。
俺は周囲を警戒しながら、
「油断は禁物だ」
とボソッと呟く。するとミナギさんも真剣な顔つきで頷いた。
「そうですね。彼らは前衛部隊に過ぎません。まだ他にも部隊がいる可能性が高いです」
頭の片隅には、彼女の研究所で聞かされたデータが浮かぶ。
グランゼル王国は広範囲を制圧している軍事国家らしく、この森へ投入している兵士の数や規模も不明だ。
あの騎士たちは先遣隊かもしれない。
ミナギさんの研究所では、戦闘記録や兵器の配置図など、歴史書からの抜粋がファイリングされてた。
そこには「一部隊が潰されても、上層部はさらに大部隊を差し向ける」なんて怖い記述があったのを思い出す。
「次にどこからどう襲ってくるか……」
考え込んでいると、ふとある名案が浮かんだ。
「よし、いいことを思いついた!」
ウルフが「ガウ?」と首をかしげる。
俺は周囲を見渡し、一人だけ地面に倒れたままの騎士を発見する。
視線を巡らせると、一人の騎士が地面に倒れ、気絶している。
どうやら逃げ遅れたらしい。幸運なのか不運なのか……。
「こいつを使わせてもらおう」
俺はそっと近づき、騎士の肩を軽く叩いてみる。
「おい、起きろ」
「……っ!?」
騎士が目を覚まし、自分の状況を把握した途端、慌てて起き上がる。
顔には恐怖がにじんでる。そりゃゴーレムがあれだけ暴れりゃ誰だって怖いわな。
「お前……なにを……!」
「別に何もしねえよ。逃がしてやるから、好きなとこに行け」
「な……?」
騎士は唖然とした表情だが、ゴーレムがズシンと足を踏みしめ、拳を握りしめる音が聞こえるや否や、真っ青になって後ずさる。
「……っ!」
言葉も出ないまま、騎士は背を向けて全力で逃げ出した。
そりゃそうだろう。
俺はその背中を見送ってから、ニヤリと笑う。
「よし、追いかけるぞ!」
「なるほど、さすがソータさんです!」
ミナギさんが微笑む。
「おう! ウルフ、行くぞ!」
「ガウ!」
ウルフが走り出す。
俺たちは騎士が走り去った方向をこっそり追う。
さすがにゴーレムはデカすぎて音を立てるから、ゆっくりと距離を置いてついてきてもらう作戦だ。
「ゴーレム、お前はゆっくり来い。俺たちが場所を確保したら呼ぶからさ」
ゴーレムが静かに頷く(ように見える)。モノアイがわずかに赤く点滅してるし、まだ戦闘モードの名残があるんだろうか……。
しばらく森の中を進むと、視界がパアッと開けた。
「ここが……」
目の前に広がるのは、グランゼル王国が築いたであろう巨大な砦。
石造りの分厚い城壁がそびえ立ち、槍が並ぶ防壁が周囲を囲んでいる。
上部には見張り台が幾つも見え、弓兵が配置されてるっぽい。
中央には広い訓練場があり、騎士たちがバタバタ動き回ってる姿が見える。
武器の手入れをしてる者や、何やら物資を搬入してる者など、まさに要塞化してるって感じだ。
「これは……手ごわそうですね」
ミナギさんが低く呟く。
確かに、ここを崩さなきゃ森の侵略は止まらないだろう。ログハウスどころじゃない大ピンチじゃん。
「ですが、ここを破壊すれば、さすがに侵略は諦めるでしょう」
ミナギさんが力強く言う。
俺は砦を見上げながら、「さて……どう攻めるか……」と考え込む。
ウルフが「ガウ?」と首をかしげてるけど、さすがに俺もこんなデカい砦に突っ込む勇気はまだ湧かない。
そうだ、ミナギさんの研究所には何か砦攻略につながる情報はないか……?
「次は私の出番ですね」
スッとミナギさんが魔導ステッキを掲げる。その瞳は、揺るぎない意志に満ちてる。
え? ミナギさんが頑張っちゃうの??




