第六十七話 デストロイモードの実力
ゴーレムがずしん、ずしんと重々しい足音を響かせながら、騎士たちの前衛キャンプに向かっていく。
まるで巨大な岩が歩いているような光景に、俺は思わずごくりと唾を飲み込んだ。
ホントに大丈夫なのかよ、赤いバッテリーでパワーアップしたからって、見た目はいつもと変わらないじゃん?
「ほ、本当に大丈夫なのかよ……」
俺はこっそりと茂みの影からその様子を見守る。
ウルフが「ガウガウ!」と鼻先を低く構え、戦闘態勢に入ってるっぽい。
ミナギさんも同じく身を低くし、静かに観察していた。
正直、心の中では「戦闘モードって言う割に色合いも形も同じじゃん!」ってツッコミたい気持ちが渦巻いてるが、今は黙っておこう。
ヤツの本領はこれから、かもしれないし……!
ミナギさんいわく「見た目は変化しないケースもあるが、内部で戦闘形態へのスイッチが入る可能性がある」とのこと。
うーん、半信半疑だったけど、今こそその威力を発揮してくれるかも……!
騎士たちは最初、ゴーレムの接近に気づかなかったようだ。
キャンプの灯りがゆらめく中、木を切ったり装備を点検したりしてるけど、巨大な影がじわじわ迫ってることに疎い。
「……なんだ? あれは……?」
やがてゴーレムの姿がキャンプの灯りに照らされ始めると、ようやく異変に気づいたらしい。甲冑を身にまとった兵士が警戒の声を上げ、武器を構えだす。
ところが、最初は余裕を見せてる奴もいる。
「石像……じゃないか?」
「なんだ、脅しか? 俺たちを攻撃しようってのか? 石像野郎!」
……石像野郎呼ばわり。
そいつら、痛い目見るぞ……。
ゴーレムがゆっくりと拳を握った瞬間、空気がピリッと変わった。
まさに“モード:デストロイ”が起動しつつある雰囲気?
「てはじめにこいつを粉々にするんだ!」
剣を抜いた騎士の一人が号令をかけ、ゴーレムへと突撃する。
ウルフが「ガウ!」と吠えて「やばい、こっち来るぞ」みたいな顔をするが、ゴーレムは動じない。
ミナギさんが隣で「落ち着いて見てみましょう」と小声で言う。
……そうは言っても俺のドキドキが止まらん。
「ハッ!」
騎士の一人がゴーレムの足元に回り込み、鋭い剣撃を繰り出す……が、
「ガキィィィン!!」
ものすごい金属音が響き、剣はゴーレムの脚に弾かれてしまった。
ああ、やっぱりゴーレム装甲ハンパねえ。
「なにっ!?」
驚愕する騎士に対し、ゴーレムは足を振り上げると、ドシュッと蹴りを放つ。
「ぐっ……があああ!!」
騎士は宙を舞い、近くの木に叩きつけられて気絶。
うわ、やっぱえげつねえ……そりゃ名前が“デストロイモード”だしな。
「チッ! 正面からじゃダメだ、横から攻めるぞ!」
槍を持った二人の騎士が左右からゴーレムに攻撃を仕掛ける。
連携して挟み撃ちにしようってわけだ。なるほど、そりゃそこそこ頭使ってる……。
「これなら……!」
しかし、ゴーレムは素早く腕を振り上げ、地面に拳をガンと叩きつける。
「ゴゴゴゴッ!!」
衝撃波が発生し、槍兵たちはバランスを崩す。
その隙にゴーレムの巨大な手が槍を持った騎士をひょいと掴み、軽々と放り投げる。
「ぎゃああああ!」
投げ飛ばされた騎士は、そのまま地面に激突して動かなくなる。
隣の槍兵も「ヒィ……!」と後ずさりし、戦意喪失っぽい。
赤バッテリーおそるべし。
「こいつ、近接戦闘が得意なら……遠距離から撃てばいい!」
槍兵の失敗を見て、弓兵が距離を取る。
そして矢をつがえて一気に射放つ。
「シュバッ! シュバッ!」
矢がゴーレムめがけて複数本飛んだが、ゴーレムは腕を持ち上げ硬質な装甲で矢をすべて弾き飛ばす。
矢がピョンピョン跳ね返って地面に刺さる様子が、むしろギャグみたいで怖い。
「クソッ……こんなのアリかよ!」
動揺した弓兵が次の矢をつがえると、ゴーレムのモノアイがギラリと赤く輝く。
「ゴゴゴ……!!」
ゴーレムの腕がズバッと伸びたように展開し、一気に弓兵へ振り下ろされる。
「うわあああっ!!」
弓兵は衝撃で吹き飛ばされ、意識を失った。
周囲の騎士たちも思わず「あんな化け物勝てるか……」という顔をして後ずさる。
「……こいつ、ただの魔導ゴーレムじゃないな」
騎士の指揮官らしき男が剣を構え、スッと身を低くして構えをとる。
やたら装飾の多い甲冑を着ていて、士官クラスであることは間違いない。
さすがにカッコいい雰囲気……。
「ならば、俺が――」
指揮官が言いかけるも、ゴーレムは即座に踏み込み、拳をズドンと突き出す。
「ズドン!!」
衝撃波が発生し、指揮官はガードする間もなく地面をゴロゴロ転がる。
すげえ、一瞬で決着……!
指揮官が必死に咳き込みながら立ち上がろうとするが、ゴーレムの足が彼の目の前にドシンと突き立てられ、モノアイがじわりと光を増す。
威圧感やばすぎ。
「っ……に、にげろ!!」
指揮官が絶叫すると、残っていた騎士たちは次々に撤退を始める。
ああ、もうパニックだ。こっちをチラ見しつつ逃げていく兵士の顔が、絶望って感じ。
「す、すげえ……」
俺はゴーレムの圧倒的な戦闘力に呆然とする。
最初は「見た目変わらんし本当に戦闘モード?」と疑ってたが、蓋を開けたらこの強さ。
そりゃ騎士ども瞬殺も納得だ。
「こんな騎士たちが、ほぼ瞬殺……」
ウルフが「ガウ!」と嬉しそうに飛び跳ね、ミナギさんは感心したように腕を組んで頷く。
「やはり、赤いバッテリーは伊達ではありませんね」
それを聞きつつ、俺はゴーレムを見上げて新たな確信を抱く。
こいつがいれば、本当に森を守れるかもしれない……!




