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第六十五話 赤い魔導バッテリーゲット

研究所の倉庫に連れていかれた俺。


天井が高く、壁際には無数の棚や箱がうず高く積まれ、遠目に見るとまるで倉庫の迷宮みたいだ。


古びた巻物から怪しい魔導部品まで雑多に置かれていて、正直探し物を見つけるのは至難の業に思える。


「このどこかに魔導バッテリーが……」


「ええ、おそらくは」


ミナギさんが答える。


それにしても、よくこんなにため込んだな……。すごい量だぜ。


「じゃあ、さっそく探させてもらいます」


「私もお手伝いしますね」


「あ、助かります!」


俺はさっそく、付近の箱をゴソゴソ開けながら、探し始める。


ウルフが「ガウガウ!」と床をクンクン嗅ぎ回り、何か面白い匂いでも見つけたのか、しっぽを振ってる。


一方、ミナギさんは冷静な表情で棚を順番にチェックしてる。


彼女の手には小さな魔導スキャナーみたいな道具が握られていて、ピピッと小さな光を出しながら探しているようだ。


それ、いいな……。


俺にも貸してほしかった。


「しかし、すごいな……まさに魔導研究者の倉庫って感じだな」


俺はボヤきつつも、中には歯車や水晶コア、ミスティックメジャー(魔力測定器?)など珍しいものが目白押し。


棚の一角には巨大なシルエット……あれは半壊れの魔導装置らしいが、埃が積もってよくわからない。


ウルフが「ガウ?」とその装置を鼻でツンツンしそうになったので、慌てて止める。下手に触ると爆発するかも……。


「ないな……これも違う、これも古びた魔導部品か……」


次々と箱を開けても、出てくるのは錆びた金属片や謎の結晶、古代文字のメモ帳などなど、バッテリーとは違うものばかり。


時間だけがどんどん過ぎていく。


俺の背中からはじっとり汗が滲み出るし、埃を吸い込んでクシャミが出そうだ。


ウルフは興味津々であちこち嗅ぎ回ってるけど、役に立ってるかどうか微妙。


「これだけ探しても見つからないってことは、もうないのか……?」


思わず呟いて肩を落としかけたとき――


「ん? これ……?」


奥の棚の端、ずいぶん埃をかぶった木箱の中に、周囲とは違う光を放つ物体が一つだけポツンと入っているではないか。


「おおっ!!」


そっと取り出してみると、間違いなく魔導バッテリーっぽい形状。


ただし見慣れた青いヤツとはどこか違う。周囲に装飾が施されていて、表面には古代文字の刻印がくっきり。


まるで高級感すら漂わせる。


「俺が知ってるバッテリーとはちょっと違うな……ミナギさん、これって……?」


ミナギさんがそれをじっくり観察してから頷く。


「はい。これです。一つ、どうやら残っていましたね」


「助かった! ……って、ん? なんかカラーリングが赤いんだけど?」


俺がマジマジと眺めると、確かに赤みを帯びていて微かな光が脈打つように反射している。通常の青いバッテリーとは雰囲気が全然違う。


「ええ、ゴーレムのバッテリーはカラーリングによって用途が異なります」


ミナギさんが指を一本立て、説明を始める。その横にはバッテリー用途別一覧みたいな古い紙が貼ってあり、そこには緑・青・赤などの区分がラフに書かれている。


「緑は野良仕事、青は学術仕事、赤は戦闘仕事、といったように、それぞれの用途に応じたバッテリーが存在します」


「なるほど、前に俺が見つけたのは青だったんだな。なのに野良仕事ばかりさせてしまったような……」


ふむふむ、だから肉体労働させてるときにゴーレムがしょっちゅう疲れてたのかもしれない。


「ええ。そして、この赤いバッテリーは……」


「……つまり?」


「ゴーレムを戦闘形態にすることができます」


「おおお……!」


思わず拳を握りしめる。


真っ赤なバッテリー……これがあれば騎士たちにも対抗できるかもしれない。うちのゴーレムがパワーアップするってわけか。


ウルフが「ガウガウ!」と興奮しながら跳ね回る。やっぱりお前も嬉しいのか?


「よし! これで騎士どもを撃退できそうだな。いやー、ありがてえミナギさん!」


ミナギさんが微笑みながら、バッテリーをそっと俺に手渡す。


その丁寧さからして、やっぱり貴重品なんだろう。


「さあ、ゴーレムのところに戻り、試してみましょう」


「よっしゃ、行くぞ!」


俺は勢いよくバッテリーを抱え、ウルフを従えて倉庫を後にする。


とはいえ、このバッテリーが本当に動くかも未知数だし、ゴーレムが戦闘形態になったらどうなるのかも分からない。


それでも期待で胸が膨らむなあ。


森を守るための一歩だし、スローライフを奪われたままじゃ悔しいもんな。


さあ、ゴーレムのもとへ急げ……俺はそんな高揚感に駆られて研究所の扉を勢いよく開け放つ。


ウルフも「ガウガウ!」と尻尾を振りながらついてきた。


後ろでミナギさんがクスクス笑いつつ「落ち着いてくださいね」と言ってるのが聞こえてくる。


倉庫を出る前に、ちらっと見えた計測器や魔導ログの山など、いろいろ気になるものがあった。


この研究所、意外とまだまだお宝が詰まってそうだ。例えば――


魔力波形計:ゴーレムが起動したときの魔力消費を記録できるらしい。


古代文字解析ソフト(魔導版):自動翻訳っぽい機能を持つ端末で、バッテリーの銘文とか読めるとか。


魔導ログ:過去のゴーレム運用データや実験記録が書かれた分厚い書物。カラーの挿絵まであってわかりやすそう。


「あとで落ち着いたら、これらをもうちょい見せてもらおう……」


一旦バッテリーを抱えたまま、そんな風に心の中で思う。


「ゴーレム、お前が戦闘形態になれるなら、すげー頼りになるぞ。頼むから大暴れしすぎて森を壊さないでくれよ」


ウルフが「ガウガウ!」と笑うように吠え、俺は破顔する。


ミナギさんも後ろからクスクス笑い声で「ふふ、そうですね」と同意。


燃え上がるような不安と期待を抱えつつ、俺たちはゴーレムのもとへ急ぐ。

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