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第六十話 謎の巫女さん

南東の森へ向かって、俺はウルフと共に歩みを進めた。


騎士たちの襲撃があったあと、エルフ村や洞窟村に寄ろうかとも思ったが、時間が惜しい。


まずはこの森の奥へ行って、魔導掘削機の謎を追うのが最優先だ。


それに、騎士たちによれば、この森の人間以外のどうぶつたちに、今すぐ危害を加えるようなことはしないニュアンスのことを喋っていた。


やはり、同種族である人間の俺を警戒しているんだろう。


だとしたら、まだ猶予はある。



もしあの魔導装置を操れるなら、あるいは新たなバッテリーを発掘できるなら、ゴーレムを復活させられるかもしれない。


森を守るための大きな手段になるかも……そんな思いで、俺はひたすら足を進める。


「よし、急ぐぞ、ウルフ」


ウルフが「ガウ!」と元気よく吠え、俺の横をぴったり歩く。


心強いったらないけど、騎士たちがまだ森をうろついているかもしれないし、気は抜けない。


頭の中では、あの騎士が言っていた“戦争”って言葉が何度もリフレインする。


だけど、考えすぎても仕方がない。いまは“この謎”を追う方が先決だ……。


幸い、南東の森までの道のりは、今回はかなりスムーズだった。


前回のように、殺人バチに遭遇することもなく、崖の辺りまで進むことができた。


そうしてしばらく森の奥を進んでいると、耳慣れた低い振動音が微かに聞こえてくる。


ブゥゥン……とかゴゴゴ……みたいな感じで、地面が振動してるような感触が伝わってくるんだ。


ん!?


まさか、また魔導掘削機が動いてる!?


「誰が動かしてるんだ……!?」


この調子だと、ミートラットが逃げ出してしまうじゃないか。


洞窟村のみんなが、また不安になってるんじゃないだろうか……。


そう思いながら、掘削機に近づいていく。


ウルフが「ガウ?」と首をかしげ、俺も周囲の様子を窺いながら木々の影からそっと覗き込む。すると――そこには一人の少女がいた。


その少女は、長い袖の着物のような装束を纏い、巫女装束っぽい衣を着ている。


額には美しい髪飾りをつけ、手には細長い杖……まるで魔法少女の持つステッキみたいだ。


その姿は神秘的というか、すぐにでも「はい、ご利益どうぞ」と言ってきそうな巫女的雰囲気。


だけど、こちらの気配に気づいたのか、ピクッと反応して鋭い視線を向けてきた。


「……っ!!」


ばっちり目が合った瞬間、彼女は杖を振り上げる。


ちょ、ちょっと待て、なんで攻撃態勢!?


「何者……!」


巫女の声が凛として響くと、空気が急激にピリッと張り詰める。


やばい!! ウルフも「ガウッ!」と一歩下がり、俺は思わず身構える。


「うおおっ!? まじで攻撃する気かよ!」


次の瞬間、杖から魔法陣が浮かび上がり、ビシュッと光弾が飛んでくる。


俺は咄嗟に身をひねって地面にゴロリと転がり、かろうじて回避。


うわあ、危ねえ!


「ちょっ!? 話を——ってうわああ!」


さらにもう一発。


あぶなー! マジで殺されかけてる。


「待て! 俺は怪しいもんじゃない!!」


「その言葉が一番怪しい!」


たしかに!!


反論できない!


てか、あの杖、なんなの!? この世界、魔法があるの!?


巫女が容赦なく二発目、三発目と魔法弾を放ち、ビームみたいのがバシュンバシュンッと俺の横をかすめる。


ぎゃああああ! すげー怖い!


俺は必死にかわしつつ、地面を転がり回りながら叫ぶ。


「いやいやいや!! ちょっと待って! 俺はただの……えーっと、行商人!!」


「行商人が魔導掘削機を覗き込むものですか!」


そりゃあ、言われてみれば怪しいけど、俺だって何かの手がかりが欲しいんだよ……!


「たまたま、偶然通りかかっただけです! かっこいい装置だなぁ〜〜って……!!」


「黙りなさい!」


巫女が杖をさらに振りかざそうとする。


このままじゃやられる!!


もうだめだ!!


悲鳴をあげかけた瞬間――


「ガウッ!」


ウルフが俺の前にさっと飛び出し、尾を振りながら警戒と友好の間を取るような仕草を見せる。


攻撃的ではなく、ただ存在をアピールしてる感じだ。


巫女が「……?」と首を傾げ、少し動きを止める。


彼女の視線がウルフに注がれ、怪訝そうな表情になったのがわかる。


「この狼……あなたになついているのですか?」


「えっ……あ、ああ! 俺の相棒だけど!!」


息も絶え絶えに反論すると、巫女はしばらく考え込んだ後、フゥッと長い息をつく。


それから魔導ステッキを下ろし、ゆっくり警戒を解くように見えた。


「……いいでしょう。少なくとも、あなたは敵ではなさそうですね」


どうやらウルフの存在が、なぜかこの巫女ちゃんにプラスに作用したらしい。


結果オーライ。


助かった……!


「あ、ありがてえ……」


俺が安堵の笑みを浮かべると、巫女は今度はじっとこちらを見つめてくる。


その瞳が想像以上に神秘的で、こっちが気後れするレベルだ。


「私はこの森で古代文明を研究している者です。あなたに興味があります」


「俺に?」


「ええ……このヘッジホッグ・ウルフは、絶対に人間にはなつかないと有名な種族です。なのにあなたには懐いている……興味深いです」


そうなの? 単に餌付けしただけだけど……。


まさか、クソ女神の影響がちょっとあったりとかするのかな??


巫女はしばらく考え込んでから静かに頷き、手招きをする。


「私の研究所へ来てください。もう少し話をしましょう」


「マジか、いきなり信用してくれるの?」


「……信用はしていません。ただ、あなたのその風貌も含め、情報収集の価値あり、と感じました」


とにかく、こうして俺は巫女が管理しているらしい“研究所”へと招かれる運びになった。


最初に殺されかけたことを思うと複雑だけど、未知の魔導掘削機のこともあるし、ここはチャンスかもしれない。


「あ、その前に……できれば、この掘削機、スイッチ止めてもいい?」

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