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第五十六話 最高のスローライフに訪れた危機

貿易を始めてからというもの、俺のログハウスはますます賑わいを見せるようになった。


エルフ村や洞窟村、さらには狐の行商人カグラまで頻繁に訪れては、ここを拠点に商品を売買したり、雑談したりしていく。


いやぁ、まさか自分がこんな“大商人”っぽい立ち位置になるとは、正直想像してなかったな。


「すっかり拠点って感じだな……!」


そんなふうに頬を緩めてると、ウルフが「ガウガウ!」と嬉しそうに吠え、ゴーレムが黙々と倉庫スペースを整理している。


もうこの光景が日常なのかと思うと、頬がゆるみっぱなしだ。


ログハウスを建てた当初は、「とりあえず雨風しのげればOK」くらいの気持ちだったのに、今やまるで小さな城のようになっている。具体的にはこんな感じだ。


リビング:広々とした木造の部屋に大きなテーブルと椅子をドカンと配置。エルフ村の木工職人が作ってくれた家具で統一して、森のぬくもり満載。ここでみんなが集まってワイワイするのが日課だ。


キッチン:洞窟村の石材で組んだかまどがドーンと鎮座し、エルフ村から仕入れた調理器具もズラリ。ぶっちゃけ地球製の便利アイテムも混ざってて、異世界+科学のハイブリッドキッチンになりつつある。


食器:ショップ機能で取り寄せた地球製の皿やコップ、エルフ特産の陶器と混ざってカオス状態。でも見た目はそこそこオシャレ? 俺は細かいこと気にしない派なんで、賑やかならOK。


ベッド:エルフ村の上質な木材フレームに、洞窟村の柔らかいドラゴン布を合わせた最高の寝具。俺の疲れを一瞬で癒やしてくれる極上の寝心地なんだ。いやマジで、ここで永遠に寝てたい。


風呂:ログハウス横に設置した水風呂がちょっとした自慢。水車を利用して川の水を循環させ、いつでも冷たい湯……じゃなくて水に入れる。冬は寒いけど、暑い日には天国だ。


倉庫:交易品や食糧を保管する専用スペース。魔法の保存庫を導入して温度管理もバッチリだから、【収納】指定ない魚とか肉も長持ちする。ウルフが勝手に食べたりしないように鍵かけてるが、ゴーレムが警備っぽく立ってくれてるから安心だ。


水車:動力源として大活躍。粉ひきや浄水装置として使えるうえ、風呂の循環にも流用してる。今度は発電機に応用したいと思ってるんだよな。


こんな感じで設備を追加しまくってたら、いつの間にか「小さな城」どころか「小さなテーマパーク」みたいになりつつある。


「こんな生活、マジで理想だな」


ウルフはリビングの床にゴロンと寝転がって、ゴーレムは静かにたたずむ。


もうこの光景だけで幸せ。


貿易も順調に進み、俺の所持金はなんと1000万クルナを突破。


100万クルナでも十分驚いたけど、今やその10倍に到達したってわけだ。


「1000万クルナか……この調子なら30億も夢じゃないか?」


ウルフが「ガウガウ!」とまるで「やったぜ!」と言ってる風。


ゴーレムはモノアイをチカチカさせてる(喜びの表現?)。


いや、もちろん30億円クルナ返済にはまだ遠いけど、貯まれば設備投資だってできる。


例えばネットショップで購入した発電機とかがあれば、夜でもガンガン明かりをつけられるし、レジだって電動化できちゃうかもしれない。


「夜でもピカピカのログハウス! 最高じゃん!!」


テンション爆上がりでリビングをウロウロ。


ウルフはそんな俺の姿を見て「ガウ?」と笑ってる気がする。


ゴーレムは相変わらず無表情だけど、俺は勝手に“エールを送ってる”と解釈。


思わず「うおおおお!!」と叫びながら、ベッドへダイブ。


ふかふか布団の感触で幸せがさらに倍増し、うとうとと寝落ちしかける。


ほんとにこの世界、色んな意味で最高だぜ……。


しかし、その夜。


何かが鼻をつんと刺すような焦げ臭い匂いで目が覚める。


最初は「あれ、かまどに炭でも残ってんの?」くらいに思ったけど、だんだん鼻がヒリヒリしてくる。


「ん……? なんだ、この匂い……?」


ウルフも「ガウガウッ!」と慌てた声をあげ、ベッド脇から勢いよく飛び出していく。


どうやら相当ヤバい状況? 俺も急いで身体を起こして、寝ぼけ眼をこする。


「まさか……!!」


直感が何かを訴えかける。


急いでドアを開けて外へ飛び出す。


ゴーレムはもう先に出てるのか、見当たらない。外


から赤っぽい光が漏れてる気がして、胸がぎゅっと締まる。


外に出た瞬間、眼前に広がる光景に言葉を失った。


「……うそだろ……」


俺の大切なログハウスが、真っ赤な炎に包まれてる。


ドォォッという炎の音と、木材がバチバチ爆ぜる音で辺りは騒然。


夜空までオレンジ色に染まってしまうほど燃え上がってるじゃねえか……。


「うおおおおおおおおお!!」


思わず絶叫。


熱波がビリビリ肌を刺すし、煙がゴホゴホと喉を焼く。


ここまで勢い良く燃えると、とても近寄れない。


ウルフが「ガウガウ!」と吠えながら走り回り、ゴーレムはゴトゴトと動き回ってるけど、消火できるのかこんなの……!?


「これ……どうすれば……!!?」


人生最大の絶望感が全身を包み、頭が真っ白になる。


せっかく夢見て貿易を軌道に乗せて、ログハウスだって改良し続けてきたのに、あっという間に炎で飲み込まれちまうなんて……あり得ない、認めたくない!


ウルフが「ガウガウ!」と俺を振り返り、ゴーレムは炎の近くで何かしようとしてるのか、モノアイが赤く光っている。


もしかして火消し手伝い? でも正直、この規模じゃ……。


どうしようもなく視界が歪んで、心の中で「終わった……」と呟いてしまう。


ロマンの塊だったマイホームが、轟々と燃え尽きていく光景ほど悲しいものはない。


俺はただその場に立ち尽くし、焼けつくような熱風に耐えながら、炎の海と化した拠点を見つめ続ける。


こうして俺のスローライフは、まさかの大ピンチを迎えることになった――。



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