第五十五話 順調なログハウス交易生活
貿易を始めてからというもの、俺のログハウスはまるで交易の中心地になりつつあった。
小川のほとりに建てたばかりのログハウス……最初は「スローライフを送るための拠点」くらいにしか思ってなかったのに、いまや村と村を結ぶ要になってるなんて、人生わからないもんだな。
「ふう……これで今日の分の在庫は整理完了っと」
俺は木製の棚に並べた荷物を眺めながら、雑貨リストをチェックする。
エルフ村や洞窟村から仕入れたもの、逆に売り出すために加工したものなど、バリエーションがどんどん増えている。
ウルフが「ガウガウ!」と吠えて、ログハウスのドアを鼻先で押す。
どうやら外に誰か来たらしい。
ゴーレムは黙々と荷物を確認しつつ、時々「ゴゴ……」と低い音を出してる。
エルフ村と洞窟村、それぞれの特産品や商材、加工品がこの拠点に一度集められる。
そこから俺やカグラ、あるいはエルフやドラゴンの住民が持ち運んでいくというスタイルを目指している。
まさに“小さな倉庫”兼“商店”みたいな感じだ。
これがなかったら毎回大量の荷物をあっちこっちへ移動するハメになってたかと思うと、ログハウスを建てて正解だったなあ。
もちろん【ショップ】の【収納】機能があるとはいえ、一人だと限界がある。
この拠点があるだけで、効率が圧倒的に変わったのだった。
「ウルフ、こっちの箱、エルフ村行きだから間違えないでくれよ?」
ウルフは「ガウッ!」と尻尾を振って箱の匂いをクンクン嗅ぐ。
どうやらその中身はハーブや香草らしい。ゴーレムは黙々と石材のブロックを外に運んでいく。
俺は「ああ……これならスローライフしながらも商売うまくいきそうだ」とニヤけが止まらない。
俺の狙い通り、エルフ村や洞窟村の住民が俺のログハウスまで足を運んで、ここで商品を購入してくれるようになった。
本当に軽い屋台感覚で立ち寄る人もいれば、ドラゴンがまとめ買いしていくこともある。
中にはウルフを見て「かわいい!」って撫でて帰る人もいるし、なんて平和でいい世界なんだ。
「まあまあ、旅人さん♪ 今日も素敵な商品を用意しましたわよ!」
例によって、狐の行商人カグラも定期的にやってくる。
今日も相変わらず大きな荷物を担いでニコニコしてるが、あれ絶対なかには高額アイテムが潜んでるんだろ……。
「お前は相変わらずだな……」
俺が軽くツッコむと、カグラは胸を張って「ふふん♪」と笑う。
彼女も俺の持っている商材をいくつか買い取っていくから、助かってるっちゃ助かってるけど、油断してるとボッタクリ価格で押し売りされそうになるんだよなあ。
「やはり、交易には拠点があると便利ですわね。いい選択をされましたわ、ソータさん♪」
「まあな。借金返済にはまだ遠いけど、ここから頑張るんだよ」
ウルフが「ガウガウ!」と楽しそうに吠え、ゴーレムは棚の補強をトントン確認している。こいつら優秀だわ。
交易業務が一段落すると、俺も趣味の時間を楽しむ。借金返済は急がないとなのに、いや、スローライフを守るためには適度な息抜きが必要なのだ……たぶん。
「よし、今日はどんな魚が釣れるかな?」
小川へウルフを連れて向かい、釣り竿を垂らす。
ゴーレムは興味なさそうに見えるけど、淡々と後ろで待機してくれるから心強い。
水面に浮かぶウキを見つめながら、ふと穏やかな川の流れに癒やされる。
これぞ異世界スローライフの醍醐味だな。
「おっ、かかったか!? ……うわ、デカい!」
ビクンビクンと竿がしなる。必死にリールを巻く(リール付きの釣り竿を【ショップ】で買ってよかった!)、すると黄金色に輝くレア魚【サンシャインフィッシュ】がバシャッと跳ね上がる。
「これは高く売れそうだな!」
ウルフが「ガウガウ!」と吠えて大喜び。
ゴーレムは……やっぱり無表情だが、きっと心の中では「おめでとう」って思ってるのかもしれない。
一方、化石発掘も継続中。
貿易ばかりだと頭が仕事モードになりがちだから、こういうロマン要素は欠かせないんだよな。
「ここほれワンワン、頼むぞ、ウルフ!」
ウルフが鼻を利かせて地面をひっかき始める。
ザクザク……と掘り進めると、「おお、これは新種の化石じゃないか?」とテンション最高潮。
ゴーレムがバキッと掘り起こした岩をどかしてくれるから、さらに深くまで調査可能。
出てくる化石を博物館に登録し、展示スペースを拡充していくのがまた楽しみなんだよなあ。
「お前ら、発掘チームとしてめちゃ優秀じゃん」
ウルフが「ガウガウ!」、ゴーレムは「ゴゴ……」と意味不明の唸り。
きっと喜んでくれてるはず。
そんなふうに、交易と趣味を繰り返していたある日。
ログハウスで帳簿をつけながら売上や利益を計算していた俺は、思わぬ数字に目を見開いた。
「……ん? ちょっと待てよ……この合計、見間違いじゃないよな」
電卓(【ショップ】で買った地球製)で再確認する。何度やっても結果は同じ。
「100万クルナ!? 俺、100万クルナ貯めてたのか!?」
ギャーッと叫んでしまうくらい驚きだけど、ウルフは「ガウガウ!」と興奮気味に跳ね回り、ゴーレムはモノアイを青く点滅させている。
まるで「おめでとう!」って祝福されてるみたいじゃないか。
確かに借金30億円からしたらまだまだ遠い道のりだけど、一歩前進したことには変わりない。
「うおおおおお!! これは! もうちょっと頑張れば借金返済いけるんじゃね?!」
思わず拳を突き上げる。ログハウスの天井が低くて危うく手をぶつけそうになったけど、そんな痛みすら喜びに変わる勢いだ。
ウルフが「ガウガウ!」と吠えるのに合わせ、ゴーレムが「ズシン……」と足踏み。この二人(?)の祝福か何かかな? まあとにかくありがたい。
こうして、俺の貿易ビジネスはさらに加速する。
エルフ村と洞窟村の往来も活発になり、ログハウスにはいろんな住民が出入りするようになった。
もちろん、カグラも相変わらずやってきて「うふふ、また美味しい商材を仕入れましたわよ♪」と笑いながら、俺からも高額アイテムを買い付けていく。
あとちょっと値切らせてくれたらありがたいんだけど……。
「このまま稼ぎ続ければ……いけるぞ。借金30億円返済は遠いけど、見えてきたかもしれん!」




